何も手につかない一日
川上高校の二年教室。1月27日、午前10時20分。窓から差し込む冬の光が、教室の机を静かに照らしている。
だがその明るさとは裏腹に、ゆうの胸の中は、どこか落ち着かない熱でいっぱいだった。
ノートの上に走らせたはずのペン先は、先生の声を追いかけることなく、気づけば “のぞみ” という文字を書きかけて止まる。
ゆう心の声(小さく) あ、危ない……。こんなの書いたらバレる……。
必死に書き直してごまかす。だけど頭の中はどうしても彼女に引き寄せられてしまう。
のぞみの笑顔、寄り添う肩のぬくもり、そして昨日交わした短いLINEのやり取り――それらが何度も頭の中に蘇っては消え、消えてはまた鮮明に浮かんでくる。
先生の声が遠くなる。黒板に書かれる公式や説明も、耳の奥をすり抜けていく。
残るのは、のぞみの名前だけ。
昼休みが過ぎ、午後の授業が始まる。
昼ごはんで温かくなった体と、昨夜遅くまでスマホを握っていた眠気が、じわじわと押し寄せる。
ゆう心の声 ちょっとだけ……目閉じるだけ……。
机に置いた腕の間に顔を埋めた瞬間、まぶたが自然に重なり落ちていった。
安心感と、甘い夢の余韻に誘われるように――。
「おい、ゆう!」
鋭い声が教室に響いた。
ビクリと肩を震わせて、ゆうは顔を上げる。周りから一斉にクスクスと笑い声が漏れる。
先生が腕を組み、呆れたように睨んでいた。
先生 「お前、授業中だぞ。夜更かしでもしたのか? 居眠りとはいい度胸だな」
ゆう 「あっ……す、すみません……!」
声が裏返る。焦りで顔が赤くなる。
けれど――叱られているのに、不思議と胸はどこか軽かった。
言い訳なんてできない。昨夜はただ、LINEの通知に何度も心臓を跳ねさせて、ベッドに入っても眠れなかった。
「のぞみさんと繋がっている」という事実が、嬉しくて仕方なかったから。
先生の言葉は続いているが、耳に入ってこない。
隣の席の友達が笑いをこらえながらこちらを見ている。後ろの女子が「ゆう、やば〜」と小声で言っている。
それでも、恥ずかしいという感情よりも、頭の中を占めているのはのぞみの顔だった。
チャイムが鳴る。終礼が終わる。
ゆうは、まるで反射のようにポケットからスマホを取り出していた。
画面に、ひとつ光る通知。
のぞみ:お疲れさま。今から帰るね
その瞬間、心臓が大きく跳ねた。
たった一文。
ただの帰り道の報告。
けれど、ゆうにとっては――世界の色を変える魔法のように思えた。
ゆう心の声 僕のことを思い出してくれて、わざわざ送ってくれた……?
普段なら流してしまう言葉が、今は特別に胸に染みていく。
頬が熱を帯びる。胸の奥がぽかぽかする。
ゆうはしばらく画面を見つめてから、親指をゆっくり動かした。
ゆう 「お疲れさま! 気をつけて帰ってね」
送信。
画面にすぐ、「既読」の文字が浮かぶ。
それだけのことなのに、ゆうの鼓動はさらに速まる。
今、彼女が自分の言葉を見てくれた――その事実が、どんな説教よりも大きな意味を持っていた。
机の中にスマホをそっとしまいながら、ゆうは小さく笑った。
先生に叱られた恥ずかしさも、寝不足のぼんやりした頭も、もうどうでもいい。
ゆう心の声 のぞみさんは、どんな気持ちで送ってくれたんだろう……。僕と同じように、繋がれて嬉しいって思ってくれてるんだろうか……。
胸の奥から熱がこみあげてくる。
電車の時間が待ち遠しい。
ゆうは鞄を肩にかけ、扉に向かって歩き出した。
その足取りは、いつもより軽かった。
―――帰りの電車が、いつもよりずっと楽しみだった。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん 「出た出たー!チャイム鳴った瞬間にスマホ取り出すゆう君!もうな、心の準備できとる顔やったんよ!」
カナちゃん 「ほんまやで!あれ“無意識に”ってナレーション言うてたけど、無意識ちゃうやろ~!もう“のぞみちゃんから通知来い来い”って念じてるで、絶対!」
なっちゃん 「で、ほら来たやん!『お疲れさま。今から帰るね』って、なんやこれ……かわいすぎやろ!魔法の呪文か思たわ!」
カナちゃん 「いやほんま!そんなん届いたらさ、普通やったら『ふーん』やのに、もうゆう君ニヤけすぎやで!教室で“既読”見た瞬間の顔!あれクラスメイトにバレバレやったんちゃう?」
なっちゃん 「バレとるバレとる!“おっ、あいつ誰かとええ感じなんやな”って絶対思われとるけん!」
カナちゃん 「それにしてもな、“どう返信しよかな~”って悩んでシンプルに返すあたりが、また初々しいわぁ!『お疲れさま!気をつけて帰ってね』て……ええやん、めっちゃ誠実やん!」
なっちゃん 「そやけど即“既読”ついたらドキッとするよなぁ!あれ嬉しいけど、緊張もするけんね!わかるわぁ」
カナちゃん 「わかる~!『今、のぞみちゃんが自分のメッセージ見てくれてる』って思うだけでテンション爆上がりやろな!そらもう、授業中に先生に叱られたことも吹っ飛ぶわ!」
なっちゃん 「ゆう君、完全に幸せオーラまとっとったよな!あの“顔熱うなってます”感!ほやけどあの時点で心はもう西元山駅に飛んどるけん!」
カナちゃん 「そうそう!『帰りの電車が、いつもより楽しみやった』って……いや~、青春かっ!」
なっちゃん 「青春やね~!でもさ、ちょっと考えたんやけど、のぞみちゃんが“今から帰るね”ってわざわざ送ったん、ゆう君のこと意識しとる証拠やない?」
カナちゃん 「おお~、出た!愛のサイン読み取り!それあるかもしれへんで。わざわざ言わんでもええことやのに送ってくるって、繋がりたい気持ちやん」
なっちゃん 「ほやろ?ゆう君、早よ気づいてぇ~!って画面越しに叫びたなったわ」
カナちゃん 「ほんま、二人とも可愛すぎやで!こっちは見てるだけでニヤケてまうわ!」
なっちゃん 「いやもう、“ゆう君うらやましいー!”やね!私も誰かからそんなん届かんかなぁ」
カナちゃん 「届かんのかい!(笑)ま、ゆう君もこの先もっと振り回されるんちゃう?ええ意味でな!」
なっちゃん 「それは間違いない!帰りの電車、波乱の予感やけん!」
カナちゃん 「次の展開も楽しみやなぁ~!」
――“なっちゃんカナちゃん”レビュー、今日も全力でニヤニヤしながらお届けしました。




