オークと女騎士ともやし
「おいオーク! 何か食わせろ!」
「女騎士側から要求するのかよ、お約束はどうした」
「私がするべき約束は、毎日たらふくご飯を食べるって事だけだっ! 私は! 今! お腹が減っている! 早く! 何か! 食わせろっ!」
「はいはい」
参ったとばかりにため息をついて、オークは冷蔵庫を開いて食料の残りを確認した。
「あれ、もやしくらいしか残ってないや」
「何ぃ!」
「調味料はあるから味付けはできるし、ご飯は炊けてるけど……参ったな」
オークは今一度庫内を隅々まで見渡して見るが、おかずになりそうなものもやし2袋くらいだった。
「お終いダァ! 終わりなんダァ!」
女騎士は本当にこの世の終わりかのように倒れ込んで「お父ちゃんお母ちゃん、今までありがとう。あたい頑張ったよねっ! あたい立派だったよねっ!」などとノリノリで絶望している。
「いや待て、もやしを侮ったらいかんぞ」
オークは冷蔵庫から2袋取り出すと1つを平皿に移してラップをかけ、電子レンジに入れた。そして3分ほど温めのボタンを押す。それが済むとすかさずガスコンロの火をつけて、フライパンを熱し始める。
「一つはおつまみ風の和え物に、もう一つあんかけにするぞ」
そう言うとオークは、十分に温まったフライパンにもやしを投入し、さらに中華調味料やみりん醤油などを入れて味付けを施す。と同時に、チーンと電子レンジが温めを終えた音が鳴ったので、平皿を取り出しラップを取り外した。
「ここに塩昆布をパラパラかけて、ごま油をかけて、と。」
完成した和え物と茶碗によそったご飯をダイニングテーブルの上に置いておくと、床に倒れ込んでいた女騎士はクンクンと匂いを嗅ぎ始め、やがて飛び上がるようにイスに座りご飯をかき込み始めた。
「匂いだけでも美味えええええ!!!!」
女騎士は空腹も相まってか獣のように飯に食らいついていた。オークはキッチンに戻り、水溶き片栗粉をフライパンに回しかけながらその様を見て
「こりゃ今日も俺の分のご飯は無くなりそうだな」と呆れながら、でも満更じゃ無さそうな顔でやれやれと首を振るのであった。