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のぞみとゆうの物語 ~こんな恋をしている二人が羨ましい  作者: 播磨 颯太
第一部-3章 揺れる気持ち、揺らぐ進路
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のぞみのチョコレート

窓の外では、二月の冷たい風が通りを吹き抜けていた。けれどレストラン“ジュテーム”の中は、柔らかな照明と、甘く香るデミグラスソースに包まれて、まるで別世界のようだった。テーブルの上には水の入ったグラスと、まだ温かさを残すパン皿。二人きりで向かい合う時間は、どこか夢の中のようにゆっくりと流れていた。


のぞみはフォークを手にしたまま、しばし迷っているようだった。けれど、やがて小さく息を整え、ゆうをまっすぐに見つめる。その瞳の奥には、照れと決意が入り混じった複雑な光が揺れていた。


のぞみ「ねぇ、ゆう君……今日って、何の日か分かる?」


声は穏やかだったけれど、ほんの少し震えていた。問いかけの裏にある気持ちを、ゆうに悟られまいとするように。


突然の質問に、ゆうは目を瞬かせた。大切な日? 誕生日でも記念日でもない。のぞみの受験結果の事ばかりで、すぐには答えが出てこない。


ゆう「え……なんだろう。特別な日なのかな」


思いがけない問いに、心臓がわずかに速くなる。のぞみの瞳があまりに真剣で、冗談めかして返すこともできなかった。


のぞみは一度視線を落とし、ほんのりと頬を染めてから、勇気を振り絞るように続けた。


のぞみ「今日は……2月14日。バレンタインデーなんだよ」


その瞬間、ゆうの胸の奥で何かが跳ねた。わかっていたはずの日付なのに、のぞみの口から改めて聞くと意味が変わる。教室で友達が盛り上がっていた光景が頭をよぎるけれど、目の前で小さく微笑む彼女の姿に、それらはすぐに遠ざかっていった。


のぞみはそっとカバンに手を伸ばし、小さな箱を取り出す。淡い色のリボンが結ばれていて、手作りの温もりが伝わってくる。


のぞみ「これね……ゆう君に食べてもらいたくて、作ってきたの」


言葉の端々に、恥じらいと期待が滲んでいる。唇をきゅっと結んで差し出す仕草は、普段よりもずっと幼く見えた。


ゆうは思わず息を呑み、両手でその箱を受け取る。指先に伝わる重みが、ただのチョコレート以上のものを告げているようだった。


ゆう「えっ……僕に? 本当に?」


声がかすかに震えているのが、自分でもわかる。冗談ではない。のぞみが、自分のためだけに。


のぞみは小さくうなずき、少し不安そうに眉を下げる。


のぞみ「うん。上手にできたか心配だったんだけど……」


のぞみの手が膝の上でぎゅっと握られているのが見える。勇気を出して渡したのに、受け取ってもらえなかったらどうしよう――そんな心配を隠しきれずにいる。


ゆうは胸が熱くなり、自然と微笑みがこぼれた。


ゆう「ありがとう、のぞみさん。すごく嬉しいよ」


小さくリボンをほどき、箱を開けると、色とりどりのチョコレートが丁寧に並んでいた。一つひとつの形に、のぞみの真剣さと優しさが刻まれているようで、胸の奥が締めつけられる。


