夢のような一日
映画館を出ると、夜風がふたりの頬を優しく撫でた。
街のざわめき、看板の灯り、行き交う人々の足音。すべてが、さっきまで見ていたスクリーンの物語よりも鮮やかに感じられた。
ゆうは少し俯きながらも、胸の奥からせり上がる思いを抑えきれなかった。
彼は喉を鳴らし、言葉を探す。
ゆう「……の、のぞみさん。あの、帰り道も……手、つないでてもいい?」
勇気を振り絞った声は、夜の雑踏に吸い込まれて消えそうなくらいかすかだった。
一瞬、世界が静止したように思えた。
のぞみは返事をしなかった。ただ、ほんのりと微笑んで、ゆっくりと伸ばした手でゆうの手を包み込むように握った。
その握りはためらいなく、しかし優しく、強かった。
のぞみの手の柔らかさが、ゆうの指先から心臓までを一気に駆け抜ける。
手のひらから伝わるぬくもりは、ゆうの17年の人生の中で、いまだかつて味わったことのないほどの幸福だった。
ゆう(……僕、こんなに幸せでいいのかな。これから先、今日を超えることなんてあるんだろうか)
胸がいっぱいで、歩くたびに世界が違って見えた。
街灯はまるで祝福の灯火のように瞬き、行き交う人の姿すら、どこか温かな色を帯びて見えた。
のぞみ「ねぇ、ゆう君……」
少し顔を寄せ、声を落として話しかけてくる。
その仕草に、ゆうの鼓動が跳ねた。
のぞみ「今日ね……すっごく楽しかったんだ」
言葉と一緒に笑みが零れ、瞳が細められる。
ゆうは何か返そうとしたが、胸の中に溢れた想いは形を持たなかった。
ゆう「……僕も。本当に、すごく」
それだけを吐き出すのが精一杯だった。
言葉にしてしまえば壊れてしまう気がして、大切な感情を守るように口を閉ざした。
のぞみは少し前に出て、繋いだ手を軽く引っ張る。
その細い腕の力が、驚くほど頼もしく感じられる。
のぞみ「じゃあさ……またデートしてくれる?」
のぞみの声は少し上ずっていた。
照れを隠すような響きが、逆に胸を打つ。
ゆう「もちろん。何回でもしたい」
その答えに、のぞみは目を細め、頬をほんのり染めて微笑んだ。
その表情を見た瞬間、ゆうは自分の心が完全にのぞみに奪われていることを悟った。
やがて二人は難法駅に着いた。
電車が到着するまでのわずかな時間、ふたりは車内の隅に並んで座り、繋いだ手を離さなかった。
のぞみ「……ほんとはね、私、もう少しだけ……こうしていたいな」
囁くような声に、ゆうは胸がいっぱいになった。
ゆう「……僕も」
短い言葉。けれど、それ以上の言葉は必要なかった。
心臓の音が二人を繋ぐリズムになっていた。
やがて電車が走り、西元山駅へと戻ってくる。
改札を出ると、のぞみの父が車で迎えに来ていた。
のぞみは少し恥ずかしそうに振り返り、手を振って車に乗り込む。
どうやら今日のデートのことは家族には秘密らしい。
ゆうはひとり残され、夜風の中を歩いた。
全身に残るのぞみのぬくもりが、まだ手のひらに鮮やかに宿っていた。
家に着くと、夢の余韻に包まれたままベッドに腰を下ろした。
すると、LINEの着信音が鳴った。画面には「のぞみ」の名前。
のぞみ「今日は本当に楽しかったよ。ありがとう、ゆう君」
短い言葉。その最後に、小さなハートの絵文字が添えられていた。
画面を見つめるだけで、胸の奥が温かく震える。
ゆうはそのメッセージを何度も何度も読み返し、目の奥が熱く潤んでいくのを感じた。
たった一日。それなのに、のぞみと過ごした時間は永遠の記憶のように深く刻まれていた。
ゆう「僕もすごく楽しかったよ。のぞみさんと一緒にいられて、幸せだった」
