1-10:「大規模衝突」
この綿包の町の北側に建造され、走る城壁。
その内側の一か所の設けられた、城壁上に上る階段を、制刻等は駆け上がっていた。
先には鐘霧率いる4中隊4班。それに先程の字生の所属する第7中隊からの偵察隊隊員等が駆け上る姿があり、制刻等3名と1機はその最後尾に着いて上っている。
程なくして階段を登り切り、城壁上の通路に出る。そして広がったのは、これまで同様、本来の主である町の騎士隊に変わって、城壁上を占め配置した、77戦闘団第3中隊の隊員等の姿であった。
さらに城壁上には重火器群――12.7mm重機関銃M2や、96式40㎜自動てき弾銃。87式対戦車誘導弾等が、三脚に据えられ一定の間隔で設置されている。
石造りの古風な城壁を、ミスマッチな迷彩服の隊員等と火器が占める様子はなかなかに異質であった。
そんな配置にした第3中隊の隊員等に混じり加わるように、鐘霧等4中隊4班や、字生等7中隊偵察隊の隊員等も散って駆け、城壁上で配置に着いてゆく。
「私達はどうする?」
「あの辺が空いてる」
他隊の様子を追いかけながら、鳳藤は制刻に尋ねる。対する制刻は、城壁上の一角に空いたスペースを見つけ、そこを顎でしゃくり促した。
制刻等はその空スペースを自分等の場と定め、無遠慮に踏み入り、配置陣取る。
「さて――」
構える場所を定めた制刻は、それからそんな言葉を零し、城壁上よりその外側向こうへ視線を送る。
町の城壁の向こうに広がるのは、平坦な草原。しかしその草原は、あるラインを境に望む事が出来なくなった。
そこから先は、横隊隊伍を組み町に向かって進む者達――無数のオーク、ゴブリン、トロルから成る、モンスターの軍勢によって埋め尽くされていたから。
「また、団体さんだな」
先の平原を埋め尽くす、ある種絶望的なまでの光景を前に、しかし制刻はシレっと一言発する。
「あれは……?」
一方の鳳藤は、先に広がるそんな光景に臆し気圧された様子を見せながらも、あるものを見止めて疑問の声を上げる。
鳳藤が見止めたのは、モンスターの軍勢の中に一定間隔で混じり見える、巨大な生き物だ。鼻の短いマンモス、いや巨大なイノシシか。そんなような生き物。
「あぁ。あのデカいマンモスモドキか?あれは、ライマクとかいう生き物らしい」
鳳藤の疑問の声には、敢日が回答を返した。その敢日はというと、言葉を口にしながらも、GONGが背に運んでいた何か仰々しい物体を降ろしている。
それまで敢日が使用していたネイルガンとはまた外観の異なる、長い銃状の物体。それはエアライフルであった。長距離攻撃用の、スナイパーライフルに値する物であり、これもまた敢日お手製の物であった。
「俺がスポッターをやる。オメェ等は、狙撃に専念しろ」
そんなエアライフルを手にした敢日を一瞥しながら、制刻は二人に、簡潔に支持の言葉を発する。
「……あんな大群が、また……」
そんな制刻等の耳が、傍から何か震えた声を聞いたのはその時であった。
視線を向ければ、そこには甲冑に身を包んだ一人の女の姿があった。
城壁上にはその女以外にも同様に、隊員に混じり甲冑を着込んだ者の姿がチラホラと見える。彼等彼女等は皆、この町に駐留する騎士隊の生き残りであった。
そして彼等彼女等の顔は、いずれも絶望のそれの色に染まっていた。
「副隊長……!大丈夫なのですか!?彼等は本当に、あれ等のおかしな道具で、あの魔物の軍勢と戦えるのですか!?」
そして今の女騎士が、背後に居た別の騎士に、訴えるように発し上げる。相手は、先のルーレイと言う名の騎士であった。
「……あ、あぁ……彼等は、何か不思議な力を持っているようだ……」
訴えて来た女騎士に対して、ルーレイは言葉を返す。しかし彼の言葉もまた、どこか震えた物であった。ルーレイはここまでで隊の火力をいくらか目の当たりにし、隊の力を少しは理解し始めていた。しかしそれは限定的な物であり、迫り来る魔物達の圧倒的な暴力を前に、その恐怖を払拭するまでには至らないでいた。
