新しい日常
西元山駅、朝の7時10分。
のぞみの胸は落ち着かないリズムで跳ね続けていた。
電車が来るまでの5分間――わずかな時間なのに、その長さが心臓を締めつけるように感じる。
のぞみ「……あと少しで、来る」
小さな声が風にかき消される。
待つこと自体がこんなにも緊張を伴うなんて、ついこの前まで想像すらしなかった。
彼と出会ってから、同じ朝がまるで違う色をしている。
ゴオオ……とホームに風が走る。難法行き急行電車が入ってきた。
車体が軋む音と同時に、のぞみの鼓動も一段と高鳴る。
人の流れに押されるように、のぞみとゆうは一緒に車内へ吸い込まれた。
混雑した空間、押し合う肩、近すぎる距離。
いつものドア横の手すりには行かず、今日は迷わずゆうの横に立った。
のぞみ心の声 今まではただの偶然だったのに……。でも、これからは一緒に乗れるんだ。ずっと隣同士にいられるんだ。
胸の奥にふわりと浮かぶ喜びに、顔が火照りそうになる。
車窓のガラスは朝の光を反射して、鏡のようになっていた。
のぞみはなんとなく視線を落とし、そこに映る姿を覗き込む。
のぞみ心の声 え……?映ってる……。ゆう君と私、目が合ってる……?
一瞬で息が詰まる。
慌てて視線を外したのぞみの動きに、ゆうもハッとしたように顔をそむけた。
それでも気になって、のぞみはもう一度そっとガラスを覗く。
また、目が合う。
まるで逃げ場のない小さな鏡の世界に、ふたりの視線だけが絡まり合う。
のぞみ心の声 えっ、えっ、なにこれ!?偶然?それとも……!
慌ててまた逸らす。
今度はふたり同時に。まるで打ち合わせたみたいに。
空気が一瞬止まったようで、のぞみの心臓は爆発しそうなほど膨れ上がった。
のぞみ心の声 どうしよう……。さっきまで普通に会話してたのに……。急に意識しちゃって、言葉が出てこない……!
電車はぎゅうぎゅうで、二人の肩はほんの少し触れ合っていた。
揺れに合わせて距離が近づくたび、全身が熱を帯びていく。
のぞみ心の声 でも、今日は違う。ただの偶然じゃない。私は“ゆう君と一緒に”乗ってるんだ。
その気持ちが、緊張と喜びを混ぜ合わせた甘い痛みになって胸を占めていく。
ふとゆうの横顔に目をやると、彼もどこか落ち着かない。
目の動き、手のやり場。まるで同じ気持ちを抱えているみたいで、のぞみの頬がさらに赤く染まる。
やがて終着の難法駅に到着した。
ドアが開き、人の波が一斉に流れ出す。
自然と並んで歩き出した二人。けれど、出口は左右に分かれていた。
のぞみは胸の奥で葛藤しながらも、小さな勇気を掬い上げるようにして口を開いた。
のぞみ「……また、LINEするね」
その言葉は、ほんの一歩前に進みたい気持ちの証。
照れ笑いで誤魔化しながら、右の改札へ向かって走り出した。
振り返る勇気はなかった。
でも背中には確かに、彼の視線が残っている気がした。
――学校に着くと、のぞみは迷うことなく親友の優子のもとへ駆け寄った。
胸に溜め込んできた秘密を、今すぐ誰かに聞いてほしかった。
のぞみ「ねぇ優子、あのね……私、もしかしたら……」
一息に言い切る前に、優子はもう目をキラキラと輝かせていた。
優子「えっ!?のぞみ、ついに!?恋の階段を上り始めたってこと!?」
肩を掴む手に力がこもる。机にまで振動が伝わりそうな勢い。
のぞみ「ちょ、ちょっと大げさすぎ!まだそんな……!」
言葉では否定するけれど、頬は真っ赤で、心の奥では――うん、そうかもしれない、と叫んでいた。
のぞみ心の声 だって、ほんの少し前まで名前も知らなかった人と、一緒に電車に乗って、隣に立って、LINEまで交換して……。私の毎日、全然違う。
優子は感情を抑えきれず、のぞみの手をぎゅっと握った。
優子「で、で!?ゆう君ってどんな人!?かっこいいの!?優しい!?それともミステリアス!?」
のぞみは一瞬言葉を探し、彼の姿を心に浮かべる。
不器用そうな仕草、でも誠実に向き合おうとする眼差し。
のぞみ「……優しいかな。それに、ちょっと不器用そうで……でも、すごく誠実な感じがするの」
優子「なにそれ!めっちゃ良いじゃん!最高じゃん!」
バンッと机を叩く音が教室に響き、周りの子たちが振り返る。
それでも優子は気にせず、のぞみの肩をバシバシ叩いた。
優子「のぞみ、おめでとう!これもう運命だよ!絶対に大事にしなきゃ!」
のぞみ「ちょっと!まだ何も始まってないってば!」
慌てて止めながらも、心臓は跳ね続ける。
運命――その言葉が胸の中でいつまでも響いていた。
のぞみ心の声 本当にそうなのかな……。でも、こんなに毎日が変わるなんて。やっぱり、そうなのかもしれない。
のぞみは机の下でこっそりスマホを開く。
画面に浮かぶ、ゆうとのトーク画面。
「またLINEするね」と言ったけれど、何を送ろう?どんな言葉なら伝わるだろう?
