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婚約は解消されましたが勘違い令嬢に義兄の溺愛はなかなか届きません  作者: ミカン♬


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6 ユリウスと決別

カミールが来ていたとは思わなかったようだ、ユリウスは真っ青になった。


「使用人たちの雰囲気がおかしいからこんな事だと思ったんだ」

エマを抱きしめてカミールはユリウスを睨みつけた。


「ユリウスお前・・・今のはなんだ。エマ様に何てことを」

カミールの横にいたボーエン伯爵は息子以上に青くなっている。


「妹とご子息の婚約は解消されました。伯爵も聞きましたね。あとの事は父を交えて話し合いをお願いします」


伯爵の返事も待たずカミールは腕の中で震えているエマを横抱きに抱えると伯爵家を後にした。


馬車の中、ユリウスの言葉が何度も頭の中で反芻されて、エマは胸がキリキリと痛み今まで我慢していた分、一気に涙が溢れて止まらない。



カミールが俯いて泣き続けるエマの頭を撫でているとエマが顔を上げた。


「・・・っ・・お兄様は・・私の馬鹿な努力を笑っていたの・・ですか?」


「エマの努力を笑うわけ無いだろう」


「うぅ・・・無駄な努力だった・・うくっ・・・・」


「違う方法ならあの三男坊は可愛いエマを愛したかもしれない。でも浮気者はいつか浮気するものだ」


(愛されただろうか。一度も愛したことは無いと言われた)


「可愛くなんかないわ・・気持ち悪いって・・・」


カミールはエマの涙をハンカチで拭いながら言葉を続けた。


「エマ、ユリウスの言葉が全てじゃないんだよ。私はエマは誰よりも可愛いと思っている。彼の為にいろいろ努力してきたことも、私は健気だと思っていたよ」


「私はユーリに・・・・・分かって欲しかった。愛していたの」


「分かってたさ、分かってて彼はエマを傷つけた───潰すか」

「ふぇ?」

「あの二人、家ごと潰すか。私の可愛いエマを泣かせたんだからな」


「お兄様・・・あ・・」

エマはカミールの膝の上に横抱きにされているのを今更気づいた。


「いいです、潰さなくて・・・お、降ろして」


「着いたな。あんな男の為にもう泣かなくていい」

カミールは最後にハンカチでエマの鼻をつまんで膝から降ろした。



婚約解消の件を話すと父は天井を仰いだ。

「さて、ボーエン伯爵に連絡するか。慰謝料は免除してやるが支援金と前払いした支度金は返して頂こう」


「さ来年は婚姻式でしたからね。準備はまだだと思いますが、使い込んでいたら大変な事になりますね。ああ、エマは気にしなくていいよ」


相当額が伯爵家に払い込まれているようだ。

婚約破棄にはならなかった。ユリウスは部屋にレイラを招いていたが、父の調べでも二人はまだ友人関係のようだった。



     ***



婚約解消をした翌々日にボーエン伯爵はユリウスを連れて訪れ、エマと父はサロンで親子と対峙した。

カミールはどうしても外せない仕事があって登城した。


エマは連日泣き過ぎて酷い顔になっていたが、最後はきちんと決着をつけたいと思って父の横に座っていた。


「本人同士で納得して解消したようですな。こちらにサインを」

侯爵が書類を差し出した。


「破棄では無くて解消です。慰謝料なども発生しない。ただし契約通り支援金と婚姻の支度金は返してもらう。それでお互いの関係を綺麗に清算しよう。安心してサインを」


「支援金は分割払いでも構わないでしょうか」


「構わない。利息もいらない。今後は侯爵家とは一切関りが無くなることは了承してくれ」


ボーエン伯爵はペンを取って書類を見つめていたが、やがて震える手でサインを始めた。


「支援金の分割は了承したが、婚姻の支度金は速やかに返して頂こう。それ以上こちらからは何も望まないが、ユリウス君には二度と娘には近寄らないと誓約書を書いて貰おうか」


「そんなの、頼まれてもエマには近づきません!」


「なら書いても問題ないな。娘にも書かせるよ?君には関わらない、近づかないと」


エマがサインするとユリウスも渋々了承した。これでもう本当にお別れだとエマはぼんやりとユリウスがサインするのを見ていた。


ボーエン伯爵は何度も謝罪をして戻っていったが、ユリウスはエマとは一度も目を合わさず黙って去っていった。


「謝罪はナシか。仕方ない、エマにも反省すべき点は多々あるからな。お前は思い込みが強いと言うか、素直過ぎると言うか・・・いい加減に前髪は切りなさい。全く」


「お父様、次の私の婚約者はお父様が選んでください。私は人を見る目がないようです」

「お前の相手はお爺様に頼んでカミールのような人物を希望しておこう」


「真面目で誠実な方を希望したいです。私も次は真摯にお付き合い致します」



その日のうちにエマの鬱陶しい前髪は侍女達に綺麗に切り揃えられ。髪も手入れされて艶々になった。


「やっと本来の美しいお嬢様になってくれて嬉しく思いますわ」

年配の侍女長は丁寧にブラシでエマの髪を梳かしていた。


「私は彼の引き立て役になりたかったの。彼に輝いていて欲しかった。そんなの彼は望んでいなかったのに」


「前のお嬢様も十分可愛らしかったですよ。見る目の無い婚約者様でしたね」


「ありがとう、これで決別できた気がするわ」

そう言いながらまた涙を零すエマを見て、侍女たちはお嬢様をメチャクチャ綺麗にして元婚約者を後悔させようと誓ったのだった。


読んで頂いて有難うございました。

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