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のぞみとゆうの物語 ~こんな恋をしている二人が羨ましい  作者: 播磨 颯太
第三部-2章 ファンタジーランド
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お互い何も意識していない頃

テーマパークの賑わいから少し離れた場所に、それはひっそりと存在していた。派手な看板もなければ、行列もない。けれど、入口にかかる“思い出シアター”という文字には、なぜだか足を止めてしまう不思議な力があった。


ゆうは眉をひそめ、胸の奥にざわりとした感覚を抱く。

(なんだろう、このアトラクション……映画館みたいだけど、なんか普通じゃない雰囲気がする)


のぞみはそんなゆうを待たず、もう足を一歩踏み入れていた。彼女の瞳は子どものようにきらきらしている。

「ねぇ、ゆう君。ちょっと面白そうだよ、入ってみよ?」


抵抗する理由もなく、気付けば二人は中に吸い込まれるように入っていた。


案内のスタッフは柔らかい笑顔で二人を迎えた。

「いらっしゃいませ。“思い出シアター”へようこそ」


奥へと導かれたのは、小さな個室。そこにはふかふかの二人がけのソファと、壁にかけられた大きなモニター。まるで特別な映画を観るために用意された空間のようだった。


「このソファーに座っていただければ、お二人の“思い出”をモニターに映し出すことができます」


ゆうは目を瞬かせた。

(……は? そんなこと、できるわけ……? 記憶を映像化なんて、そんな映画みたいなこと……)


半信半疑のまま立ち尽くすゆうの手を、のぞみは自然に取った。

「大丈夫だって。ほら、ゆう君、座ろうよ」


もう彼女はソファに腰掛け、期待に頬を紅潮させていた。仕方なく、というよりも、その笑顔に抗えず、ゆうは隣に座る。心臓の鼓動が近くにいる彼女の温度で加速する。


「はい、今ソファーがお二人の記憶を読み込み中です……」

スタッフの声が響くと、頭の奥に微かなざわめきのような感覚が走った。


「……おや、できたようですね。それでは、このリモコンで操作してください」


のぞみは待ちきれないとばかりに手を伸ばし、リモコンをつかんだ。

「ゆう君、大丈夫。ほら、ちょっと貸してね」


ピッ、とボタンを押すと、スクリーンにタイトルが浮かび上がった。

“二人がまだお互いを意識する前”


その言葉だけで、胸がどくんと跳ねた。


映し出されたのは、見慣れたはずの電車の中。制服姿の高校生たちが揺れる車両に立ち、座席には疲れたサラリーマンや学生が並んでいる。そして、その中に――夏服姿の自分とのぞみが並んで立っていた。


のぞみが思わず声を漏らす。

「わぁ……夏服だ! ねぇ見て、ほんとに同じ電車だよ。私とゆう君、こんな近くにいるのに……お互い全然知らん顔してる」


画面の中ののぞみは、まっすぐ窓の外を見つめている。白いブラウスにリボン、少し結んだ髪。その横で、無表情のゆうはスマホを見下ろしていた。二人の距離は数十センチしかないのに、互いの存在を意識する気配はなかった。


「ねぇ、ここ見て! ゆう君、私の真横にいるのに、ちっとも気づいてない顔してる!」

のぞみは画面を指差し、唇を尖らせた。


「ご、ごめん! だって、この頃の僕は、のぞみさんのこと……まだ知らなかったんだ」

ゆうの頬は赤くなる。弁解しながらも、モニターに映る彼女の姿に目を奪われていた。制服の袖から伸びた腕の白さ、伏せられた瞳の静けさ――その頃は見逃していたものが、今は痛いほど鮮明に胸に響いてくる。


「ふふ、私だってその時は気にしてなかったよ。でもね……こうやって並んで立ってるのを見ると、すごく不思議」

のぞみは小さく笑った。少し懐かしむように、けれどどこか照れた声。


「だって、半年後には、こんなに大切な人になってるんだもん」


その言葉に、ゆうは喉が詰まる。心臓が跳ね、胸に温かいものが広がっていく。


「……ほんとに、不思議だね」


画面の中の二人はただの通学風景。誰にも気づかれない、すれ違うだけの日々。だけど、今隣にいる彼女の体温が、それを“かけがえのない始まり”へと変えていた。


ゆうはスクリーンを見つめながら思う。

(なんで僕は……もっと早く、のぞみさんに気づけなかったんだろう)


