ゆう、のぞみを意識する
次に二人が選択したのは“ ゆう、のぞみを意識する”
というタイトルだった
——再生ボタンが押されると、映像の中でのぞみとゆう、まだ恋人になる前の、ぎこちなくも愛おしい時間が蘇った。
ゆうは当時の記憶を呼び起こすようにスクリーンを見つめる。そこには、のぞみの方を何度も何度も、落ち着きなく視線を送る自分の姿があった。まるで引力に逆らえないみたいに、気付けば目で追ってしまう。その気持ちが映像にそのまま焼き付いている。
のぞみ「ちょっと、ゆう君。これ……ほら、心拍数とか出せるんでしょ?リモコン貸して」
声には茶化すような調子が混じっているが、心の奥には何か確かめたい気持ちがあった。自分のことをどう思っているのか、少しでも証拠を欲しがる気持ち。
ゆう「あっ、待って、のぞみさん!それは……!」
慌てて手を伸ばすゆう。けれど、のぞみの好奇心には抗えない。彼女はパッとリモコンを奪い、ボタンを押した。
画面に表示された数字は90。
のぞみ「……あれ?私と同じじゃん。え〜、なんか普通すぎる〜」
口を尖らせて、不満そうに見せるのぞみ。だが画面をよく見ると、90の下に“のぞみ”と名前が表示されている。
のぞみ「あっ……これ、私の数値だったんだ。じゃあ……ゆう君は?」
小さく笑みを浮かべながら、もう一度ボタンを押す。そこに現れた数字は——130。
のぞみ「……え……」
言葉を失ったのぞみは、一瞬だけ硬直する。その目がゆっくりとゆうの方を向いた。
のぞみ「ゆ、ゆう君……これ、本当に?」
驚きと戸惑い、でもそれ以上に胸の奥から溢れてくる喜びが、彼女の声を揺らしていた。信じたい。でも信じきれない。そんな心の葛藤が顔に浮かんでいる。
ゆう「うん……まぁ……」
小さく答えるゆう。その目は泳ぎ、言葉は濁る。けれど、数字は嘘をつかない。視線の先にいるのぞみの存在が、自分をどれだけ動揺させていたか、残酷なまでに明らかになってしまった。
のぞみ「130って……私の90よりずっと高いじゃない……」
呆れたような声。でもその表情は、少しずつ緩んでいく。驚きから、嬉しさへ。
のぞみ「そんなにドキドキしてたの?」
彼女はゆうの肩を指先でツンツンと突き、目を覗き込む。真剣に、だけどどこか愛しくてたまらない気持ちを隠せない様子で。
ゆう「そ、それは……」
顔を赤くして視線を逸らすゆう。あの日の自分がこうして数字に追い詰められることなど、思ってもみなかっただろう。けれど、振り返れば当然だった。のぞみの一挙手一投足に心臓を握られていたあの頃。
のぞみ「ふふっ……なんか、可愛いじゃん。ゆう君」
口元に浮かんだ笑みは柔らかく、頬はほんのり染まっている。彼女は少しだけ体を近づけ、そっとゆうの手に触れた。指先が重なった瞬間、二人の鼓動が重なり合うように感じられる。
のぞみ「……ゆう君の方が、私よりずっとドキドキしてたんだね」
その声は少し甘く、優しく、どこか安心させる響きを持っていた。
ゆう「……のぞみさんが、そこにいたから……」
小さく呟いた言葉は、恥ずかしさに押しつぶされそうになりながらも、確かな想いを含んでいた。
のぞみ「……そんなこと言われたら、私までドキドキしちゃうじゃない……」
のぞみは照れ隠しのように笑い、けれど次の瞬間、彼の肩にそっと寄りかかった。肩越しに伝わる体温。その温もりが心地よくて、彼女の表情は安らぎに満ちていった。
のぞみ「……私のこと、そんなに好きになってくれてたんだ」
小さな声。でも、その言葉は真っ直ぐにゆうの心に突き刺さる。
ゆうはただ、のぞみの手を握り返すことしかできなかった。言葉よりも、触れることの方がずっと確かに想いを伝えられる気がしたから。
二人の間には、柔らかな空気が流れていた。時間が止まったかのように、周囲の音が遠ざかり、ただ互いの鼓動だけが響いている。
やがてのぞみは、満ち足りたように小さく微笑んだ。
そして二人は、寄り添ったまま、しばらく静かに時を共有した——。
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「ちょ、ちょ、カナちゃん……これ、なんなんよ!?心拍数130やて……ゆう君、のぞみちゃんに吸い寄せられすぎやろ……!」
カナちゃん「ほんまやで!これもう“心臓はお前に預けた”って告白やん!数字が証人や!数字は嘘つかへん!!」
なっちゃん「おーい!誰か警察呼んでー!第1級のろけ罪や!緊急逮捕案件やろこれ!」
カナちゃん「ふざけんなー!!ワイらの心拍数まで巻き込まれてバクバクしとるやん!見とるだけで心臓トレーニングやで!」
なっちゃん「のぞみちゃんが“そんなにドキドキしてたの?”ってツンツンしてくるとこ……うわぁ、あそこ、破壊力やばいんよ。ツンやない、もはやトドメよ!」
カナちゃん「ほんまな!肩に寄りかかって“私のことそんなに好きになってくれてたんだ”やろ?もうな、甘さで床ベタベタや!シロップ洪水警報発令や!」
なっちゃん「視聴者さんもこれ、よう耐えとるわ……ほな、ここで届いとるはがき読むけんね!」
カナちゃん「きたきた!甘さで破裂しそうな声で紹介してや!」
なっちゃん「ラジオネーム“メトロノーム心拍”さんから。“心拍数が数字でバレるとか、これ人類史上最高の証拠じゃないですか?130ってもう爆発寸前ですよ!”」
カナちゃん「ほんまやな!130てもう恋愛心拍数の金メダルや!救心持ってきてー!」
なっちゃん「次、ラジオネーム“電車の中でチラ見仲間”さん。“ゆう君の気持ちが画面で見えるって、心臓の内カメラやん。私も好きな人いるけど、もし測られたら200超えるかも”」
カナちゃん「200!?それもう恋ちゃう、ジェットコースターや!命のベルト締めなあかんやつ!」
なっちゃん「ほな次は、Xから。“#のろけ罪で無期懲役”ってタグめっちゃトレンド入りしとるやん!」
カナちゃん「やば!無期懲役とか言いつつ、二人は一生一緒にいとけや、って願望やろこれ!」
なっちゃん「ほんまやな。しかも別のポストで“心拍数=愛のメーター”って出とるわ。数字で恋が証明されるん、ええなぁ……」
カナちゃん「ええなぁ……ワイも誰かに心拍数測られたいわ。“お前のこと考えたら180やで”って言われたい!」
なっちゃん「わたしやったら恥ずかしゅうて隠すけどな……けど隠せんからこそ真実なんよ。数字の暴力や……」
カナちゃん「暴力言うなや!でも確かに甘すぎて攻撃力高い!うちら今もう、とろけすぎてチーズフォンデュ状態や!」
なっちゃん「せやけん視聴者のみんなも、この映像見終わったら冷凍庫入ってクールダウンせないかんよ!」
カナちゃん「せやな!ほんで次の回でもっと心拍数上げられて、またワイら警察呼ぶんや!」
なっちゃん「第2級どころやないな、次はもう終身刑かもしれんよ……!」
カナちゃん「でも甘い終身刑なら、みんな喜んで入るで!」
——スタジオは笑いと悶絶で埋め尽くされ、二人ののろけ劇場はまだまだ続きそうだった




