親友の優子
冷たい風が校舎の窓を鳴らしている。桜岡高校の昇降口から廊下へと歩みを進めたのぞみの心は、いつもの登校の朝とはまるで違っていた。手袋に包まれた指先がじんじんと熱を帯びているのは、外気の冷たさのせいではなかった。
のぞみ 「……優子!」
教室の前に姿を見つけた親友の背中に、思わず声をかけていた。声が少し裏返る。
驚いたように振り返った優子は、のぞみの顔をじっと見る。頬が赤くなっているのは、寒さのせいだけではないとすぐに見抜いた。
優子 「なに?どうしたの、のぞみ。そんな慌てた顔して」
のぞみは深呼吸するように胸を膨らませ、言葉を選んでから口を開いた。
のぞみ 「昨日ね……。ほら、前に話したあの人……電車で見かける彼。定期券売り場でばったり会ったの」
優子の瞳が一瞬で大きく見開かれる。椅子から飛び上がりそうな勢いで身を乗り出す。
優子 「えっ!?マジで!?そんなドラマみたいな展開ある!?で、どうしたの!?何喋ったの!?」
のぞみは一気に顔が熱くなるのを感じた。肩をすくめるようにして、少し俯きながら答える。
のぞみ 「……会釈した」
その一言に、優子は思わず声を張り上げる。
優子 「会釈!?それだけ!?他には!?なんか一言とか……!」
のぞみは唇を噛んだ。思い出すのはあの瞬間。窓口の係員に呼ばれてしまい、声をかける余裕などまったくなかった。
のぞみ 「……それが、精一杯だったの。彼もすぐに窓口に呼ばれて、何も言えなかった」
その声はだんだん小さくなっていく。机の端に指先を置いて、緊張を誤魔化すように軽くトントンと叩いていた。
優子はそんなのぞみの言葉を聞きながらも、頬を上気させていた。まるで自分のことのように心臓を高鳴らせている。
優子 「で、で?彼はどうだったの!?そのとき、なんか反応あった!?」
のぞみ 「……会釈してくれた」
言い終えると同時に、のぞみの胸の中で昨日の光景が再生される。視線が交わり、わずかに動いた彼の首。ほんの数秒の出来事が、夜になっても眠れないほどに鮮やかに蘇ってくる。
優子は机をバンッと叩き、立ち上がる。
優子 「マジで!?それ、もう絶対脈ありじゃん!普通そんな知らん人に会釈なんか返さないよ!?あたしだったら、知らん顔して終わりだよ!」
のぞみは目を丸くし、少し怯んだように眉を寄せる。
のぞみ 「……そうかな。ほんとに?私、ただ……偶然そうなっただけかもって……」
その声はどこか頼りなく、心の奥にまだ自信を持てない揺らぎを含んでいた。
優子は勢いよくのぞみの肩を掴んで、前のめりになる。
優子 「そりゃそうだって!もし見知らぬ人から急に挨拶されたら、普通スルーするでしょ!?なのに返してくれたってことは、もう“知らない人”じゃないって証拠だよ!」
のぞみの胸の奥で、優子の言葉が灯をともす。自分でも無意識に認めたがっていた確信を、親友の口から突きつけられたような気がした。心臓が跳ね上がり、頬の内側が熱くなる。
優子はさらに目を輝かせて畳みかける。
優子 「それにさ、のぞみ。あの作戦、あんたまだやってないでしょ?私が言ったアレ!電車で揺れたときに、ちょっとだけもたれかかるやつ!」
のぞみは一瞬言葉を詰まらせた。心臓が一気に耳まで届きそうなほどに高鳴る。
のぞみ 「ま、まだ無理だよ……そんな急にできないって……」
視線を逸らしながら答えるその表情には、羞恥と期待とが入り混じっていた。
優子は唇を尖らせ、肩をすくめる。
優子 「もー、もたもたしてたら春になっちゃうよ!チャンスは電車の中に転がってるんだから!」
