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1-7:「序盤」

 ――それから各々はそれぞれの行動に移行した。

 穂播と直宇都は新型73式小型トラックに乗って、広場より後方へと下がって行った。鐘霧や朱真は、今しがた到着した隊員等と合流再編成し、神殿の大階段を駆け上がって行く。

 そんな中、制刻、鳳藤、河義、策頼等、54普連の面子。そして敢日とGONGは、一度広場の一角で集合した。


「――さて、どうするか。俺達はどうにも、良くも悪くもお客さん扱いって感じだな」


 集合した所で、河義が一番にそんな言葉を発する。


「んなら、好き勝手動かせてもらいましょう。ドンパチの所を、冷やかしに行くのもいいでしょう」


 その河義の言葉を受けて、制刻はそんな進言の言葉を発した。


「冷やかしって、お前……」


 そんな制刻の発言に、鳳藤は呆れた声を上げる。


「いや。だが俺達の側でも、もう少し町の状況を掌握しておくべきかもな」


 しかし河義の方は制刻の言葉から、自分達での状況掌握の必要性を鑑み、発した。


「んじゃ、俺等で見てきます。河義三曹は策頼と一緒に、ヘリのお守りを」


 それを受け、制刻は自身が観察行動に出る旨を発する。そして続け、河義等にヘリコプターの防護を要請。


「剱、行くぞ」


 そして河義の返事も待たずに身を翻し、鳳藤に追従を促しながら、神殿の大階段に向かって歩き出した。


「はぁ、そんな予感はしてた……」


 有無をいわさず、制刻に付き合わされる事になった鳳藤は、ため息混じりに吐き出しながら、制刻の身を追う。


「よし。行くぞGONG」


 そして敢日とGONGは、当たり前と言うようにそれに続いた。




 制刻等3名と1機は、神殿の大階段駆け上がり、大きく仰々しい作りの神殿正面入り口を潜り抜け、神殿内部へと踏み入る。

 内部は広く天井の高い作りになっている。そして内部には、先んじて踏み入った鐘霧率いる一班が展開しており、すでに彼等の手によりクリアリングは終えられていた。


「見ろ。彼等皆、装備が最新だぞ」


 そんな班の隊員等の姿を見止め、鳳藤が一番に発する。

 その言葉通り、鐘霧率いる班の隊員は皆、新型の小銃である〝17式5.56mm小銃〟。もしくは〝17式7.62mm小銃〟を装備。分隊支援火器射手は、MINIMI Mk.3を装備している。

 そして他各種装具も、新しい形式の物が多く見受けられた。


「流石の期待の新設連隊だな」

「あぁ」


 感嘆の声を零す剱。しかし一方の制刻は、対して興味無さげに生返事を返す。


「そう言えば自由。お前も一時期、77普連に居たんだろう?」


 そんな制刻に、今度は敢日が尋ねる言葉を紡ぐ。

制刻は、元の世界で二年前に起きた、ロシアクーデター軍による南樺太侵攻――〝樺太県侵犯事件〟の際、〝部隊間相互教育プログラム〟という施策により、第77普通科連隊に出向していた経歴があった。


「そん時、色々あって穂播さんと拗れたんだろ?」

「何があったんだ……?」


 続け敢日は、制刻と穂播との関係性について言及。鳳藤は、困惑と呆れの混じる声で、尋ねる言葉を紡ぐ。


「色々だ」


 しかし制刻はそれだけ言い、またしても詳細を話そうとはしなかった。


「貴様ら」


 そんな所へ、端から声が掛けられ飛んで来た。各々が視線を向ければ、そこに歩んで来た鐘霧の立つ姿があった。


「我々に同行するつもりか?」

「えぇ。ちと、冷やかしに」


 そして寄越された尋ねる言葉。それに対して、制刻は不躾な、そしてふざけた様子でそんな言葉を返す。


「状況掌握のためです……ッ」


 そこへ鳳藤が、少し慌てて訂正補足の言葉を差し込む。


「噂通りの問題隊員だな――まぁいい。一緒に来る以上は、協力してもらうぞ」


 鐘霧はそんな制刻の態度を前に、少し厳しい顔色で発した後に、そう忠告し命じる言葉を発する。


「いいでしょう」


 それに、またも不躾に言葉を返す制刻。

 対して鐘霧は最早言葉を返さず、身を翻して制刻から離れた。


「4班、行くぞ」


 鐘霧は、神殿内部で警戒態勢を取っていた、班の隊員各員に発し命じる。各員はそれに応じて警戒態勢を解き、先行する鐘霧に続く。


「んじゃ、俺等も行くか」


 そして制刻等も、あまり緊張感の感じられない様子で、それに続いた。




 鐘霧率いる班――改め4班。そして制刻等は、神殿内部を突っ切って抜け、神殿の反対側へと出る。

 出た先では、神殿の土台部より降りるための通用階段が設けられていた。表の荘厳な作りの大階段とは違い、実用性主眼のシンプルな階段であった。そして神殿より先には、町並みが広がっていた。


