epilogue IV - unchanging everyday-
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06/19/5006
今日は実に興味深いことを知った。
私の助手が〝PSI〟と〝魔導士〟二つの〝能力〟を持っていることが判明した。
あれには私の医術の全てを教えてあり、最早私以上かも知れない。
だが私は医学なんぞには興味がない。それはあくまで目的達成のために学んだに過ぎず、それを探究する気はないからだ。
あれには今後私のサポートの他にその二つの〝能力〟を磨くように伝えよう。
〝PSI〟はともかく〝魔導〟は良い『導師』を選ばなければならない。
よって私は古い友人――いや、知り合いであるイグドラシルに依頼した。
私の依頼ならば、あれは断らない筈。
仮に本人が無理でも良い『導師』を選出してくれるだろう。
そして名を〝ファウル・ウェザー〟とする――
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01/30/5009
面白い子供を拾った。
その子供は〝PSI〟と〝魔導士〟の〝能力〟を持っているようだ。
これには兄がいて、そっちはイグドラシルが拾ったらしい。
これが選ばれなかったのは幸運かも知れない――いや、奴は〝PSI〟を毛嫌いしているから必然なのだろう。
分析の結果、これの〝PSI〟は〝単象能力〟で、然も〝タイム・ウォーカー〟のようだ。
数多の〝PSI〟でそれが出現する確率は一億分の一。そして〝魔導〟は〝月〟。
これらが同時に発生する確率は……計算するのが莫迦らしくなるくらいに低い。
ゼロと言い切ってしまっても良いくらいだ。
どちらにしても、高位の二つを持っているこれを〝サイバー〟に出来れば、また目的に近付ける。
これの名を〝ディナ・シー〟とする――
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10/17/5009
どうしても巧くいかない……。
ディナ・シーの身体を『サイバー化』させたが、やはり脳と神経系がノーマルだと機械との拒絶反応が強い。
思い切って脳を弄ることも考えたが、それは絶対に出来ない。
脳を弄ってしまうと、両方の〝能力〟が完全に消えてしまう。
高位のそれらを失うのは大いなる損失だ。
なにか他に方法はないものだろうか……。
もう一度フィンヴァラを調べる必要がある――
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11/29/5009
シーリー・コートに面白い反応が出た。
ファウル・ウェザーの代わりにディナ・シーを診せた所、感情と思われる反応を示したのだ。
どうやらナノマシンの自己進化能力は、私が考えている以上らしい。
ディナ・シーもあれを気に入っているようだ。
あの二人がこのまま関係を深めていって子供でも作ったとしたら、それはそれで興味深い。
シーリー・コートに生殖能力を付けた甲斐があったというもの。
それに〝PSI〟はともかく〝魔導〟は完全に遺伝する〝能力〟だ。
ディナ・シーが失敗したら、それの子供が使えるかも知れない――
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12/08/5009
ディナ・シーの『サイバー化』がどうしても巧くいかない。
今あれの全身には想像を絶する激痛が走っているだろう。薬でそれを抑えるのも限界に近い。
だが面白いことに、痛みが抑えられているときにフィンヴァラが戦闘方法を教えているらしい。
なにを考えているかは知らないが、好きにすればいいだろう。私にとってそれは、どうでも良いことだ――
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12/14/5009
最も恐れていたことが起きた。
シーリー・コートのナノマシンが、肉体を拒絶する反応を示した。
暫くは問題ないだろうが、徐々にその反応が著明になってくるだろう。
ディナ・シーの問題も解決していない。
やはり脳、神経系と機械の一体化は無理なのだろうか。
長年私が培ってきたもの、〝完全なる人〟は所詮絵空事でしかないのだろうか――




