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詩 童話

ミーちゃん


俺は化け狸、もう200年近く生きている。


「ミーちゃん! どこー?」


『うるせぇなぁー』


「ミーちゃんたらー、どこにいるのー? グス、おかあさーん、ミーちゃんがいなくなっちゃったーグスグスグス、ミーちゃんどこー?」


『あー、はい、はい、分かりましたよ、此処にいますよ』


「あ、ミーちゃんいたー」


今、化け狸の癖にミーだと? と言った奴、後て見つけ出してブチのめすからな覚えとけ。


あ、因みに名前だが、ミーじゃないからなミーちゃんまでが名前だからな。


俺がミーちゃんと呼ばれるようになったったのは、昔、お嬢とあってしまったからだ。


化け狸って言っても普段は普通の狸に混じって暮らしている。


その日も普通の狸の姿で餌探しをしていた。


そこに小さな女の子とその母親が近寄って来たと思ったら、女の子が「あ、猫ちゃんだ」と言ったんだ。


それで近くに猫がいるのか? と思い立ち止まってキョロキョロと猫の姿を探していたら、女の子は俺に抱きついて「猫ちゃん」と言いやがった。


オイ、チョット待て、成狸の俺を捕まえて猫だと? まだ子狸を捕まえて猫と間違えるならともかく、成狸だぞ俺は。


女の子を連れていた母親も「違うわよ、それは狸よ」って言っているのに、女の子は頑なに「猫だ」と言い張る。


俺は呆れて女の子の呆れ顔の母親と顔を見合わせてしまったよ。


その女の子がお嬢。


俺はお嬢に抱かれてお嬢の家に連れ帰られてシャワーで丸洗いされ、ミーちゃんって名前をつけられたんだ。


此のボケぶりと頑なな性格は今でも変わって無い。


ミーちゃんと言われての暮らしは悪くは無かった。


黙っていても飯が出てくるし、毎日毛を梳いてもらえるし、偶にだが風呂にも入れてもらえるからな。


お嬢も高校生になった頃には俺が猫では無く狸だと気がついたみたいだが、同じ頃お袋さまには俺が化け狸だと気づかれた。


まぁそれは俺のミスなんだけど。


お嬢が高校生の時、好きな男の子にチョコレートを渡すんだと張り切って手作りチョコレートを作り始めたんだが、その余りにも不器用に作ったチョコレートを渡されたら絶対にフラれると思い、お嬢が寝たあと等身大の大きさになってお袋さまの割烹着を着て、チョコレートを作り直していたのをお袋さまに見られたんだ。


チョコレートを渡された男の子には、「ごめん、俺、好きな子がいるんだ」って言われてたけどな。


そのあとくらいから俺はお袋さまに、料理洗濯掃除を仕込まれる。


何故に? と思っていたら、お嬢が東京の大学に進学したいと言った時に氷解した。


お袋さまの答えは「ミーちゃんが一緒なら許可する」だったんだよ。


普通逆だろ。


お嬢は東京の大学に進学してそのまま東京の会社に就職する。


そのお嬢のご飯を作るのは当然俺の仕事だった。


こんな料理も掃除も洗濯もマトモに出来ない女の子が結婚出来るのか? と心配したけど、結婚できたよ。


今じゃ男の子と女の子2人の孫を持つお婆ちゃん。


だけど俺は今でもお嬢に引きずり回されている。


もっともお嬢では無く、孫の女の子の小さなお嬢にだけどな。


まったく化け狸とは言え俺ももう200歳近い爺さん狸なんだから、もうちょっと労って欲しいよ。







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― 新着の感想 ―
え(;゜Д゜) アライグマと間違えるならともかく(;゜Д゜) いやでも子供だしねぇ。 しょうがないかー。 それはともかく。 ミーちゃん、あんた良いお嫁さんになれるよ(ォィ
良妻賢母の鏡みたいなタヌキでした。 ミーちゃんが一緒なら、確かに安心ですね。 孫の孫世代まで、ずっと見守っていてほしいと思えるミーちゃんでした。
今のお嬢は、ミーちゃんのことをさすがに化け狸だってことがわかっているのでしょう。 二人がずっと健康で長生きできるといいですね。
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