オークと女騎士の日々
オークが仕事を終え、自宅玄関の扉を開くと上り框に立つ女騎士が目に飛び込んできた。
「おいオーク! これは何だ!」
「……?」
片方の手を腰に当て、もう片方の手には何やら飲料の入っていたと思われる器を持って、女騎士はつっけんどんにそう詰問してくる。
「それは……ああ、多分ヤコルト1000じゃないか? 飲むと睡眠の質が良くなるとか」
「つまりこれを飲むと睡眠の質が良くなったり……睡眠の質が良くなったりするって事か?」
「突然の進次郎構文やめて。まあでもそうだね」
「ありがとう! 飲みたかったんだ」
「いやあの、自分用に買ったんだけど」
「ぷはー! 美味しい!」
「いやあの、なん店舗か巡って苦労して買ったんだけど」
最近寝つきが悪かったから買った物で、丁度今日の帰りの道中も「効き目あるのかなあ(わくわく)」といった調子で帰って来たのでオークは心の中でひっそりと泣いていた。
「なあオークよ、私はこれでぐっすり眠れるかなあ」
「まず寝る前にデイリー消化したり、ショート動画を観たりするのをやめてだな……」
「眠くなってきたあ! お休みオーク!」
そういうと女騎士はそのままオークが立つ玄関側に倒れ込んできた。慌ててオークが女騎士の身体を抱きとめると、「グガガガ……」といかにもないびきをかいて彼女は眠ってしまっていた。
「……お休み女騎士」
オークはぐっすりと眠る女騎士を抱きかかえながら器用に靴を脱ぎ、寝室のベッドに横たわらせて掛け布団をかけてあげるのだった。