震える指で送信ボタンを押すと、心臓が弾けそうに鼓動した。
こんなにも素直に言葉を伝えられるのは、のぞみだからだ。
数分後、再び通知音が鳴った。
のぞみ「嬉しい。私も幸せだったよ。またデートしてくれる?」
その瞬間、ゆうは迷わず返信する。
ゆう「もちろん!何回でもしたい!」
返事を送ると、すぐに可愛らしいスタンプと一言が返ってきた。
のぞみ「楽しみにしてるね、ゆう君」
最後にはまた、小さなハートの絵文字。
その小さな光の粒が、ゆうの胸を優しく包み込む。
スマホを強く握りしめながら、ゆうは今日一日の幸福を反芻した。
そして心の底から願った。この気持ちがずっと続いてほしい、と。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
(♪しっとりしたBGM)
なっちゃん「……はぁぁぁ……もう無理やわ。見よんだけで胸ぎゅーってなっとる……」
カナちゃん「わかる!今の、もうあかん、泣いてまうって……。こんな尊いカップルおる?おらんで!」
なっちゃん「映画館出て夜風に吹かれるとこやろ?あそこでもう、ゆう君、よう勇気出したなぁって思わん?」
カナちゃん「せやねん!『帰りも手、つないでええ?』やで?あの小声の震えた感じ、想像しただけで、こっちの胸まできゅーってするわ!」
なっちゃん「のぞみちゃんもさ、返事せんと微笑んで手ぇぎゅーって握るんよ。あれ、言葉より重い返事やんかぁ……!」
カナちゃん「せやせや!しかも、ただ握るんちゃうんよ。しっかり、強う握るってとこがもう、なんか……お互いの心ががっちり繋がっとる感じするんや」
なっちゃん「うちら今ほんま泣きながら見よるけんね。街灯が祝福しよるってナレーションも、もうその通りやん……」
カナちゃん「わかる!もう街が舞台装置みたいになっとるもんなぁ。二人で歩いとったら、全部の灯りが二人のために点いとるんちゃうん?って思うくらい」
なっちゃん「で、のぞみちゃんが『またデートしてくれる?』ってちょっと上ずった声で聞くんやけど……あれ反則やわ。わし涙止まらん……」
カナちゃん「うちも!あの言い方、女の子が勇気出して言うときのトーンやったなぁ。んなもんYESに決まっとる!ゆう君も即答で『何回でもしたい!』やし!くぅ~!青春ここに極まれりや!」
なっちゃん「電車ん中でさ、まだ手ぇ繋いどって、『もうちょっとこうしてたい』ってのぞみちゃん……ほんま心臓やられるわ。ゆう君も『僕も』って……それだけで十分なんよね」
カナちゃん「そうそう!長い言葉いらんねん。あの沈黙と心音が答えやもん」
なっちゃん「で、家帰ったらLINE来て……『ありがとう、ゆう君』ってハートやろ?もう……尊すぎてスマホごと抱きしめたいやん」
カナちゃん「既読ついた瞬間のドキドキとか、返信したあと胸がばくばくなるとか……高校生ならではやで。あの初々しさ、もう眩しすぎて直視でけへん!」
なっちゃん「けどな、眩しすぎるけん、目ぇ潤むんよ。幸せのおすそ分けしてもろた感じで……うちまで胸いっぱいになっとる」
カナちゃん「ほんまやなぁ……。こんなピュアで温かい気持ち、なかなか現実でお目にかかれへんもん。『またデートしてくれる?』『何回でもしたい!』……あーもう!尊死や!」
なっちゃん「……あぁ……ゆう君、のぞみちゃん……二人の未来、ずっと続けてや……って祈りたくなるな」
カナちゃん「せやで!うちらも涙ぐみながら応援するしかないわ。こんな子ら、守らなあかん!」
(♪ジングルフェードアウト)




