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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
8/55

7高校生にもなって門限って・・・・あるよね普通??

「そうだ!!どうせ君はそんな調子なら放課後も暇なんだろう!?」

「受験生捕まえて、放課後暇なんだろうって・・・・」

「暇なんだろ?」

え?暇じゃなかったの?みたいな目で見るのは止めてほしい。


「・・・・・暇ですけど」

癪だが、暇だ。何もすることが無いと言っても過言ではない。

「じゃあ、先生と一緒に来てほしいところがあるんだ!!丁度よかったよ!!」

いやー良かった、良かった、なんて言っているけど、勝手に決めないでほしい。

「いや・・・ちょっと待ってくださいよ・・・!!急にそんなこと言われても・・・・」

残念だが、俺の特技は孤独だ。

何なら俺の苦手な物は集団行動、人に合わせる、と言っても過言ではない。

こうやって、二十分ほどだろうか?一対一で会話をすることだって実は難易度の高いミッションなんだ。

そんな俺の放課後を・・・・誰かとともに過ごす・・・・だと・・・!?

「だって・・・・暇・・・なんでしょ・・・??」

そんな上目遣いで迫られても俺は屈しない!!!

なぜなら俺には、自信があるからだ!!

俺に惚れる女などいない!!だからハニートラップにだけは引っかからないという絶対の自信が!!

「暇ですけど・・・・。ほら?明日の予習復習もあるし・・・・??」

「君もつまらない嘘をつく。今日は金曜だから明日は土曜日だろう?つまり学校は休みだ」

「しまった!?そうだった!?・・・・ええっと・・・・。ほら?それでも門限があるんで?」


門限?あっただろうか?

中学生の時、家に帰りたくなくて街の図書館が閉館するまでそこに居たら、普段は早く帰ってくるはずなのに、と血相を変えて母親が捜索願まで出していたのは、思い出したくもない記憶だ・・・・。


だって、あの時、冬で確かに外が暗くなるのが早かったけれども、図書館の閉館時間なんて十八時くらいだった。

それで警察まで出たんだぞ?悪夢だよ、悪夢。

それだけ見ると心配しているいい母親じゃないか?と思う人もいるだろうけど、あれはもう病気だ。子供を管理したがる根っからの病気。

当時の同級生たちがにやにやしながら『喜劇:感動の親子再会』を見て、翌日にはクラスの笑い者だ。随分と馬鹿にされた物だ。

それ以来ほとんど口をきいていない。

今なら何時に帰っても許されるんじゃないだろうか?

いや、確かめたくもないけど・・・・。


「何時?」

「えっと・・・十八時・・・??」

「え!?本当に言ってるの!?高校生だよ!?高校生にもなって門限が十八時!?」

「・・・・・」

俺の顔を見て、何かを悟ったのだろう、「分かった、分かった」と一人で何かを呟くと、突然電話を手に取り、どこかへかけ出した。

「突然すみません。私、U高校に勤める保健医で佐倉と申します・・・・。はい・・・・ええ・・・はい」

猛烈に嫌な予感がしてきた。

どこに電話しているのだろうか?

「ああ・・・いえいえ。そのようなことではなく。どうしても協力してほしいことがありまして・・・・・。ええ、本当にそうですよ?お手伝いをお願いしたのですが・・・・」

まさか・・・・??まさか・・・違うよな??

「ですので、もしかしたら夜遅い帰宅になってしまうかもしれないと思いまして・・・ええ・・・。もしよろしければ、晩御飯もご馳走しても?・・・・ありがとうございます」

話はまとまったのだろうか?

そう思っていたら、急に受話器を渡される。

「ほら?君のお母さまだぞ?電話を替わってくれって」

いやいやいや!!??本当に家に電話したのか!!??