「階段を降りるんだ」


 鐘霧の促しを受け、列を成して階段を下ってゆく4班。そして制刻等もそれに続く。

 階段を降り切った先は町路と繋がっており、その町路は神殿より緩やかなカーブを描いて離れ、町並みを割って伸びている。

 その町並みを割って伸びる町路の先に、複数の緑色の大きな影――オークの群れが姿を現したのは、その時であった。


「来やがったぜぇ!」


 各員はすぐさまその存在を確認。そして代表するように、朱真が声を張り上げた。


「展開しろッ」


 ほぼ同時に、鐘霧が指示の声を発し上げる。そして4班各員は飛ぶように散会、町路周辺の家屋や遮蔽物に飛び込みカバー。そして一泊置いた後に、各所各員より射撃行動が開始された。

 町路の先より現れたオークは、10体程。内の先陣を切る二体程が、得物の斧をひっさげながら、吶喊を試みようとしたが、その二体はあえなく小銃射撃の餌食となり、地面に崩れた。


「近づけさせるな。ヤツ等の肉薄は脅威だ」


 鐘霧が、展開した班員に警告の声を発し上げる。

 しかし反して、オーク達はそこから続き吶喊を仕掛ける姿は見せなかった。オーク達は町路の向こうで、身を隠す様子を見せる。そして直後、こちら側へ複数の矢が飛来、襲い来た。


「ッ――気を付けろ。花庭(はなにわ)一士、制圧射撃だッ」


 襲い来たそれを受け、鐘霧は警告の声を。続けて分隊支援火器射手の隊員に、軽機による制圧射撃を命ずる。

 それに呼応し、射手の構えたMINIMI MK.3が発砲を開始、弾幕を町路上に形成する。

 さらに4班各員も、矢撃の隙を見ての射撃を再開。町路上を、銃火と矢撃、双方の激しい攻撃が飛び交いだした。


「モンスターズ。うまくカバーしながら戦いやがるな」


 一方。鐘霧等同様に周辺遮蔽物にカバーした制刻等は、上がり出した激しい射撃音を聞きながらも、先のオーク達の動きを観察。そして制刻がそんな言葉を零す。


「あぁ、こっちの戦闘形態を学んで、合わせて来てるみたいだ。見た目の割に、なかなかどうして柔軟で、戦術に長けてる」


 制刻の言葉に、近くでカバーしている敢日が返す。

 オーク達は隊の戦闘形態に対して、見おう見まねな様子ながらも、学び適応していた。敢日はそんなオーク達を評する言葉を紡ぐ。


「頭の回るモンスターか。厄介だな」


 そして制刻は、そんな敵の存在に、淡々と呟いた。

 その間にも戦闘状況は動き、4班側からの火線弾幕により、オーク達の内の2~3体程が無力化。残るオーク達は身を晒すことを極力避け、クロスボウだけを遮蔽物より突き出し、狙わずの闇雲な矢撃を放ってきている。しかし精度こそ欠けるものの、これ等の矢撃もまた前進押し上げの障害となる、厄介なものであった。


「面倒だな、時間を食われる――陸士長」


 制刻の元へ、鐘霧から呼ぶ声が掛けられる。


「役に立ってもらうぞ。迂回して、ヤツ等の側面背後を突けないか試してみろ」


 そして鐘霧からは、そんな命じる言葉が寄越された。


「〝樺太事件の特異点〟が、どれ程のものか見せてもらう」


 続き、そんな言葉を寄越す鐘霧。それは少しの皮肉と、試すような色の含まれた言葉であった。


「まぁ、いいでしょう」


 しかしその言葉に、制刻は不躾に端的に了承する。


「解放、GONGを借りる」

「あぁ」

「GONG。裏庭を突っ切っていくぞ」


 そして制刻は敢日に断ると、GONGに向けてそう発した。

 現在戦闘の舞台となっている町路に沿って、建ち並んでいる家屋群。その家屋群の裏手には、各家屋の裏庭敷地が隣接し連なり、家屋群を隔てて町路と平行に走っている。この連なる裏庭を突っ切っていけば、オーク達の側面に辿り着き、そこを突けるはずであった。

 制刻は遮蔽物としていた荷車を離れ出、先に見える家屋裏手の裏庭へ、設けられていた柵を越えて踏み込んだ。

 さらに続いたGONGが柵を壊し、裏庭へと踏み込む。


「GONG。そのまま生垣もだ」


 そんなGONGに指示する制刻。

 それを受けたGONGは、電子音を鳴らし返事をしたかと思うと、次の瞬間に重鈍そうな動きで駆けだし、その先にあった高い生垣へ吶喊。生垣の一角をなぎ倒し、強引に開口部を作った。


