初めてのデート(のぞみ視点)
土曜日の朝。灰色の曇り空の下、のぞみは予備校の教室で机に向かっていた。周囲の鉛筆の走る音、教師の声、紙をめくる音――すべてが遠くに感じられる。頭の中を占めているのは、ノートの問題ではなく、午後に待つ特別な約束だった。
のぞみ心の声 ゆう君来てくれるかな……ほんとに、ほんとに来てくれるかな。
胸が高鳴り、ページを見ても文字が霞んでいく。早く時が過ぎてほしいようで、でも怖くて緊張で、時間の針が残酷にゆっくり動く。
授業が終わると同時に、のぞみはペンをペンケースに押し込んで、コートを羽織った。外の冷たい空気が頬に触れる。冬の匂い。鼓動がはっきりと耳に届く。
待ち合わせの広場に近づくほどに、歩幅は自然と速まっていた。人混みの向こう、見慣れたシルエットを見つけた瞬間――
のぞみ心の声 いた、ゆう君!
体の芯が一気に温まる。頬がじわっと赤くなる。息を整えながら、のぞみは駆け寄った。
のぞみ「ごめんね、ゆう君。待ったでしょう?寒い中、待たせちゃって……」
彼は少し照れたように笑みを浮かべて答える。
ゆう「いや全然待ってないよ。今来たばっかりだし」
のぞみはその言葉に安堵するが、すぐに気づいてしまう。彼の唇が青白く、紫に近い色をしていることに。
のぞみ心の声 ゆう君、唇の色が紫になってて寒そうだけど大丈夫かな?体調悪いのかな?
彼は平気そうに振る舞っているが、その姿に胸が締めつけられる。知らなかった。彼は自分を待つために、こんなにも寒い場所で立っていてくれたのだ。
本当は2時間前から彼はそこにいた。のぞみにはまだ分からないその事実が、空気に密やかな温度を残していた。
のぞみ「何食べようか?」
ふっと場を和ませるように問いかけると、ゆうは一瞬迷い、頬をかきながら考え込む。
ゆう「うーん……何か食べたいものある?」
のぞみは小さく首をかしげ、彼をまっすぐに見つめる。
のぞみ「ゆう君が選んでくれたら嬉しいな。」
その一言に、ゆうの目がぱちりと見開かれる。思いがけないお願いに、嬉しさと緊張が入り混じる。言葉を探すように視線が泳ぎ、頭の中で店の記憶を探っている。
ゆう「じゃあ……ハンバーグとか好き?」
その提案が口に出た瞬間、のぞみの顔がぱっと輝いた。
のぞみ「好き!」
無邪気な笑顔。まるで冬の曇り空を一気に晴らすような明るさ。彼の胸にじんわりと温かさが広がっていく。
そして二人は自然に足を向ける。選んだのは“ジュテーム”――そこは1か月後、ゆうがのぞみに告白をする落ち着いた雰囲気の洋食屋だった。土曜の昼、外は賑わっていたが、奥まった静かな席に案内された瞬間、そこはまるで二人だけの小さな世界になった。
テーブルに並ぶメニュー。のぞみはページをめくりながら、ふわりと指先を滑らせる。その仕草に、ゆうの視線は止まる。彼女の些細な動作一つひとつが、目を離せないほど愛おしい。
のぞみ心の声 ふふ。ゆう君私を見てくれてる…
のぞみ「どれにしようかなぁ……」
声に滲む柔らかい響き。まるで一緒に迷うことすら幸せな遊びのように聞こえる。
ゆうはページを閉じ、少し勇気を出して口を開いた。
ゆう「僕は……デミグラスハンバーグにする」
のぞみの瞳がきらりと光る。
のぞみ「ゆう君と同じのにする!」
その言葉に、彼の頬がわずかに赤くなる。小さな選択が、二人の心を強く結びつけていく。料理が運ばれてくるまでの短い時間さえ、互いにとってはかけがえのない瞬間だった。
のぞみ「なんか、不思議だね」
言葉を投げたあと、彼女は少し俯きながら笑みを浮かべる。
ゆう「何が?」
彼女の黒い瞳が真っ直ぐにゆうを捉える。
のぞみ「こうして、ゆう君と並んで座って、ご飯を食べるの。駅のベンチや電車の中だけだったのに、今、すごく特別な時間を過ごしてる気がする。」
その一言に、ゆうの胸の奥が熱くなり、呼吸が一瞬詰まる。彼はその気持ちを隠さずに答えた。
ゆう「……僕も。こうしてちゃんと話せるの、すごく嬉しいよ。」
