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のぞみとゆうの物語 ~こんな恋をしている二人が羨ましい  作者: 播磨 颯太
第三部-1章 のぞみの卒業 新しい日常へ
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ときめき通学ロスのゆう

春休みが始まっていた。

桜の蕾がふくらみ始めた町に、まだ冬の名残を引きずる冷たい風が吹いている。

その風は、ゆうの心の中にある空洞のような寂しさをさらに広げるようだった。


のぞみが卒業してから数日。もう電車のホームで待ち合わせる朝もなければ、並んで学校に向かう時間もない。

別れたわけじゃない。恋人であることは変わらない。けれど――「ときめき通学」が終わった現実は、想像以上に胸を締めつけていた。


ベッドに横たわり、天井をぼんやりと見つめる。

その横には、のぞみと撮った数枚の自撮り写真がスマホの画面いっぱいに並んでいた。

彼女が笑っている。ピースしている。頬を寄せ合っている。

画面をスライドするたびに、あの朝の電車の匂いや、寒さの中で交わした会話の余韻まで蘇ってくる。


そして気づけば、大粒の涙が頬を濡らしていた。止めようとしても止まらなかった。

一緒に通学できないというだけで、こんなに脆くなってしまう自分が情けなかった。

けれど、その涙は止まるどころか、さらに溢れ続けた。


気持ちを抑えきれず、ゆうはスマホを強く握りしめた。

そして震える指先で、のぞみへのLINE通話を発信する。

「プルル…プルル…」

コール音が鳴るたびに、心臓がドクドクと暴れる。

彼女は出てくれるだろうか。迷惑じゃないだろうか。そんな不安すら、胸をかき乱す。


やがて――。


「――ゆう君?」


耳に飛び込んできたのは、のぞみの柔らかで優しい声だった。

その瞬間、ゆうの涙は堰を切ったように再びあふれた。


「のぞみさん……」


必死に声を整えようとするけれど、嗚咽が混じってしまう。泣いているのは隠せない。

声が震え、情けないほどに弱い。


「ゆう君……どうしたの?」


電話越しののぞみの声音が、驚きと心配に揺れる。

ほんの一言で、彼女が自分の異変にすぐ気づいてくれることが、胸に痛いほど染みていく。


「……のぞみさんがいない朝が、こんなに寂しいなんて思わなかった……」


言葉を絞り出す。

想像していた以上に、彼女の存在が自分の一日の始まりを支えていたことを、今さら思い知らされていた。


「毎日、のぞみさんがいたんだ……僕の朝に、僕の隣に……ずっと……」


途切れ途切れの声。鼻声になってしまいながらも、胸の奥に溜め込んだ気持ちを吐き出す。


受話器の向こうで沈黙が流れる。

だがすぐに、のぞみの声が返ってくる。


「私もね……すごく寂しいよ」


その声も、少し震えていた。


「ゆう君と毎朝話して、一緒に電車に乗って……それが当たり前だったのに、もうないんだって思うと、すごく切なくなるの」


ゆうは息を呑んだ。のぞみも同じ気持ちだった。

彼女の声が、微かに湿っている。泣いているのかもしれない。


「ゆう君がいないと、私の朝が始まらないみたいな気がする……。毎朝の時間が、私にとってどれだけ大切だったのか、今になって改めて分かったよ」


のぞみの吐息が、受話器の向こうでかすかに震えた。

その言葉が胸に刺さり、また涙が零れる。


「……のぞみさん……」


絞り出すように呼んだ声が、ひどく幼く頼りない。

すると、通話の向こうで彼女が小さく息を吸う音が聞こえた。


「でもね、私たち離れ離れになったわけじゃないんだよ」


「……え?」


予想外の言葉に、涙で滲んだ目を見開く。


「私は関東の大学じゃなくて、関西の神泉大学に行くでしょ? それに、ゆう君とはそんなに家も遠くないんだよ」


声に込められた温度が、じわりと心に染みていく。

そうだ、彼女は遠くに行ったわけじゃない。手の届かない存在になったわけじゃない。


「だから、何も離れてしまったわけじゃない。すぐ近くにいるんだよ」


その一言が、胸の奥の冷たい穴をじんわりと埋めていった。


「のぞみさん……」


涙で詰まる喉を無理やり震わせて、名前を呼ぶ。


「だからね、泣かないで?」


彼女の優しい声が、羽のようにふわりと心に降りかかる。

ゆうはスマホをぎゅっと握りしめ、涙を拭いきれずに、それでも笑った。


「……ありがとう、のぞみさん……」


「ふふっ……ゆう君の泣き声、可愛かった」


一瞬で耳が熱くなる。


「えっ、嘘でしょ!?」


「ううん、本当。ちょっと録音しとけばよかったなぁ」


