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 俺とクリスティン様とミシェルは昼夜を問わず、馬を走らせた。できる限り、早く隣国につくために。


 だが、その途中、不幸が起こった。無理をさせすぎたのもあって、一匹の馬が走れなくなってしまったのだ。俺たちは馬を休めながらどうするかを悩む。二人乗りをすることもできるが、馬への疲労はさらに加速するし、速度が落ちる。そうすれば、隣国に入る前に追手に追いつかれてしまうだろう。


「俺がここで残って、追手を足止めします。その間に」


 俺が提案をしようとすると、それを言い切る前に。すぐさまクリスティン様が首を振って反対する。


「だめよ、そんなのだめ。一緒じゃなきゃだめ」

「でしたら私が残ります」


 ミシェルはそう言いながら手をあげる。俺は首を振る。


「ミシェルでは、追手の足止めは難しいでしょう」

「なめないでください、これでもお嬢様付きのメイドです。ある程度戦えます」


 彼女は力強い声でそう言う。だけど、俺にはわかった。彼女の体が震えているのを。彼女はほとんど戦ったこともなく、人を殺したこともないはずだ。ここに残る人間に待っているのは追手との殺し合いだ。


「追手は侯爵家の雇った暗殺者です。実力は高い。ミシェル、自分でもわかるだろう」


 ミシェルは俺の言ったことを聞いて下を向く。彼女の手は強く握られていた。するとクリスティン様が提案してくる。


「じゃあ全員で一緒に一度追手と戦いましょう。そうすれば」

「だめです、何が起こるかわからない。あなたが殺されたら終わりなんです」


 俺はクリスティン様のほうを向いて言う。彼女は大きな声で言う。


「私の命なんて、あなたたちが一緒じゃなきゃ意味なんて」


 クリスティン様はそこで一度言葉を切り、涙を浮かべながら悲し気な寂しげな笑顔をしながら言う。


「ない。それにもう誰かを失いたくない」


 おそらくロドリグさんのことを言っている。ロドリグさんはもう死んでいるのだろうと思う。もしかしたら、マンに一つの可能性で逃げ出したかもしれないが。


 しばらく、無言のままであった。俺はそろそろ馬が走れるようになると思いながら、もう結論を出すべきと判断する。俺はミシェルに視線を向ける。ミシェルも俺のほうを見ていた。考えていることは同じのようだ。俺はクリスティン様のほうを向く。


「クリスティン様、お願いがあります」

「いや、いやよ。そのお願いは聞きたくない」


 クリスティン様は俺が何を言うかをわかっているようだ。だから、手で耳を塞いで聞かないようにする。俺がミシェルに視線送ると、ミシェルはすぐにクリスティン様の近くに行くとその手をはがす。ミシェル、やめてとクリスティン様は言うがミシェルはその指示に従わない。俺はクリスティン様に向かって言う。言ってしまう。彼女が今この場で最も聞きたくない願いを。


「クリスティン様、ミシェルと共に先に行ってください。それが俺の願いです」

「いやよ、一緒に生きてくれると言ったじゃない。私を一人にしないって」

「ええ、だから俺はここで残って追手を足止めします。生きるために」


 俺は笑顔でそう言った。クリスティン様はダメ、いやだ、と言って泣きながら首を振る。


「クリスティン様、絶対に後から追いかけます。一時一人にしますが、すぐに合流します」

「なんでみんな嘘をつくの、もう私は騙されないし、嘘はもう聞きたくない」


 クリスティン様は小さな声で言う。それは彼女にとってずっと思ってきたことなのだろう。だから、俺は酷だとわかっていても言わなければならない。


「嘘じゃありませんよ、絶対にあなたのもとに戻ります」


 俺はまっすぐクリスティン様を見つめながら言う。クリスティン様は少しして観念したかのようにしながら、笑顔で尋ねてくる。


「じゃあ私の願いも聞いて」

「何でしょう?」


 俺は尋ねる。彼女はすぐに返答する。


「クリスって呼んで、カーヒル」

「クリス、絶対にあなたのもとに戻ります」


 俺は笑顔でそう言った。クリスはきっとだが、誰かにそう呼ばれるのをずっと前から望んでいたのだろうと思う。なぜなら、俺がその名を呼んだ後、とても嬉しそうな表情を浮かべたのだから。


「絶対よ、約束。必ず戻ってね、カーヒル」

「ええ、戻ります。ですからミシェルと共に先に行ってください、クリス」


 クリスはうなずくと、ミシェルと共に馬に乗る。そして、一度俺のほうを向いて念を押すように言う。


「待ってるから、カーヒル」

「ええ、待っててください、クリス」


 クリスは笑顔を見せると、ミシェルと共に馬を走らせる。どんどんと距離は遠くなっていく。俺はそこに座り込むと追手を待つことにする。


 かなりの時間が経った。クリスとミシェルと別れた時は、明るかった周りはすっかりと暗くなっていた。すると、俺は視線の先に明かりを見つける。近づいてくる速度から馬に乗っているものたちのもだろうと思う。また、明かりは数個あって、数人がちかづいてくるのがわかった。


 俺の予感は告げていた。クリスを追う追手であろうと。俺は立ち上がり、剣を引き抜く。人を殺すと覚悟を決めているのは、キリングを殺した時以来だ。


 だが、あの時とは殺しの理由が違う。あの時は復讐という自己満足のためだった。だが、今は違う。


「守るための殺しだ」


 そう今から、俺はクリスの命を守るために、クリスとの約束を守るための殺しをする。あの時、キリングを殺した時に比べて、どこか気分が晴れ晴れしていた。今から人を殺すというのに。


 俺は近くにあった木に登る。そして、馬が近づいてくると、誰が乗っているのと数を確認する。数は四人で乗っていたのはあのロドリグさんが森で話していた相手のような格好をしていた。俺は相手が追手であると理解する。そして、彼らの一人が木の近くまで来ると、叫びながら俺は飛び降りる。


 俺の近くにいた追手は驚愕の表情を浮かべる。俺はそのまま、そいつの頭に剣を突きさす。奇襲だったので、そいつは反応できなかった。


 俺は残るは三人だと思いながら、俺はそいつらのほうをみる。全員がもうこちらに対して、戦う態勢を整えていた。侯爵家の雇った暗殺者である、たぶんではあるが俺より実力は高いもしくは同じくらいだろう。それに、相手は三人でこちらは一人。死ぬ可能性が高い。


 だが、それでも俺はこいつらを殺して、生き残らなければならない。


 クリスとの約束を守るために。


 俺は追手たちとの戦いを始めた。

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