「大丈夫です、ルーレイさん」
そんなルーレイ達に、背後より声が掛かる。ルーレイ達が振り向けば、そこに羽双の姿があった。
「私達の力で、あの敵を撃退し、この町を守りましょう」
続け、透る声でそう言って見せた羽双。しかしルーレイ達の表情は、未だ不安と懐疑の浮かんだ物であった。
「敵、投射ーーッ!」
配置した隊員の中から、そんな張り上げられた声が聞こえたのはその時であった。
そしてその直後、城壁周りに何かが飛来。城壁各所に何かが落下直撃し、鈍い音が上がると同時に、各所が崩壊した。
「ッ――報告を!」
「攻撃ですッ。投石器を用いた投石ですッ」
羽双は少し顔を顰め、そして方向を求める声を上げる。それに対して、近場に居た第3中隊所属の小隊指揮官の二等陸尉から、報告の声が上がる。言葉通り、今しがた襲い来たのは、モンスターの軍勢からの投石攻撃であった。加えて言えば、それは巨大生物ライマクの背に乗せられた、小型投石器からの物であった。
「被害は?」
「無しッ」
続け小隊指揮官より上がる報告。幸い、今の投石攻撃で、隊側に被害は出ていなかった。
「ビビるなよ!これは挨拶だ!」
小隊指揮官は、配置している各隊員に、声を張り上げ言い聞かせている。
「敵、先鋒。500mを切りました」
観測手の隊員から、声が上がる。
言葉通り、モンスターの大群の内の最前列の横隊は、平原を飲み、すぐそこまで迫っていた。そしてモンスターの軍勢からはすでに散発的な攻撃が始まり、矢が飛び来て、城壁を叩き、頭上を飛び越えてゆく。
「まだだ、引き付けろ。連中はタフで、やたら硬いッ」
そんな中、小隊指揮官の二等陸尉は、各員を堪えさせる声を発する。
「ハネフタ殿……!」
一方、ルーレイは目と鼻のまで迫ったモンスターを前に、羽双に懇願にも似た声を向ける。
「大丈夫です――」
しかし羽双はそれに一言だけ返し、迫る軍勢を睨み続ける。そして装着したインターカムを、口元に寄せる。
「――リッグ、砲撃開始」
そしてモンスターの軍勢の最前列が、あるラインを越えた所で、インカムに向けて静かに発し告げた。
直後。城壁の背後、内側の町の方より、トン、トン――という何か独特な音声が、連続的に聞こえ来た。
そして続け城壁頭上に響き始めたのは、ヒュゥゥ――という風を切るようなまた独特な音。
「こ、この音は――」
先の女騎士が、異質なその音に戸惑いの声を上げかける。
――しかし瞬間、その声を遮り掻き消すように、無数の爆音が盛大に鳴り上がった。
「ひッ!?」
「うっ!?」
ルーレイや女騎士は、突然のそれに思わず悲鳴に近い声を零す。
「今のは――」
そして困惑と共に視線を起こした彼等は、しかしそれを上回る驚愕の光景を目にする事となった。
「――な」
「――え」
城壁の先、平原の上。押し迫っていたモンスターの軍勢の最前列。
そこで無数の爆発が上がり、何体ものオーク、ゴブリン、トロル達が舞い上がり、千切れ飛ぶ光景があったからだ。
――それは、城壁の後方。町の内部に配置展開した、第3中隊、迫撃砲小隊の81㎜迫撃砲L16からの砲撃が成した物であった。
突然の驚異的事態に、当事者のモンスター達はもちろん、城壁上の騎士達も驚愕する。
「――攻撃開始ッ!」
「――各員、各個判断で撃てェッ!」
そんな騎士達をよそに、第3中隊小隊指揮官の二等陸尉の。各班班長の陸曹の。他、各部隊長の支持の怒声が、一斉に上がる。
そして、据え置かれた重火器から、各隊員の装備する小銃まで、城壁上で構え備えていた各火器が、一斉に火を噴いた。
12.7㎜重機関銃M2からの12.7㎜弾による掃射が。
各隊員の装備する17式5.56mm小銃、ないし17 式7.62mm小銃からの射撃が。
MINIMI MK.3からの射撃が。
苛烈な死の雨を作り出し、モンスター達の頭上へと襲い掛かった。
瞬く間に、横隊を形作っていたオークやゴブリン達を、穴だらけにしてゆく銃撃の雨。