照れながらも真剣な声。その響きがのぞみの心を優しく包み込む。頬に広がる熱、自然と零れる微笑み。
のぞみ「私も……」
二人の間に流れる時間は、外の喧騒とは無縁の、静かで温かいもので満ちていた。
――その先に続く物語を、のぞみはまだ知らない。ただ確かに、この昼下がりのテーブルが、二人の未来へ続く道のひとつであることだけは、心が感じ取っていた。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「ちょ、カナちゃん!ちょっと待ってよ!今の……のぞみちゃん、机の前で“ゆう君来てくれるかな”って、あれもう教科書なんか頭入っとらんやん!完全に恋の呪文にかかっとるわ!」
カナちゃん「ほんまやで!授業なんか耳通り抜けてるやろ、心臓だけドッキンドッキンしてんねん。あれや、恋の予備校や!数式よりゆう君、歴史よりゆう君!」
なっちゃん「でさ!待ち合わせの広場で、遠目に“いた、ゆう君!”て……あんなん声になっとるけど心の中の叫びやろ?乙女が冬の空気に溶けてしもて、白い息がハートマーク描いとるわ!」
カナちゃん「初々しい!!そうや!ここで告白すんねん1か月後!!伏線張りすぎやん!洋食屋“ジュテーム”やで?!名前からして愛の洪水やんか!」
なっちゃん「ジュテームて!フランス語で“愛しとる”じゃろ?それ選んだのがゆう君て!……いやもう無意識にプロポーズの練習しよるんちゃう?」
カナちゃん「ほんで“ハンバーグとか好き?”や!その一言で世界がぱぁぁぁって開けるのぞみちゃん!『好き!』の破壊力!!地球割れるで!ジュラ紀の隕石落下か思た!」
なっちゃん「ふふ、で“ゆう君と同じのにする!”じゃろ?のぞみちゃん、完全に心を合わせにかかっとる。箸もフォークも一緒に動くんよ、あの瞬間!」
カナちゃん「『なんか、不思議だね』ってあのセリフな!胸に直撃や!駅のベンチがベースキャンプやったのに、今は恋のエベレスト登頂中や!」
なっちゃん「しかも“僕も”って!ゆう君の声、裏返っとったけどな、真剣で……うわぁぁぁ!これ見よったらもう席でジタバタせんとおれんわ!」
カナちゃん「わかるわかる!ソファの上で足バタしてしもた!誰か毛布かけてくれ!」
なっちゃん「さてここで!視聴者からのお便り読もうや!ほら、届いとるよ~」
カナちゃん「ほな一枚目。“ラジオネーム・恋に溺れたいカピバラさん”からやで。『のぞみちゃんの“ゆう君が選んでくれたら嬉しいな”で、心臓がズッキュンでした。私も誰かに選んでもらいたい』やって!」
なっちゃん「ズッキュンどころか、もうハートが破裂してカピバラ温泉の湯気になっとるわ!」
カナちゃん「次!Xのコメント。“#ジュテームでランチなう”ってタグついとる!『同じメニュー頼むだけで両思い確定やん。私も隣の席のカップルと同じ牛丼頼んでこよかな』」
なっちゃん「いや牛丼チェーンで両思い成立せんわ!でも気持ちは分かる!メニュー合わせる=運命合わせる、やけんね!」
カナちゃん「お、まだある。“ペンネーム:告白したいパンダ”さん。『ゆう君の“僕も”でパンダの竹が折れました』」
なっちゃん「折れるて!パンダさんの竹がポキーン!そんくらい衝撃走ったんやな!」
カナちゃん「ほんでラスト!“Xユーザー・#恋愛偏差値ゼロ男子”『のぞみちゃんとゆう君、見てるだけで自分も青春リベンジした気分。ジュテーム行きてぇ!』」
なっちゃん「青春リベンジ!ほんまやなぁ。二人の時間って見とるこっちまで高校生に戻す魔法や!」
カナちゃん「いやもう今日は心臓がジェットコースターやったな!のぞみちゃんとゆう君、ありがとう!次の展開まで息もたへんで!」
なっちゃん「視聴者のみんなも、ハガキとコメントありがとね!一緒に悶絶してくれて最高じゃった!」
カナちゃん「ほな次回も“なっちゃんカナちゃん”で、悶絶青春レビューお届けするで~!」
なっちゃん「待っとってね~!」




