のぞみがゆうを意識し始めた頃
「……よし、次のタイトルを見てみようよ」
ゆうは少し胸を高鳴らせながらリモコンを手に取った。画面に浮かび上がった文字列を目にした瞬間、息を呑む。
“のぞみがゆうを意識し始めたころ”
「えっ……? のぞみさん、僕のこと意識してたってこと……?」
驚き混じりの声が思わずこぼれる。ゆうは半信半疑の表情のまま横を振り向く。
のぞみは「うっ……」と喉を詰まらせ、視線を逸らした。頬がうっすら桜色に染まっていく。慌ててリモコンの画面を指差す。
「そ、それより……ほら! 早く再生してみようよ!」
普段は落ち着いているのぞみが、今はあからさまに焦っている。その様子にゆうはニヤリと笑みを浮かべ、わざとゆっくりと再生ボタンを押した。
——映し出されたのは、電車の中。つり革につかまるゆうの方をちらちらと覗き見る、ドア付近に立つのぞみの姿。
画面の中の彼女は、まるで誰かに気づかれたくないのに目を離せない、そんな葛藤に揺れているようだった。
「え、これ……」
ゆうは言葉を失い、ただ見つめる。
のぞみは耐えられず、両手を膝の上で握ったり開いたり、指先をもじもじと動かしていた。顔がますます赤くなる。
ふとリモコンのボタンに目が止まる。“bpm”。なんだこれ?と押してみると、画面に♡マークと共に「90」の数字が浮かび上がった。
「……っ!?」
ゆうの心臓が一瞬止まりそうになる。
(ま、まさか……これ、その時の心拍数が出るってこと……? じゃあ、この90って……のぞみさん……?)
試しに自分の方を表示させると「60」と表示された。落ち着いた数値。だが隣にいるのぞみの数値は確かに「90」と踊っている。
(は、速い……。ってことは、僕のことを見ながら、こんなにドキドキしてたってこと……?)
画面が最初のシーンに戻される。最初はどちらも「60」。そこから、のぞみがちらちらと自分を見始めると数字が跳ね上がっていく。
「……」
ゆうは驚きと嬉しさに、思わず声を出しそうになった。喉の奥で言葉がせり上がる。
「の、のぞみさん……これって……」
なんとか口にした時、のぞみは真っ赤な顔をさらに両手で覆い隠していた。
「ち、違うの! これは……その……ちょっと……!」
必死に言葉を探すが、どれも声にならない。目元まで覆った手の隙間から、熱が漏れ出しているようだった。
ゆうはそんな彼女を見て、自然と笑みがこぼれる。
「……いや、でもさ。僕、すごく嬉しいよ」
のぞみは指の隙間からこちらを覗く。潤んだ瞳が揺れている。
「う、嬉しいって……」
「だって、こんな風に……のぞみさんが僕を特別に思ってくれた瞬間が、数字で分かるなんて……。こんな奇跡みたいなこと、ある?」
言葉の一つ一つに嘘はない。素直な心の声だった。
のぞみはぐっと唇を噛み、小さく呟いた。
「……ゆう君、意地悪」
その声音には拗ねた響きと、甘えるような響きが同居していた。
のぞみはゆっくりと手を下ろし、そのまま照れ隠しのように、ゆうの腕に身体を寄せてきた。頬の熱が、直接伝わってくる。
「ごめん、ごめん。でもね……本当に嬉しいんだ。のぞみさんが僕を好きになってくれた瞬間が、こんなにはっきり分かるなんて」
「もう……バカ……」
小さな声が震えている。彼女はさらに強くゆうの腕にしがみつき、顔を胸元に埋めるようにしてしまった。
ゆうはただ黙って受け止める。
彼女の鼓動が、すぐ隣で確かに早く打っている。自分の心臓もまた、追いつくように速まっていく。
二人の間にはもう、言葉はいらなかった。
響いていたのは、お互いの心臓の鼓動だけ。
温かな沈黙に包まれたまま、時がゆっくりと流れていった——。
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「ちょ、ちょ、ちょ!カナちゃん、見た!?見た!?えらいもん見せられたわ、これ!」