さらに、96式40㎜てき弾銃から撃ち出された40㎜てき弾が、モンスター達の元に飛び込み炸裂。面白いように、モンスター達の身を千切り吹き飛ばす。
極め付けに、87式対戦車誘導弾の発射機より撃ち出された誘導弾が、モンスターの横隊を援護するように付き添っていた、巨大生物ライマクの巨体に命中。炸裂爆発した誘導弾は、ライマクの頭部から胴にかけてを抉り、クレーターのような大穴を開ける。そして誘導弾の直撃を受けたライマクは、悲鳴を上げる事すらなくその巨体をぐらりと崩し、盛大な音と土煙を立てて地面に倒れ沈んだ。その際に、足元に居たオークやゴブリン達を巻き込んで。
向かう所敵無しといった様相であったモンスターの軍勢隊列は、しかし圧倒的な強化力を前に、物の十数秒で瓦解。モンスター達は、大混乱に陥った。
「嘘……」
「ここまでの、力を……?」
それまでの絶望的な光景が、僅かな時間で一転した事に、ルーレイ始め騎士達は呆気に取られていた。
「ッ、案の定硬いなぁ!」
しかしその一方、モンスター達を相手取る隊員等は、瓦解してゆくモンスター達を前にうかれる事は無く、むしろあまり喜ばしくなさそうな様子を浮かべていた。
その理由は、モンスター達――得にオークやトロルといった種の、強靭さにあった。
隊の攻撃により統制を失ったモンスター達は、各々の判断で動き始めている。それは果敢に突撃して来る者もあれば、逃走を始める物もいた。
そのいずれにも共通して見られるのは、苛烈で強力な火器攻撃を受けながらも、なお行動が可能な様子であるという事だ。
特に5.56㎜クラスの火器では、オークやトロルに対して2~3発程度撃ち込んだ所では、その行動を押し留めるには至らず、モンスター達は押し攻めて来た。
そして散発的ではあるが、投石や矢撃も町に向けて引き続き注がれている。
さらにモンスターの軍勢はその一派に留まらず、続く第2派がその向こうより迫っていた。
「左っ側だ、左っ側!てき弾、左の塊を吹っ飛ばせッ!」
《重機班のコンタクトビーム1-1だ!銃身交換に入る、どこか援護頼むッ!》
「中MAT、コンタクトビーム3-2!突っ込んで来るデカブツに食らわせろッ!」
《パルスライフル2-2より――》
肉声で、そして無線上に。各隊各班、各所からの声が、怒号が上がっている。
そして城壁上では、耳がおかしくなりそうな程の、各火器の射撃音が響き交錯していた。
「なんか適当なターゲットはあるか?」
そんな、各所各隊が修羅場といった状況となっている一方傍ら。
一か所に配置していた制刻等は、周辺の状況にも関わらず、あくまでマイペースな様子で行動していた。敢日が、エアライフルを構え、その上に装着されたスコープを覗き眼下を見渡しながら、隣に居る制刻にそんな尋ねる言葉を掛ける。
「おい……!あまり悠長にしている場合じゃないだろう……!」
続け、制刻を挟んで反対隣りに居た鳳藤からは、少し焦った声色で声が上がる。彼女は装備火器である93式5.56mm小銃を構え、照準器の向こうと隣の制刻を、ひっきりなしに見比べている。
「焦るな」
そんな両名の真ん中で、制刻は双眼鏡を構えて覗き、先の光景を睨んでいる。制刻は、狙撃を担当する敢日と鳳藤の、スポッターを務めていた。
「――左っ側、マンモスモドキの上。操ってるらしい緑のモンスター――解放、やれ」
そんな制刻は視線の先に、こちらに迫るライマクに跨る、オークの姿を見止める。そしてそれを標的として定め、敢日にそれを狙撃する支持を発した。
「オーケー」
それを受けた敢日はエアライフルを構え、そのスコープ内、指定されたオークを覗き収め、スコープ内に描かれたクロスと、オークの頭部を重ねる。
そして、引き金を引いた。
エアライフルは、通常の銃火器と異なる空気の音を、発砲音として響かせ、その銃口より専用の弾頭を撃ち出した。
