夢のような一日 訪れる寂しさ
のぞみの運転するLEXUS RX 500hが、ゆうの家の前に静かに停まった。
のぞみはハンドルを握ったまま、隣のゆうに目をやる。
「……ん…のぞみさん……」
ゆうは 寝言のようにのぞみの名前を呟きながら、ゆっくりと目を開けた。
「……ん?……あ、えっ!? つ、着いたの!?」
突然状況を把握したゆうは ハッとして飛び起きる。
「えっ、僕、寝てた!? うそ……なんで起こしてくれなかったの!?」
「ふふっ、気持ちよさそうに寝てたから、起こしにくかったの」
のぞみは 優しく微笑みながら、驚くゆうの顔を眺める。
「うぅぅ……のぞみさんとのデート、もっと楽しみたかったのに……」
ゆうは 自分が寝てしまっていたことをひどく後悔している。
「……せっかくのデートなのに、寝ちゃうなんて……バカだ僕……」
「そんなことないよ。ゆう君がリラックスしてくれてたなら、それでいいの」
のぞみの言葉に、ゆうは 口を尖らせながらも、少しだけ頬を染めて うつむいた。
やがて、お別れの時間がやってくる。
ゆうは 名残惜しそうにシートベルトを外し、のぞみの方へ顔を向ける。
「……のぞみさん、今日は本当にありがとう。運転も全部任せちゃったし……でも、夢みたいに楽しかった」
「私も楽しかったよ、ゆう君」
「ホント?」
「うん。最高の一日だった」
のぞみが ふんわりと微笑む と、ゆうの顔にもようやく少し安心した表情が戻る。
けれど、まだ何か言いたそうに、もじもじしている。
「……のぞみさん、帰ったらLINEしてくれるよね?」
「もちろん。ちゃんとお家に着いたら連絡するよ」
「本当に? 絶対だよ?」
「絶対だよ」
「……何回も送っていい?」
「ふふっ、何回でもどうぞ?」
のぞみが クスクスと笑うと、ゆうは恥ずかしそうに頬をかく。
「じゃあ……また明日」
「うん、また明日ね」
ゆうは 何度も何度も名残惜しそうにのぞみの顔を見つめながら、車を降りる。
のぞみは、そんなゆうの姿をミラー越しに見つめながら、車をゆっくりと発進させた。
「ずっと、ずっと見ていたい」
ゆうは、のぞみの車が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしていた。
のぞみもまた、ルームミラーに映るゆうの姿をずっと追いかけていた。
(本当に楽しかったな……)
(また、こんなふうに……)
のぞみは、今日一日の思い出を胸に刻みながら、少しずつ遠ざかるゆうの姿を ミラーの中で最後まで見届けた。
やがて、ミラーの中から、ゆうの姿が完全に消えた。
のぞみは 少し寂しそうに微笑みながら、静かに夜の道を走り続ける。
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のぞみは無事に家へと帰り、愛車のLEXUS RX 500hを静かに駐車した。
車を降りて玄関のドアを開けると、そこには 満面の笑みを浮かべ、腕を組んで仁王立ちしている夏美の姿が――。
「お姉ちゃ〜ん、おかえり〜!」
のぞみは ギョッと目を見開いた。
「な、なにそのポーズ……」
「決まってるでしょ? “お姉ちゃんのドライブデート徹底追及スペシャル” の開幕よ!」
夏美は 芸能レポーター顔負けのドヤ顔で宣言 する。
のぞみは、(ああ……やっぱりそうなるのね)と 嬉しさ半分、恥ずかしさ半分 という複雑な気持ちになりながら、家の中へ足を踏み入れた。
「記者会見、始まります!」
のぞみが荷物を片付け、一息つくと、夏美がリビングへ呼び出した。
「さ、リビングへどうぞ。記者会見の準備は万端だから!」
「記者会見……?」
のぞみがリビングのドアを開けると――
そこには テーブルの上にノートとペンが置かれ、椅子が絶妙な距離感で配置されている。
まるで、芸能人の緊急記者会見のようなセッティングだった。
「え、なにこれ?」
「ほら、お姉ちゃん “有名人のぞみ” なんだから、ドライブデートの全貌を語ってもらわないと!」
夏美は パシャパシャとシャッター音を口で真似しながら、ノートを開いてペンを構えた。
のぞみは思わず苦笑する。
「もう……ほんとに子供なんだから」
「はいはい、それより、さっそくインタビュー開始!」
「では質問です! お姉ちゃんとゆう君は、朝何時に出発しましたか?」
「……8時ちょうど」
「おお、時間ぴったり! で、最初に行ったのは?」
「白髭神社……」
「はいはい、じゃあ 神社では手を繋いだんですね?」
「う、うん……自然にね」
「出ました、“自然に” !」
夏美は ペンを走らせながらニヤニヤとにじり寄る。
「メタセコイア並木では?」
「ゆう君と二人で……すごく幻想的な雰囲気の中で……うん、なんか言葉がいらなかった」
「ほうほう……“言葉がいらなかった” !」
「ちょっと、そのメモの仕方やめてよ!」
のぞみは 顔を赤らめながらも、恥ずかしそうに微笑んでいる。
「で、お昼ご飯は?」
「近江牛のハンバーグを食べたの」