「・・・・もしもし・・・??」

「ああ!!良かった!!あんた変なことしてないでしょうね!?その佐倉先生ってお若い先生なの!?保健医の先生のお世話になるってどういうことよ!?あんた気が利かない子だから大丈夫なんでしょうね!!??」

相変わらずうるさい・・・・。

本当に辟易してしまう。よくもまあ、これだけの質問をぶつけられるものだ。

「・・・・・」

がちゃり、とそのまま受話器を置いた。

「え!?もういいの!?切っちゃうの!?ええええ!!!???」

「余計なことを・・・・・」

いつ以来だろうか?そう言えば、久しぶりに言葉を交わした気がする。(実は言葉を交わしてはいない)

引きこもりでもないのに、久しぶりに言葉を交わしたなんて、おかしな話だが・・・・。

「随分と心配していたぞ?」

「あれはもう病気なんですよ・・・・」

「まあ・・・・確かにちょっと・・・、ほんのちょっと・・・・心配性かな?と思ったけれども、母親なんて子供の心配をするものだと聞くし、ああいうものなんじゃないのか?」


うん??なんか・・・??少し引っかかるような気がしたが・・・・。


それでもそれ以上に。

「って言うか!!なんで家の連絡先知ってるんですか!?」

「ふっ!ふっ!ふ!生徒の個人情報など、私たち先生は全てお見通しなのだ。・・・というのは冗談で、ここに・・・・」

そう言って手元の書類の束を見せてくれた。そこには、クラスごとに生徒の名前と、家族構成と、住所と、自宅の連絡先が載った帳簿のようなものが置いてあった。

「それに!!なんですか夕飯って!!??そんなに時間かかるようなもんなんですか!?何させる気なんですか!?」

改めて怖いわ・・・・。

何か・・・・臓器とか売られないよね・・・・?

鉄砲玉とか、そんなのにされないよね?

「なあに!!大丈夫!!・・・・ちょっと・・・・覚悟は必要かもしれないけど・・・・」

「最後の不穏な一言は聞きたくなかった・・・・」

「まあ!!覚悟と言っても大した覚悟じゃない!!別に命を失うとか、危険な場所に行くとかそんなんじゃないから!!」

「じゃあ何の覚悟なんですか!?俺は何の覚悟を問われるんですか!?」

「あと、マスクは必需品だし、ゴム手袋も・・・・・。あと雑巾もだ!!」


俺の話なんて聞かずに、勝手に保健室の備品をごそごそと探り始めたけれども、本当に俺は何をさせられるんだろうか・・・!?不安しかない・・・・。


「私は十七時に終業だから、その時までどこかに居てね?」

「校内じゃないんですか・・・?」

「うん。だから、私の車に乗ってもらって、目的地まで行こうと思うんだけれども・・・」


そんなところ、他の生徒に見られたら、俺は本当に明日から虐められてしまうだろう。

いや、それで済めばいいが、もしかしたら、教師の中にもあからさまに俺のことを目の敵にする奴が現れるかもしれない・・・・。

今まで、目立たず、波風立てず、友達ゼロ人で何とかやって来たのに・・・!!

それだけは阻止しなければならない!!


「いえ!!いいです!!そこまでご迷惑をかけるわけにはいきません!!目的地近くの駅を教えてもらえればそこまで電車で行きます!!」

「そうか・・・・??大丈夫か・・・??」

大丈夫か?だと??確かに、俺は、電車は苦手だけれども、乗れないことは無い。必要があって、どうしてもそうしなけれというのであれば、大抵のことはできるのだ。

「大丈夫です!!」

「そうか・・・・。もし逃げたら、家まで迎えに行くからな?」


怖え・・・・。この人ならやるかもしれない、と、ほんの少しの時間の会話で思わせるところが特に。

にっこりと笑いながら、脅迫めいたことを口にする佐倉先生に氷水を押し付けるように渡し、何とか保健室を辞去しようとしたのだが・・・。


「約束だからなーーー!!もし約束破ったら!!明日から付きまとうからなーーー!!」


ストーカーかよ!!??


その言葉を背に、逃げるように教室へと戻った。

折よく、四限は終わっていて、昼の時間だったので、何も言わず、誰にも見とがめられずに席へと着き、そのまま弁当を食べる。

俺は潔癖だ。

だから、母親だろうが、人が握った握り飯なんて食べられない。

そしてそれを理由に、自分の弁当は、早起きして自分で作っている。

とは偉そうに言っても、握り飯と、放課後に帰り道で買った総菜とか、有り合わせの物とかがほとんどだけど。


それにしても・・・・。いい匂いしたな先生・・・・。


駄目だ!!それ以上考えたら負けるような気がする!!慌てて佐倉先生と、彼女とした約束を頭の外に追い出す。




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