画面を見つめるその瞳には、もう彼の姿しか映っていなかった。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「きゃーーーっ!!ちょっと待ってや!!電車の窓ガラスで目ぇ合うとか!なんなん!?ウブすぎて爆発するわぁぁぁ!」
カナちゃん「ほんまやで!あんな混雑のぎゅうぎゅうの車内で、偶然ちゃうんよ!?のぞみちゃん、もう“ゆう君と一緒に乗ってる”って自覚しとるんやろ!?あかん、あかん、尊すぎて酸素薄いわ!」
なっちゃん「うち、松山駅のガラスでも試したいんよ。『おんまく』の花火のときとか、浴衣姿で目ぇ合うやつ!もう恋の花火どーんよ!」
カナちゃん「比喩が爆発しすぎやろ(笑)!でも分かる、分かる!ガラスの中でお互い見つめてしまって、そんで同時に逸らすんやろ!?なんやその初恋シンクロ!ピタリ賞やん!」
なっちゃん「逸らした瞬間、心臓ドカーンよ!のぞみちゃん、心臓まるで爆竹みたいに鳴っとるけん!」
カナちゃん「しかも肩触れ合ってんで!?ぎゅうぎゅう電車で、距離ゼロ!ほんま“恋のフルコンタクトスポーツ”や!」
なっちゃん「うわぁ……のぞみちゃん、照れと喜びで顔が真っ赤やったんやろなぁ。で、最後の“またLINEするね”や!これもう、恋のスタンプカード押したみたいなもんやん!」
カナちゃん「うんうん、キラーワードやで!“また”って言葉が未来を作っとんねん!ゆう君、背中に残像感じてるで絶対!」
なっちゃん「……はぁぁ、悶える。もう二人にペースメーカー持たせたいくらい鼓動激しすぎよ!」
カナちゃん「よし、ここで視聴者さんからのはがき紹介してこか!」
なっちゃん「はいはい!ラジオネーム『教室の隅っこ女子』さんから!『窓に映って目が合うなんて、私だったら即死です。心臓が持ちません。』」
カナちゃん「分かるわー!即死どころか、心拍数上がりすぎてApple Watchから“救急車呼びますか?”て通知くるやつや!」
なっちゃん「ほい次!Xからのコメント、“恋する自転車通学男子”さん。『LINEするね、の一言にやられました。もうこれは次元を超えた約束です。』」
カナちゃん「やられたん自分やん(笑)!でもほんま次元超えてるよな。“LINEする”ってただの連絡ちゃうねん、もう恋愛免許証の交付式や!」
なっちゃん「ええこと言うやん!続きまして、“鏡餅食べすぎ主婦”さん。『ガラス越しに目が合うのは、まるで神様が用意した鏡合わせの縁だと思いました。』」
カナちゃん「うわぁ、ええ例えや!ほんま縁結びの鏡やな。出雲大社の御利益より効くで!」
なっちゃん「最後いこか。“ペン回し中毒高校生”さん。『二人が同時に視線逸らすシーン、完全に青春アニメの神カットでした。』」
カナちゃん「ほんまや、あの一瞬はOPのカットインや!走馬灯にしたいレベル!」
なっちゃん「もうなぁ、うちら視聴者全員、心臓わし掴みされとるんよ!のぞみちゃんとゆう君、どう責任取ってくれるん!」
カナちゃん「責任取る言うたら……結婚やな!!」
なっちゃん「はぁぁぁ!!もぉ言うなやぁぁ!悶絶してスタジオ転げ回るけん!!」
カナちゃん「うちらも一緒に青春列車に乗りたいわ!」
なっちゃん「せやな!満員でもええけん、二人の隣に立ちたい!」
カナちゃん「けど窓ガラスに映るのは……私らの顔やけどな(笑)」
なっちゃん「やめーやぁぁぁ!!ロマン台無しやんかぁぁぁ!!」
カナちゃん「ほな次回も悶絶レビュー、楽しみにしとってや!」
なっちゃん「ほじゃけん、みんなも恋の電車、乗り遅れるなよー!」




