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 私が生まれた時、父親も母親も普通に接してくれた。愛する一人の娘として、大事にしてくれていた。使用人の人たちも、一人の令嬢として仕える主の一人として大事に大切に扱ってくれた。


 だけど、ある日私が魔法を使った日、周りは変わった。まるで腫れ物を扱うのごとく、誰も必要以上に近寄ってこなくなった。私はどうして?と思い、理由を聞いた。誰も答えてはくれなかった。だけど、ある日ロドリグが私に教えてくれた。


 『破滅の魔女』のことを。私はそれを聞いて、その理由が分かったと同時に、自分と周りを恨んだ。


 どうして自分は闇魔法という力を持ってしまったのだろうか、と。


 どうして、それだけで周りの人は私の扱いを変えてしまったのだろうか、と。


 私は何もしていない、誰も傷つけていない、ただ闇魔法という力を持ってしまっただけなのに。誰も何も言わずに、私を嫌うのだろう。


 だけど、その気持ちは最初それほど大きなものではなかった。なぜなら、ロドリグはいつも通りに扱ってくれた。それに、その時ごろに使用人となったミシェルも普通に接してくれたから。


 ロドリグとミシェルは私の力を怖がらずに、普通に接してくれた。だから、私は信じていたのに。特にずっといつも通りに接してくれたロドリグのことを。


 ある日、私は夜中に突然目覚めて、ベッドから起き上がり、自分の部屋を出てお父様の書斎を目指した。なぜそんなことをしたのかはわからないのだが、何かに呼ばれるようであった。

 お父様の書斎の近くに来ると、誰かの話し声がした。それはロドリグとお父様の声だった。


『クリスティンを森の屋敷へ送る。ここにいると何かと面倒だ』

『お待ち下さい、旦那様。クリスティン様は長女です。それに男児がいないうちでは、彼女の婚約者こそが次期当主となります』


 私は森の屋敷へと送られるという話だけで恐怖していた。どうして、そんなところに行かなければならないのだろう、と。なぜここにいてはいけないのだろう、とも思った。そして、同時にロドリグがきっとそれを止めてくれると信じていた。


『モニカが最悪いるし、結婚して子どもだけでも作ってくれれば十分だ。ロドリグ、わかるだろ?』

『しかし』

『黙れ、貴様の主人は私だ、主人の決定に従うのが、貴様の役目だろうが』


 お父様はロドリグに怒鳴った。ロドリグは何も言わないでいた。どうして、何も言わないのだろうと思った。それに、ロドリグは前に言ってくれたのに。私がどうして、ロドリグはみんなと違って普通に接してくれるの?と聞いた時答えてくれたのに。


『お嬢様のことを大切に思っているからです。私の主人はお嬢様ですし、それにここだけの話ですがお嬢様のことは私の娘のように思っています』


 そう言ってくれたのはうれしかったのに。主人は私で、娘のように思ってくれているのではないか、と思っていたのに。


『わかりました、旦那様』


 ロドリグはそう答えた。私よりもお父様を優先した。それが当たり前かのように、私は信じていたのに。私はその場で泣き出しそうだった。だが、泣けばここにいるのがばれてしまう、話を聞いたのがばれてしまう。そうなれば何が起こるかはわからない。自分の部屋へとすぐに戻ろうとしたが、体は動かなった。


『では、ロドリグ、監視を頼むぞ。それにいつか彼女が不要になれば、お前が殺せ。お前ならクリスティンの簡単に殺せるだろう。あんなに好かれているのだから』


 私の体はもう動き出していた。自分の部屋のへと。もう聞いていられなかった、涙をこらえ、声を抑えながら私は自分の部屋へと戻った。私は部屋に戻ると、布団をかぶり声を抑えて泣いた。


 ロドリグは私をずっとだましていた。私のことをいずれ殺すために、あのように普通に接してくれたのだ。そう思うと、涙が止まらなかった。


 翌日になっても私は泣いたままであった。その日、ちょうど私を起こしに来たミシェルは私が泣いている理由を聞いた。私は理由を答えられなかった。答えたくなかった。ミシェルは困ったような表情をすると、突如私の手を取るとこう言ってくれた。


『何があったかはわかりませんが、私はお嬢様の味方です』


 私は本当に?と問う。ミシェルは本当です、と言った。私はもう一度問うた。


『何があってもずっと一緒にいてくれる?』

『ええ、ずっと一緒です。私はお嬢様のメイドですから』


 ミシェルは笑顔でそう言ってくれた。だけど、メイドだけでは怖かった。だって、ロドリグのように主人が変わってしまうかもしれない、と思った。だから、私はミシェルにお願いをした。


『私の友達になってくれる?』


 友達なら裏切らないだろう、と思った。だから、私はミシェルにお願いをした。ミシェルは一瞬困ったような表情をする。それはメイドとしての逡巡だったのだろうと思う。でもすぐにミシェルは笑顔で頷く。


『はい、それがお嬢様のお望みなら。私とお嬢様は友達です。何があってもずっと』


 私はうれしかった。これでミシェルは裏切らないと思った。私はミシェルに抱き着いた。ミシェルは一瞬ふらつくが、私を受け止め私の頭をなでてくれた。


 その後、数日して、私は森の屋敷へと送られた。ミシェルとロドリグを含む十数人の使用人と共に。使用人の数は徐々に減っていた。だけど、私はそれを悲しいとも何も思わなかった。だって、ミシェルさえいれば私には十分だった。


 森での生活でやることは基本的に勉強だけであった。教えてくれたのはロドリグだった。私はロドリグと微妙な関係のままだった。ミシェルはそれを疑問に思ったようであったが、何も言わずにいてくれた。

 

 ロドリグと接しているとき、彼は苦悩しているように感じられた。だから、私は実はロドリグは私を愛しているのではないか、と少し思っていた。だけど、それが違った場合が怖くて、私は何も言えなかった。だから、私はロドリグが何かを言ってくれるのを待っていた。今でもずっと。

 

 ある日、ミシェルは私に本をくれた。退屈なことが多いだろう、と小説をくれた。私はそこから小説を読み、物語を読むのにはまった。だって、物語の結末はほとんどみんな幸せになるし、物語の人物に裏切られても何も思わないからだ。


 でもある日、突如気づいた。私はずっと物語の主人公のつもりだった。いずれ誰かが救ってくれる、と。でも違う、私は悪役だ、と。私がいなくなることでみんなが幸せになるのだ、と。

 その日からだろう、私は死を望み始めた。だけど、自分で死ぬ覚悟も度胸もなく、ずるずるとそれを先延ばしにして生きのこった。そして、どこかで信じ続けていた。私を救ってくれる人物が現れると。


 そして、レインが屋敷の前で倒れていたのを発見した。私はレインを助けて、話を聞いた。レインは私が望んでいた人物であるかのように感じられた。だから、カーヒルの名を与えた。


 いずれ、私を殺してくれると信じ、願って。


 カーヒルの選択は驚くべきものだった。私と共にいてくれると言ってくれた。愛に飢えた私にとって願ったかのようなことを言ってくれた。それも本心から。


 カーヒルは私を救ってくれた。彼は恩を返すためと言っているが、私のほうが彼に恩をもらっていると感じる。どうすればこの恩は返せるのだろうか?どうすれば彼は喜んでくれるのだろうか?


 そして、どうしていれば裏切らずに一緒にいてくれるのだろうか?もうロドリグの時のような気持ちは味わいたくない。

 


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