そして弾頭は、迫るライマクの上に跨るオークの頭部に到達し、見事に貫通。オークはスコープの先で、頭部より血を吹き出し、そしてライマクの背より転落。操り手を失ったライマクは、その場で暴走を始め、足元のモンスター達を襲い出した。
「仕留めた」
敢日は成果を口に出して報告しながら、エアライフルを一度引き、ポンプを操作し空気の再注入を始める。
「剱。今のマンモスモドキから左後方、50m。第2派の列中、指揮官らしいヤツがいる」
敢日の報告を聞きながらも、制刻は続け剱に向けて、目標をしてする。
その双眼鏡越しの視線の先には、陸竜に跨り腕を振るい、何か怒鳴り上げているらしい、一体のオークの姿が見えた。
「あぁ、確認した」
誘導を受け、今度は剱がその小銃の照準器内に、その指揮官らしきオークの姿を捉える。
小銃の引き金が剱により絞られ、発砲音が上がる。一瞬後、陸竜上のオークの額に、5.56㎜弾が命中。オークは面白いようにもんどり打ち吹っ飛び、落竜し地面に叩きつけられる。
そしてそれを見た周囲のオーク達は狼狽し、隊形を崩壊させた。
剱によりオークの指揮官が一体仕留められた直後、モンスター達の第2派の列の各所で、いくつもの爆発が上がった。迫撃砲小隊の81㎜迫撃砲L16が再照準を完了させ、その砲撃がモンスター達の第2派を襲ったのだ。
タフなモンスター達であるが、その第1派、第2派は隊の火力投射の前に瓦解し、最早組織的な行動は不可能なレベルにまで陥っていた。
「すごい……」
「魔物達が、こんなにも容易く……」
隊に同伴していた騎士達は、先までの絶望的な光景が、ものの僅かな時間でひっくり返った事に、目を向き唖然としている。
「連中の第2派までは、大分崩しました」
「まだ、第3派、4派と来るわ。こちらの余力は?」
「ギリといった所でしょう。それ以上となると、増援か、補給のインターバルが欲しいトコです」
しかしその一方では、羽双と小隊指揮官の二等陸尉が、やや渋い顔で話し合っている。
ここまで敵勢力を削り、瓦解させたはいいが、観測ヘリからの報告では、まださらなる敵の勢力が来ることが分かっていた。それを鑑みれば、今展開している中隊だけでの対応は、ギリギリな物であった。
「増援が間もなく来るわ、それまで維持できれば――」
増援が車で現状を維持できれば良い。その旨を発送とした羽双。
《北西側城門、コンタクトビーム6-1より各隊ッ!》
しかしそんな彼女の言葉を遮るように、無線上に通信が上がったのはその時であった。
《中MATがここに来てグズった!こちら側には現在、マンモスモドキが数体接近中!これを抑えられない!至急、なんらかの応援、支援を願うッ!》
響き聞こえた通信音声。それは、町の北西側城門に配置布陣した、対戦車班からの物であった。どうやら対戦車誘導弾が不具合を起こし、接近する敵――ライマクに対応できなくなったらしい。
「ッ……!」
その報に、羽双や小隊指揮官の顔が険しくなる。寄越された応援要請だが、こちらからも応援に避ける程の余力は無かったからだ。
「6-1、こちらパルスライフル・コマンド」
ともかく返答を返すべく、羽双はインカムに向けて声を発する。
「現在、応援に向けられる余力は無いわ。やむを得ない、そちらはその場を放棄して、後退しなさい」
そして状況から、すぐさま北西側の配置地点の放棄を判断。その旨を該当の対戦車班へと発し送った。
《コマンド、しかし――こちらは城門城壁も崩壊している。敵の軍勢が素通りになりますッ!》
「かまわない、周辺、町内の各隊を全て後退させる。相手がいなければ、大群もただの遊兵よ。それより火力が十分でない状態での接触を避けて、いいわね?」
通信の向こうからは、懸念、異議の言葉が寄越される。しかし羽双はそれを説き、そして交戦を避け後退するよう念を押した。
《――了解、6-1他配置部隊は、この場を放棄し後退します!》
その言葉に、通信の向こうの対戦車班からは、それを承諾する言葉が返される。そして通信はそこで終えられた。