「それって……“あーん” した?」
「……し、した……」
「出ました! “あーん” !」
夏美は 両手を叩いて大喜びする。
のぞみは 恥ずかしさのあまり顔を覆いたくなる。
「で、でね……帰り道、西大津バイパスでゆう君がウトウトして……」
「ほうほう」
「気づいたら寝ちゃってたの」
「それで、それで?」
「そのまま、家の前まで送ったの」
「……で、キスは?」
夏美は ここぞとばかりに身を乗り出して、のぞみを直視する。
「えっ……?」
のぞみは 一瞬固まり、耳まで真っ赤になる。
「いや、ゆう君、寝てたし……してないよ?」
「ふぅん……」
夏美は じっとのぞみを見つめる。
「じゃあ、もしゆう君が寝てなかったら?」
「えっ?」
「もし、ゆう君が寝てなかったら……キス、してた?」
「~~っ!!?」
のぞみは 耳まで真っ赤になり、思わず顔をそむける。
「な、なにそれ、そんなの分かんないってば!」
「へぇ~~」
夏美は ジト目になりながら、さらにのぞみに詰め寄る。
「ってことは、お姉ちゃん…… ゆう君が寝てなかったら……“可能性はあった” ってことね?」
「ち、違うってば!!」
のぞみは 慌てふためきながら、クッションを抱きしめてソファに倒れ込む。
「ふふふ、焦るねぇ、お姉ちゃん」
夏美は 記者会見のメモ帳をパタンと閉じ、満足げに微笑んだ。
「まぁ、今日のところはこれくらいにしといてあげる。でも、また今度詳しく聞かせてね?」
「も、もう聞かせたでしょ……」
「ううん、“今度” っていうのは ゆう君との次のデートのこと!」
のぞみは 恥ずかしさに耐えきれず、クッションの奥へと顔を埋めた。
「また、デートしたいな……」
――のぞみの心の中には、今日の幸せな思い出と、次のデートへの淡い期待が、静かに芽生えていた。
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ゆうの部屋
ゆうは 部屋のベッドに寝転がりながら、スマホの画面をじっと見つめていた。
画面には、今日一日、のぞみと一緒に撮った写真が並んでいる。
朝、白髭神社で撮った一枚。琵琶湖をバックに微笑むのぞみ。メタセコイア並木を走る車内でのツーショット。近江牛ハンバーグを食べるのぞみの笑顔。
そして――帰り際、車の中でうとうとしながらのぞみに撮られた、寝顔の自分。
「もう……こんなの撮ってたの……」
思わず 照れくさくなりながらも、口元がほころぶ。
しかし、楽しかった思い出を振り返るほど、心の中にぽっかりと寂しさが広がっていく。
今、隣にのぞみはいない。
ファンタジーランドでのデートも楽しかったけど――
今日のデートは、もっと大人びた、“二人だけの時間” だった気がする。
大人の領域に、一歩足を踏み入れたような感覚。
「……僕も、少しは大人になれたのかな」
スマホの画面を見つめながら、ふとそんなことを思う。
そして、心の中で静かに誓う。
自分が大人になっても、のぞみさんを守り続けたい。
今は甘えてばかりだけど、いつかは――。
その時――。
ピロン♪
スマホの通知音が部屋に響く。
「……!」
ゆうはすぐにスマホを手に取り、画面を見る。
“のぞみ” の名前が表示されていた。
指先が少し震えながらも、すぐにメッセージを開く。
そこには、のぞみからの長い文章が綴られていた。
『ゆう君、今日は本当にありがとう。』
ゆうは、のぞみのメッセージを 声に出してゆっくりと読む。
『白髭神社で一緒にお願い事をしたこと、メタセコイア並木をドライブしたこと、近江牛のハンバーグを食べたこと……全部、幸せな時間だったよ。』
『ゆう君といると、私はすごく自然体でいられるの。だからね、今日みたいな時間が、これからもずっと続いてくれたらいいなって思った。』
『ゆう君がウトウトしてるのを見て、昨日はきっとドキドキして寝られなかったんだろうなって思ったよ。そんなゆう君の寝顔を見てたら、なんだかすごく愛おしくなった。』
『私ね、これからもゆう君と一緒に、たくさんの思い出を作りたい。もっともっと、色んなところに行って、色んな景色を見て、一緒に成長していきたい。』
『ゆう君も、そう思ってくれたら嬉しいな。』
ゆうはメッセージを最後まで読み終え、スマホを胸の上に置いた。
そして、のぞみが今も自分を想ってくれていることを実感し、少しだけ寂しさが和らいだ気がした。
「僕も、そう思ってるよ。のぞみさん。」
ゆうは、スマホの画面に 「ありがとう、俺も同じ気持ちだよ。」 とゆっくりと打ち込む。
そして、「次はどこに行く?」 と続けて送信した。
夜の静寂の中で、二人の想いはまた繋がった――。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん:ああああ〜〜〜〜っ!もう、勘弁して!こっちまで溶けるわ!のぞみちゃんの運転で、ゆう君が横でうとうとして、最後に名残惜しそうに降りるとか!心臓がレンジでチンされとる気分やけん!
