その2
「ふっふっふ捕まえたぞ女騎士」
オークは不敵な笑みを浮かべて捕縛された女騎士に目を向ける。
「くっ! 殺せ!」
女騎士も負けじと反抗的な目でオークを睨み返した。
「バカめ、簡単に楽になれると思うなよ! 地獄の拷問を味わうがいい!」
「これを見ろ!」
オークは円卓の上に掛かっていた幕を勢い良く取り外して、置かれていたスマートフォンを女騎士に見せた。
「なっ! 私のスマートフォンがどうしてここに!?」
「拷問部屋で自身のスマートフォンが目の前にある、この意味が分かるか?」
そう言うとオークはニヤニヤ卑劣な笑みを浮かべながら、あらかじめ入手していた暗証番号を入力した。
「これで貴様の最近見たインターネットサイトやSNSでの書き込みを確認してやる!」
「やっ! ヤメロォ!!」
女騎士は悲痛な声を上げる。
「ワハハハ! 苦しいか!? 決して辞めはしないぞ!」
オークは女騎士のスマートフォンを操り、履歴から過去にアクセスしたサイトを順に見ていく。
「むむっ、やたら同じサイトを見ているな!? ええっとなになに……」
“【腐女騎士カプ厨】団ルイ雑談3078【リバは56す】”
「こっわ……」
オークは非常に嫌な予感がして、流石に別の履歴を探した。短文をつぶやく「ホザイター」の履歴が並んでいたので、そちらを覗き込んだ。
“あぁ^〜! 会社のトイレで読む新刊が堪りませんですわ^〜”
“ちぃ! だからリバは駄目だと何度言ったら分かるんだ! ったくまたアンチスレで叩かねえとイケねえなあ(暗黒微笑)”
「えぇ……」
オークは困惑を隠せず、女騎士の方を見た。
「だ、だから言っただろうが! ……も、もう良いもん! 好きなだけ見ろ! 下劣な種族であるオークに何を見られようとこちらは屈する事などないわ! ワッハッハ!」
女騎士は開き直って高笑いをしている。
「ちなみに今読み上げた内容はご両親にも送ってあるぞ」
「ワッハッ……えっ?」
女騎士は文字通り目が点になってこちらを見ていた。
「ちなみに同僚全員にも」
「学生時代の友人知人全員にも」
「卒業した高等騎士学校の生徒さんにも……あっあれ? 女騎士?」
あまりにも外道な仕打ちに、女騎士は真っ白な灰になって、やがて砕け散っていったのだった。