けれど、その後悔すらも、今となっては愛おしい。だって、その時間を経て、今こうして隣に座っているのだから。


のぞみは、少し潤んだ瞳で笑った。

「ねぇ、ゆう君。あの時はお互い何とも思ってなかったのに……今こうして思い出になってるの、ちょっと運命っぽくない?」


ゆうはゆっくりと頷いた。

「……うん。運命だよ、きっと」


画面の中の夏服の二人は、無言のまま揺れる電車の中。

そしてソファに座る二人は、言葉よりも確かな思いを胸に抱き、映像を見つめ続けていた。


――この瞬間からすでに、二人の“思い出”は未来へとつながっている。

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


なっちゃん「ちょ、ちょっとカナちゃん……!うちら今、とろけすぎやろ?!」


カナちゃん「ほんまやで……のぞみちゃんとゆう君の“思い出シアター”、もう甘すぎて歯が全部溶けそうや……!なんやこれ、ラムネ菓子どころか砂糖漬けや!」


なっちゃん「最初はただの通学風景やったのにねぇ……あの“まだ知らんかった頃”をモニターで見せられたら、なんかもう胸の奥がぎゅうぅってなってしもて……」


カナちゃん「しかも、のぞみちゃんが『だって半年後には大切な人になってるんだもん』言うた時!あかんわ、ワイもう叫んだ。ほら見て、鳥肌!運命とか言われたら、わい床に転げ回るしかないで!」


なっちゃん「そうそう!しかもゆう君の“ご、ごめん!まだ知らなかったんだ”っていう必死な顔!あれはもう、素直すぎて愛おしさ爆発やろ!」


カナちゃん「もう、何が思い出シアターよ!今から次々出てくるんやろ?!うちら耐えられるんかな?!」


なっちゃん「いやほんまやねぇ……。次のボタン押したら、絶対また泣くんよ……!涙腺に直撃するアトラクションとか、これ遊園地の領域超えとるけん!」


カナちゃん「ほなここで、視聴者のみなさんからのお便りいこか!今この甘さに耐えられへん仲間、多いやろうし!」


なっちゃん「はーい、まずはラジオネーム“胸キュン止まらん高校三年生”さん。『わたしも好きな人と隣に立ってた時期ありました!けどお互い気づかず卒業してしまったので、のぞみちゃんとゆう君が羨ましいです』……泣けるねぇ!」


カナちゃん「わかるぅぅ!それな!気づかんまま終わるパターン、現実やと多いもんな……。でもこの二人はちゃんと“運命”つかんでる!ほんま奇跡や!」


なっちゃん「続いてXのコメント、“#のぞゆうでしょ”タグから。『夏服で隣に立つ二人、まるで伏線回収のために存在してたみたいで鳥肌』……これ名言やない?」


カナちゃん「伏線回収て!ほんまドラマの脚本家もビックリやで。あの夏のすれ違いが、冬には恋になる……。この展開、青春ラブコメ界の金字塔やわ!」


なっちゃん「次は“ラジオネーム・プリン体ひかえめ”さん。『二人の距離、数十センチのはずやのに、当時は何光年も離れてるみたいに感じる。今はゼロ距離なのエグい』」


カナちゃん「わっかる〜!あの時のゼロセンチが無限に遠くて、今のゼロセンチが無限に近いんや!宇宙理論崩れるわ!」


なっちゃん「最後に、“#甘すぎて虫歯確定”コメント。『のぞみちゃんの“半年後には大切な人”発言で、心の歯全部抜け落ちました』」


カナちゃん「抜け落ちたて!いやほんま、うちらも差し歯総入れ替えレベルやで。甘さ直撃しすぎ!」


なっちゃん「いやぁ……もうシアターに入ってるの、二人やなくて全国の乙女心やねぇ。みんなで座って、モニター見ながら一緒に泣いて笑っとるんやわ」


カナちゃん「せやな……。あーもう次のボタン押すん待ちきれへん!けど心臓の準備いるわ。これ、もはや絶叫マシンより怖いで!」

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