「湯根三曹。周辺部隊、及び町内の第4中隊各隊にも、後退指示を」
「は」
通信を終えると同時に、羽双は付随していた通信隊員の陸曹に、敵が突破するであろう城門付近。及び町内の各隊に、後退の報を送るよう指示を発した。
「――さて、これで一時的には凌げるでしょうけど……かといって、あまり相手に好きに暴れまわられるのも、面白くないわね」
各所各隊へ後退の支持を出し終えた羽双は、そこから口元に手を当て、少し難しい口調で零す。
「長谷川二尉。こちらから、なんとか部隊を捻出編成して、流れ込んで来る敵への対応に、向かわせられないかしら?」
羽双は、小隊指揮官にそう尋ねる。
「難しいですね。半端な数を差し向けるのは危険です。しかし、まとまった数は無理です、ここが維持し切れなくなる」
しかし小隊指揮官は、未だ続いている戦闘の様子を一瞥して、難色を示す言葉を返した。
「UH-1Jは?」
「まだサブシステムがグズったまま、回復しないそうです。飛んでも、攻撃ができません」
続け羽双が示したのは、町の中心の聖堂前広場で駐機している、UH-1Jによる航空支援が受けられないかとの質問だ。しかし小隊指揮官はそれも否定する。UH-1Jは武装に不具合を起こし、現在も調整中であった。
「ッー……」
小隊指揮官からの一連の回答に、羽双は苦い心情を現して口を鳴らす。
「面倒みてぇだな」
そんな羽双等の元へ、独特の重低音の声色で、声が掛かったのはその時であった。
羽双等が視線を起こせば、そこには他ならぬ制刻の姿があった。
「なんなら、俺等でモンスターズを少しからかって来るが」
「なんですって?」
続け、制刻から発せられたそんな言葉。それに、羽双は怪訝な顔を作った。
先の一連の通信やり取りは、制刻等の耳にも入っていた。そしてその上で制刻は、自分等で流れ込んで来た敵モンスター達に、対応に出向く旨を進言したのだ。
「あなた達だけで行こうっていうの?こっち(3中隊)から増強は付けられないわよ」
「端から期待してねぇ」
羽双は疑問の言葉と、そして忠告の言葉を紡ぐ。しかしそれに対して制刻は、不躾に理解している旨を返す。
「いくらか揶揄って、蹴っ躓かせるくらいはできる。野放しにしとくよりゃ、マシだろう」
そして自分等で侵入したモンスターへ対応に向かう旨の、意義を説いて見せた。
「――本当にやれるの?後で泣きついて来ても、受け入れないわよ」
羽双は少し考えた後に、少しの皮肉と忠告を含めた、尋ねる言葉を発する。
「ハッ」
それに対して制刻は言葉は紡がずに、端的な一笑で返事を返して見せた。
「解放、剱、GONG。ちょいと、モンスターズをおちょくりに行くぞ」
そして制刻はそれ以上羽双と言葉を交わす事はせずに、身を翻す。そして背後に居た敢日等に促しながら、その間を割って抜け、城壁上を降りる階段に向かって、ノシノシと歩いて行った。
「お、おい……!」
「また、派手な事になりそうだ」
それを鳳藤が困惑した様子で続け追い、さらに敢日が肩を竦めて零しながら続き、最後にGONGが駆動音を立てながら続いた。
「いいんですか?」
「たぶんね……鐘霧二尉!」
制刻等の姿を見送った後に、小隊指揮官が訝しむ様子で羽双に尋ねる。それに羽双は何か投げやりな様子で返すと、それから少し先にいた鐘霧を呼んだ。
「はい?」
「制刻と一緒に行ってちょうだい。目付け役が必要よ」
羽双は鐘霧に、制刻等に同行するよう指示する。
「――了解です。朱真、一緒に来るんだ」
指示を聞いた鐘霧は、それに対してあまり歓迎的では無さそうな色を微かに見せる。が、それを口にする事は無く、鐘霧は朱真一人を同伴者としてピックアップすると、制刻等の後を追った。
大変申し訳ありません。
思ったよりも書き溜められず、ストックが尽きてしまったため、
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