ゆうはその中からひとつをつまみ、口に運んだ。ほろ苦さと優しい甘さが広がり、体の芯まで温かくなる。


ゆう「……美味しい!」


笑顔でそう言うと、のぞみの顔が一瞬で明るくなった。頬が赤く染まり、瞳がきらきらと輝く。


のぞみ「ほんと? よかった……すごく不安だったんだ」


その笑顔は、今までで一番柔らかくて、今までで一番近くに感じられるものだった。


ゆうはもう一粒を手に取り、照れ隠しのように笑った。


ゆう「とっても美味しい。のぞみさんが作ってくれたんだから、特別だよ」


言葉に嘘はなかった。どんな高級なチョコよりも、この一粒の方が心を震わせる。


のぞみは胸に手を当て、深呼吸をひとつ。笑顔を保ちながらも、その瞳の奥に新たな決意の色を宿す。


のぞみ「それでね……実はもうひとつ、伝えたいことがあるんだ」


その声はさっきよりも深く、揺るぎないものに変わっていた。今度こそ、彼女が心に秘めていた本当の言葉が口からこぼれる。


ゆうの心臓が大きく鳴り響く。次の瞬間を恐れるように、けれど待ち望むように。息をするのさえ忘れてしまいそうだった。


ゆう「……うん…」


瞳を見開き、のぞみの言葉をただ待つ。


のぞみはほんの一瞬だけ視線を落とし、そして顔を上げる。窓から差し込む冬の光がその横顔を縁取り、影と光が交差する。


のぞみ「私ね……」


言葉が唇からこぼれかけた、その瞬間――。


隣のテーブルに料理を運ぶ店員の声と、皿の音が空気を切り裂いた。二人の間に張りつめていた糸が、一瞬ふっと揺らぐ。


けれどゆうは、確信していた。のぞみの次の言葉が、自分にとって忘れられない瞬間になることを。


——その続きを、息を呑んで待っていた。

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


カナちゃん「はい始まりましたー!“なっちゃんカナちゃん”のレビューコーナー!いやぁ今回の“バレンタインの告白”やけども!」


なっちゃん「はぁぁ……見よったけんど、わし息止まるか思たわぁ!もうなぁ、のぞみちゃん、ぜっったい受験結果いう思て構えよったんよ!」


カナちゃん「そうやんか!そんなん誰が見ても“これは進路の話やな、決断の瞬間やな”って思うやん!そっからの――」


なっちゃん「バ、バレンタインチョコやったぁぁあ!って、ずっこけるけん!」


カナちゃん「ほんまやで!机にひじドーンってやったらスープこぼれるやつやん!」


なっちゃん「受験の“じゅ”の字も出んのに、チョコの箱が先に出てくるとは!ゆう君も“えっ僕に?ほんとに?”ってなって震えよるし、わしも画面の前で震えよったがな!」


カナちゃん「震度4ぐらいの揺れやな!いやでもなっちゃん、これさ、“拍子抜け”言うより、“あ、ほんまに恋愛しよるんや”って実感する瞬間でもあるやんな?」


なっちゃん「うんうん、甘いチョコの匂いがな、なんか受験の汗と涙を一瞬でかき消した感じやけん!わし、胃袋の中まで甘ぅなったわぁ」


カナちゃん「わかるぅ!でもなぁ、次の一言で爆弾落ちそうやのに、皿ガチャーンって入ってくる店員さん!空気読めー!って叫んだわ!」


なっちゃん「もうな、あれ“神様のタイミング芸”やけん。こっちのドキドキ返してほしいわ」


カナちゃん「ほんまやで!さ、ここで恒例の視聴者コメント紹介いきましょか!」


なっちゃん「おっけい!まずははがき。“ラジオネーム:チョコの妖精”さんから」


カナちゃん「“のぞみちゃんが手作りチョコ渡すとこで心臓止まりました。救急車呼びそうになりました”」


なっちゃん「そりゃ止まるわい!AEDより先に砂糖持ってこい、言うレベルやけん!」


カナちゃん「次はXのコメント。“@kokoroga溶けるさん”『えっ受験結果じゃなかったの!?肩に力入れてた分、逆に倒れた』」


なっちゃん「ほんまやなぁ、あれはジェットコースターの最後に急に観覧車乗せられた気分やけん!ゆっくりやけど心臓には効く!」


カナちゃん「おもろい例えやな!はい次、“@valentine狂いさん”『チョコ食べた瞬間のゆう君の顔、完全にオスの顔』」


なっちゃん「ちょ、言い方!けどわかる!“おいしい”って言う顔が、理科の教科書にのせたいくらい純粋やけん」


カナちゃん「ほんまやで、甘さで細胞レベルまで満たされとったんやろな。視聴者のみんな、コメントありがとうやで!」


なっちゃん「いやぁ今日も大騒ぎレビューになったけど、次回、のぞみちゃんが何を言おうとしたんか――震えて待てやな!」


カナちゃん「ほんまやな!じゃあ今日はこのへんで。“なっちゃんカナちゃん”また次回ー!」

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