のぞみは小さく笑いながら、心の奥で呟く。
――私に、そんな勇気出せるんだろうか。
教室のざわめきの中、二人だけの会話は小さな恋の炎を大きく膨らませていった。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん 「きゃーっ!出た出た出た!教室のシーンよ!もうのぞみちゃんの胸の高鳴りがビシビシ伝わってくるんよ!」
カナちゃん 「ほんまそれ!あんた昨日の定期券売り場であれだけ心臓バクバクやったんやもんなあ!で、それをすぐさま優子に報告するって……友情も青春もキラッキラやん!」
なっちゃん 「ほんで優子の食いつき方よ!“マジで!?”の破壊力!机ドン!からの立ち上がり!恋愛ドラマの相棒役の鑑やけん!」
カナちゃん 「わかる!普通ここで『えーそうなん?』くらいで終わるやろ?でも優子は違う。“それ絶対脈アリ!”って全力で背中押す。これ最高の親友ムーブやで!」
なっちゃん 「しかも“普通知らん人から挨拶されたら返さん”っていう名言よ!あれでのぞみちゃんの心に灯がともったんやけん!」
カナちゃん 「ほんまや。優子最高!優子癒される!!もう彼女は恋愛の応援団長!“もたれかかり作戦”とかネーミングセンスも炸裂やし!」
なっちゃん 「のぞみちゃん、“ま、まだ無理だよ……”って耳まで真っ赤になっとる姿が目に浮かぶんよ。あの照れ隠しの笑み、もう可愛さの暴力やね!」
カナちゃん 「でさ!この“春になっちゃうよ!”って優子の煽り!卒業ってタイムリミット突きつけてくるの、もう観客全員が『急げ!』って叫びたくなるやつ!」
なっちゃん 「うんうん!だって視聴者目線からしたら“早よ告白せんかい!”ってソワソワ止まらんもん!」
カナちゃん 「で、ここからが本番!視聴者のみんなから届いたはがきとXのコメント、紹介してこか!」
なっちゃん 「ほいほい、まずはがき一枚目。“優子ちゃん欲しいです。うちのクラスに欲しいです。恋の指南役にしてほしい!”って書いとるよ!」
カナちゃん 「欲しいって!家具ちゃうねん!でも気持ちはわかる!彼女が一人おったら恋の勝率100倍やで!」
なっちゃん 「次はXのコメント。“会釈返してくれた時点で勝ち確演出。RPGで言うたら勇者の剣ゲット級”」
カナちゃん 「おもろっ!ほんまそれや!のぞみちゃん、もう“ただの通行人A”卒業して、ゆう君の物語に正式参戦した瞬間や!」
なっちゃん 「お次は、“優子の机ドン、推しカプ公式認定サインに見えた”ってコメント」
カナちゃん 「机ドン=スタンプラリーのハンコか!でもわかるわー。あの音でのぞみちゃんの恋心に『正解!』って押されたんや!」
なっちゃん 「まだまだあるよ。“優子作戦”って甘酸っぱすぎ!うちもやってみたいけど、電車ん中で転んだ人みたいになりそう”」
カナちゃん 「それはそれで運命の始まりやん!『大丈夫?』って手差し伸べられて恋スタート!シンデレラが片足だけ脱げるパターンや!」
なっちゃん 「最後にもうひとつ。“のぞみちゃん、勇気出せ!君は今、青春ラブストーリーの主演女優だ!”」
カナちゃん 「名言やなあ。青春ってのは主演やる勇気を持ったもんだけが掴めるもんやねん。のぞみちゃん、あんたは舞台のど真ん中や!」
なっちゃん 「優子と一緒におる限り、のぞみちゃんの物語はもっともっと眩しくなるけん!もう目が離せんよ!」
カナちゃん 「ほんまや。次の展開が楽しみすぎて、今夜眠れんかも!」