カナちゃん「見た見た見たぁぁ!なにあれ!意外すぎるやん!のぞみちゃんの方が先にゆう君意識してたんやで!?たまらんて!!」
なっちゃん「ほんまよ!だって心拍数やで!?bpm90て!ゆう君が60やのに、のぞみちゃんドキドキしすぎやろ!」
カナちゃん「そんなん心臓、祭りの太鼓やん!ドンドコドンドコ打ってたんやろな!のぞみちゃん、視線ちらちらであの数字出るとか、もう隠されへん気持ちやん!」
なっちゃん「いやぁ、ほんまに……これ数字で証明されるとか、もはや科学的に恋が立証されました!って感じよ!」
カナちゃん「わかるわ〜!なんかさ、恋心ってふわっとしたもんやと思ってたけど、まさか数字で叩きつけられるとは思わんかった!」
なっちゃん「んで、ゆう君がまたニヤリとしとるがね。こりゃ意地悪よ、ほんま!」
カナちゃん「でもあれはニヤリするしかないって!だって“好きになってくれた瞬間が分かる”て……ゆう君、ズルいくらい真っ直ぐやん!」
なっちゃん「ほんまや……のぞみちゃん、両手で顔覆ってモジモジしとる姿、かわいすぎて悶絶もんよ。うち、画面に飛び込んで抱きしめたなるわ」
カナちゃん「なっちゃん、それストーカーやん(笑)!」
なっちゃん「違うんよ!応援や応援!心拍数90に寄り添いたいんよ!」
カナちゃん「もうな、二人で“意識してたんやなあ”って確認し合ってるあの空気、砂糖小袋100個ぶちまけたみたいに甘いわ!」
なっちゃん「うちはマシュマロ風呂に沈められた気分よ……あぁ溺れる〜!」
カナちゃん「こっちは綿菓子工場爆発や!甘さで窒息するレベルやで!」
なっちゃん「……はぁ、たまらんねぇ」
カナちゃん「さてさて、ここでや!視聴者からのコメント紹介いこか!」
なっちゃん「きたきた!えっと……まずは“ラジオネーム:砂糖切らした主婦”さん」
『心拍数90ののぞみちゃん、わたしまでドキドキして砂糖買いに走りそうになりました!』
カナちゃん「おもろ!恋の代用品に砂糖買うな(笑)」
なっちゃん「いや、わかるんよ。甘さ足りんくなるんよな!」
カナちゃん「次はXから!ユーザー“@tokimeki_lover”」
『数字で恋心バレるとか、恋愛検知器ほしい!』
なっちゃん「そんなんあったら世の中パニックよ!好きな人の前でピーーーーって鳴りよるがね!」
カナちゃん「ほんまや!“あんた好きなんやろ”って一発でバレるな(笑)」
なっちゃん「続いて“ラジオネーム:胸キュン過呼吸”さん」
『心臓がゆう君とのぞみちゃんにシンクロして、わたしまで息苦しい!』
カナちゃん「いや〜わかるわぁ!画面の外で過呼吸起こすレベルやもんな」
なっちゃん「わかるわ!うちも息吸うの忘れよったもん。酸素不足や!」
カナちゃん「はい次!“@renai_dokidoki”」
『90って数字見ただけで、もう私の心臓200いった』
なっちゃん「そりゃ倒れるわ(笑)」
カナちゃん「けど共感するなぁ。人の恋見ると自分まで心拍上がるんや!」
なっちゃん「恋の伝染病やね!数字で測ったらスタジオ全員90超えとるわ!」
カナちゃん「ほんまや!今ここ全員、恋の体育祭や!心臓マラソン状態!」
なっちゃん「やばい……カナちゃん、悶絶しすぎて涙出てきたわ」
カナちゃん「うちもや!なんやろ……恋って、こんなに可愛くて、こんなに暴力的に甘いんやなぁ!」
なっちゃん「ゆう君とのぞみちゃん、これ以上どうなるんやろ……次が怖いけど楽しみや!」
カナちゃん「ほんまや!もうあかん……うちら、心臓持つんかな!?」
なっちゃん「持たんけど見る!死ぬまで見届けるんよ!」
カナちゃん「のぞみちゃん!ゆう君!うちら、永久に悶絶応援団やで!!!」