カナちゃん:ほんまや!またわしらをバブルスライムにする気か!?このベタベタ具合、耐えられへん!「LINEしてくれる?」やて?「もちろん」やて?もぉ〜〜!口角上がりすぎて顔筋痛いわ!
なっちゃん:しかもさ、「何回でも送っていい?」ってゆう君!のぞみちゃんが「ふふっ、どうぞ?」って返すとこ!あの瞬間、甘さで窒息死しそうになったけん!
カナちゃん:あれはもう、青春のホットチョコレートにマシュマロ10個浮かべたレベルやで!熱いし甘いし、飲み干したら喉詰まるくらいのやつや!
なっちゃん:ほんで夏美ちゃんよ!仁王立ちで「記者会見や〜!」って待ち構えとるんやもん!芸能リポーターごっこ最高すぎる!
カナちゃん:質問がまたえぐいねん。「あーんしました?」→「しました」→「出ました、“あーん”!」って、喜び方がワイドショーのスクープ芸やった!
なっちゃん:で、最大の爆弾。「……キスは?」やけん!のぞみちゃん、耳まで真っ赤で「そ、それは…」って。あの反応見て、私の心は完全にショートしたけん!
カナちゃん:あんなんなぁ、全国の恋人未満リスナーは膝から崩れ落ちとるで。だって「もし寝てなかったら?」とか妹に聞かれて動揺するお姉ちゃん、尊すぎるやろ!
なっちゃん:ほんで最後に「またデートしたいな…」って、クッションに顔埋めるのぞみちゃん。かぁぁぁっ!あんた何歳や!アイドル現役や!
カナちゃん:いや、そんでゆう君も負けてへんねん。ベッドで写真眺めながら「僕も大人になれたかな」とか言い出すやろ?のぞみちゃんとのツーショット見て照れてんの、もう完全に“成長期の恋愛モノ映画”のエンドロールや!
なっちゃん:で、極めつけ!のぞみちゃんから長文LINE!「自然体でいられるの」「成長していきたいの」って、公開ラブレターか!スクショして額に入れて飾れるレベルやけん!
カナちゃん:ほんまや。最後「次はどこに行く?」で締めやもん。はい、全国の恋愛未経験者は全員倒れましたー!
なっちゃん:ここでリスナーからのはがき紹介するけん!「ラジオネーム・失恋バウム」さん。『あーんしました?の攻防で泣きました。僕も誰かにあーんされたいです』やって!
カナちゃん:あーんってな、口に入るんは食べもんやけど、心に入るんは安心感やからな!うまいこと言うたやろ?
なっちゃん:次!「ラジオネーム・夜道のトナカイ」さん。『LINEで何回も送っていい?ってくだり、僕も昔言ったことあります。今思えば青春やった』
カナちゃん:うわぁ、共感祭りや!青春のLINEは、スタンプひとつで心臓バクバクやったん思い出すわ!
なっちゃん:Xからも来とるで!「#なつかな感想」『妹に記者会見されるのぞみちゃん、国宝級』って。
カナちゃん:ほんまやな!あんなんもう重要文化財や!文化庁動け!
なっちゃん:さらに!『のぞみちゃんのLINE文面、ラブレターの教科書に載せて!』って声も殺到しとるわ!
カナちゃん:教科書どころか、全国統一模試に出してええくらいや!
なっちゃん:まだまだあるよ!「ラジオネーム・布団の妖精」『ゆう君の「僕も大人になれたかな」に泣きました。布団の中で成長してたのは私の涙腺です』
カナちゃん:それはうまい!涙腺の成長痛や!
なっちゃん:最後に!「ラジオネーム・バブルスライム二号」さん。『もう甘すぎて、私も溶けました』
カナちゃん:あはは!同志やん!もうみんなで溶けよか!この番組、全員バブルスライム化計画や!
なっちゃん:よし決まり!「#全国バブルスライム化計画」タグ作ろや!
カナちゃん:ええやん!みんなでとろけていこうや!




