その4
「ふっふっふ捕まえたぞ女騎士」
オークは不敵な笑みを浮かべて捕縛された女騎士に目を向ける。
「くっ! 殺せ!」
女騎士も負けじと反抗的な目でオークを睨み返した。
「バカめ、簡単に楽になれると思うなよ! 地獄の拷問を……」
そこまで言うと、おもむろにオークと女騎士のいる一室の扉が開いた。
「失礼します……」小声でそういうと、恐縮してペコペコ頭を下げる引率の先生と、3名ほどの学生が後ろについて部屋に入ってきた。
オークはうろたえた。(しまった、今日は社会科見学の日だった! しかも、女騎士にその事を伝えていない!)ちらりと女騎士の方見ると、彼女は見るからに困惑していた。
(くっ! しかし、ここでまごついてもかえって不審がられる! すまん女騎士! 何とか乗り越えてくれ!)オークは事前の打ち合わせ通りにこう言った。
「地獄の拷問で苦しませてくれるわ!」
改めて女騎士の方に向き直し、いかにも憎々しげな声を出す。(これで、これで何とか……!)
しかしオークの願いも虚しく、女騎士は来客に見られている恥ずかしさで、顔を真っ赤にして固まってしまっていた。
「女騎士さん! 頑張れ!」
こちらの様子を見かねたのか、学生の一人が女騎士に向かって応援の声を投げかけた。
「女騎士さんならできる! オークさんに屈しないで!」
「そうだよ! 僕たちの女騎士はオークなんかには屈しない!」
「くーっころ! くーっころ! くーっころ! くーっころ!」
いつの間にか謎のコールまで沸き始めた。
(コールがその文言なのは色々おかしいだろ……)オークは心の中で思わず突っ込んだが、何とか口に出すのは我慢した。
その後、女騎士は無事オークに屈し、生徒たちも「いやぁ、やっぱ本場は違うなあ」「私も早く女騎士になって、くっころしてみたいなあ」「このチームは屈するまでの拷問の方法が渋くていいんよなあ」などなど満足したようだった。
ちなみに女騎士は、今日の拷問ーー逆に今更のアツアツおでんーーによって口の中をやけどし、今日の夕飯を楽しく食べられない事によるショックで命を落としてしまうのであった。