「その調子だ」


 GONGはそのまま各家屋の裏庭敷地を隔てる生垣や柵を、その巨体で押し倒し崩壊させ、進路を切り開いていく。

 そして幾つめかの柵を踏み倒し、その先に踏み込んだ時であった。


「うおぁ!?」

「な、なんだッ!?」


 そこで、二体のオークと鉢合わせた。

 オーク達は、突如として現れた異質な物体であるGONGに、驚愕と動揺の様子を見せる。


「――ごぅッ!?」

「ぁッ!?」


 しかし直後に、オーク達は立て続けにもんどり打った。そして鈍い悲鳴を上げながら、膝を着き崩れ落ち、オーク達は亡骸となり地面に横たわる。

 一方を見れば、GONGの横に小銃を構えた制刻の姿があった。制刻はGONGに続いてこの場に踏み込み、すかさずオーク達に対してヘッドショットを決め、無力化したのであった。


「――考える事ぁ、同じか」


 制刻は警戒の意識を引き続き周囲に向けつつも、オーク達の亡骸を見下ろしながら呟く。おそらくこのオーク達も、裏庭を抜けてこちらの側面背後を取ろうとしていたのであろう。

 そんな推察をしつつも、制刻とGONGはそこから横に建つ家屋へと、裏口扉を潜り、そして壊して踏み込む。

 家屋内を抜けてゆき、町路に面する一室へと抜け、制刻はその窓際で一度カバー。その窓から外を覗けば、そこには見事に、4班と対峙中であるオーク達の無防備な側面や背中が見えた。


「よぉし――」


 静かに一言呟く制刻。制刻は窓より小銃の銃身を突き出し、引き金に力を込める。

 ――そして無慈悲な射撃が、オーク達を横薙ぎにし、あるいは背中を襲った。


「な、なんだ――ぐぁッ!?」

「後ろだ――ぎぇぁッ!?」


 背後側面を取られての強襲。襲い来た銃弾に、オーク達は次々に横殴りにされ、あるいは背を食われ崩れ落ちる。

 弾倉中の弾をばら撒き切り、小銃は程なくして弾切れを起こす。

 しかしその時にはすでに、まだ残るオーク達も態勢を大きく崩し、遮蔽物より身を晒していた。そしてそんな所を、町路の向こうより来る4班の攻撃に、ことごとく撃ち抜かれて、亡骸へと加わって行った。


「――ラインガン4、クリアだ。正面に出るから撃つな」


 程なくして、町路上に動くオークの姿は無くなった。制刻が4班へ再び要請を送り、4班からの射撃が停止。町路上は静けさを取り戻す。

 それを確認した後に、制刻は警戒しながらも窓を乗り越え、町路上へと出る。

 その先に広がっていたのは、そこかしこに崩れ散らばった、いくつものオーク達の死体であった。


「モンスター相手とは言え、気分のいいモンじゃないな」


 一帯を見渡していた制刻の所へ、背後から声が聞こえた。見れば、先の家屋の玄関口より踏み出て来る、敢日と鳳藤の姿がそこにあった。制刻とGONG同様に、裏庭を抜けて追いついてきたのだろう。


「まぁな」


 敢日の言葉に、制刻は淡々と返す。

 さらに程なくしてその場に、4班の隊員らが、前進し合流して来た。隊員等は先までオーク達が陣取っていた一帯へ展開し、警戒姿勢を取る。


「まだいるかもしれん、注意しろ」


 そして最後に鐘霧が到着し、指示の声を発し上げた。


「二尉。とりあえずは、こんなモンです」


 制刻は、その追いついてきた鐘霧に対して、そんな軽口混じり報告を発して向けた。


「よくやったが、まだ序の口だ」


 それに対して鐘霧は、ストイックな口調でそんな評価の言葉を返して来た。


「イシムラ、こちらラインガン4。攻勢箇所より流出して来た敵は、迎撃した。これより押し上げ、攻勢箇所での戦闘に合流する」


 そして鐘霧は、指揮官用無線機を用いて報告の通信を上げる。報告相手は、戦闘団本部で戦闘状況、情報を統括している直宇都だ。


《了解ラインガン4。攻勢突出地点では現在ラインガン5及び6-1が交戦中。しかし包囲体制は十分ではありません。急ぎ合流願います》


 報告に対して直宇都の声で、了解の旨と要請の言葉が返って来た。


「了解、終ワリ――聞いたな?行くぞ」


 鐘霧は要請を了承して通信を終えると、前進再開の声を上げた。

 鐘霧の声に応じ、4班は隊伍を組み直して町路上を前進を開始。制刻等も、それに続いた。

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