「や、やめてよ……!」


慌てる僕の声に、のぞみは堪えきれずクスクスと笑う。

その笑い声が、涙で張り詰めていた空気をやわらかく溶かしていった。


「ねえ、のぞみさん?」


「うん? どうしたの?」


穏やかな声。柔らかな響き。

ゆうは少しだけ深呼吸して、心を決める。


「あのさ、のぞみさん……春休みだし、今度の土曜日、一緒に出かけない?」


ゆうの初めてのデートの誘いが始まる

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


カナちゃん「はい出ましたぁ〜!泣き虫ゆう君!!」


なっちゃん「ふふっ、ほんまやなあ。もうベッドでごろーんてしながらスマホの画面見よるだけで、大粒の涙がぼろっぼろ出るんやけんね」


カナちゃん「いやもう、桜のつぼみふくらむ季節に、男の子の涙腺もふくらんどるやん!どんだけやねん!」


なっちゃん「わかるよ〜でも、毎朝いっしょにおったんが急になくなったら、胸に穴が空いた気持ちになるけんね。わしやったらホームで幻のぞみちゃんを探す思うわ」


カナちゃん「それな!『あれ?今日どの車両やろ?』って、いっつも探してまいそうや」


なっちゃん「で、見つからんで余計涙出るんよな。電話かける指、震えよったやろうね」


カナちゃん「ぷぷっ、で、のぞみちゃん出た瞬間また決壊!涙のダムがぼんっ!溢水警報やでこれ!」


なっちゃん「のぞみちゃんも、しゅんってなりながら『ゆう君……どうしたん?』言うて、優しい声でなぁ。あれ聞いたら余計泣けるわいね」


カナちゃん「ほんで極めつけ、『泣き声かわいかった』て!これはもう全国の男子が震え上がるセリフや!『録音しとけばよかった』って、恋のブラックボックスやん!」


なっちゃん「ふふっ、ほんまや。ゆう君、耳まっかになっとる顔が目に浮かぶわ」


カナちゃん「はい、ここでお便り来てまーす!」


なっちゃん「おぉ、視聴者さんからね。まずははがき読ませてもらうよ」


『拝啓、なっちゃんカナちゃん。泣き虫ゆう君を見て、私も昔の初恋を思い出しました。駅のホームで別れた日、涙で足元が見えませんでした。ゆう君に「泣いてええんやで」と言ってあげたいです』


なっちゃん「うわぁ……なんか胸にしみるお便りやねぇ。涙で足元見えんとか、恋ってほんまに視界奪うんよね」


カナちゃん「ほんまや、視界ゼロメートルの世界!それでも心のGPSは好きな人に向いとるんや」


なっちゃん「うまいこと言うわ〜!じゃあ次、Xからのコメント読むね」


『#泣き虫ゆう君 でトレンド入りしてて草。泣き虫っていうより愛おしすぎて心が崩壊する案件。のぞみちゃん、あんた罪な女やで』


カナちゃん「出た!罪な女発言!いやでもそうやん、あの『泣き声かわいかった』の一撃で男子1000人は倒れる」


なっちゃん「その破壊力、まるで春の花粉爆弾やわ」


カナちゃん「くしゃみどころか心臓直撃するからな!」


なっちゃん「次のコメントいくよ」


『自分も遠距離恋愛で泣いた経験あるから、ゆう君に共感しかない。あの電話のやりとり、心がしゅわしゅわ溶けていった』


カナちゃん「しゅわしゅわ!わかる!炭酸みたいに胸に沁みるんや!」


なっちゃん「でもしゅわしゅわだけやなくて、涙でぐしょぐしょにもなっとるんやろな」


カナちゃん「ぐしょしゅわ状態!新しい感情やで!」


なっちゃん「ええ表現やなぁ。ほな、もう一枚」


『ゆう君の「のぞみさん……」って呼ぶ声が幼くて尊い。子犬が飼い主を探して泣いとるみたいやった』


カナちゃん「うわあああ!それやぁ!子犬や!子犬ゆう君や!」


なっちゃん「のぞみちゃんが『泣かないで?』言うんが、まるで飼い主が『大丈夫よ』て抱っこするんと同じやんね」


カナちゃん「もう完全にペットとご主人や!可愛い過ぎて悶絶や!」


なっちゃん「ほら見て、またコメント来とるで」


『春休みの涙は桜のつぼみの雫みたい。やがて笑顔の花が咲くんやろな』


カナちゃん「詩人か!いやでもほんまや。泣いた分だけ花びらふくらむ感じする」


なっちゃん「ゆう君、きっと今度の土曜日に大輪の花咲かすんやろな。デートやもん」


カナちゃん「うわ〜っ!そこまで聞いたらもう胸いっぱい!泣いて笑って、心の桜も満開や!」


なっちゃん「視聴者さんのお便りとコメントも満開やったねぇ」


カナちゃん「ほんまや、今日のなっちゃんカナちゃんは、恋の涙と笑いで花吹雪や!」


なっちゃん「ゆう君、のぞみちゃん、これからもわしらを泣かせて笑わせてね〜!」

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