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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
6/55

5でも勘違いはしない。だって、彼女いない歴イコール年齢だから!!

ずき、と頬が痛んだ。

「痛っ!?」

ゆっくりと触れてみればわずかに殴られた場所が腫れている気がする。

心なしか血の味がするような気も・・・・??

近くにあった鏡で見たくもない自分の顔を覗いてみれば、確かに僅かに腫れていて、それ以上に赤く何かで殴られたような跡がはっきりと付いている。

「・・・・・」

ああ、そうかよ。・・・・だからどうした?

俺の腫れた顔を心配する奴もいなければ、どうした?って声をかける奴もいない。そんなのは当然だ。

その方がいい。

それでも・・・。

「・・・・これ見ても何にも言わねえのな・・・」

教師なんてどいつもこいつもくそだ。馬鹿ばっかりだ。自分の保身で精いっぱいで、危ない場所には絶対に近寄らない。

小・中学校でもそうだったが、高校はむしろ、ビジネスライクでいい、と思っていた・・・・、それでも現実はこんなもんだな。

高校なんて、ただ、生徒の成績が上がって、もしくは部活動で何かしらの成績を出して、それでより多くの生徒を集めれば勝ち。

公立だろうが、私立だろうが、内情は変わらない。いや、公立ですらこうなのだ、私立ともなれば、散々だったかもしれない。

こうだったら、とか、かもしれない、なんて言葉は、俺は嫌いだけれども、これよりも酷いって言うなら、望まれたって、金をもらったってこっちから願い下げだ。

有名私立、T大やK大、S大学なんかへの合格者が全国一位なんてところもあると聞くが、そんなところの教師ともなれば、成績の悪い生徒なんて、もう犬猫と同じ扱いをしているかもしれない。

まあ、偏見かもしれないし、もっといいところかもしれない。

それでも俺は・・・・・。

「高校なんて・・・・!!」

「あ!!いた!!!」

不意に後ろから誰かに呼び止められた声で物思いから覚めたが、どうせ俺のことを呼び止めたわけじゃあない。

そもそも俺を呼び止める奴なんて、この学校に一人もいないだろう。

そう思っていたのに・・・。

「もう無視するなよ!!杉谷君!!君だぞ!!」


・・・・それでも俺のことじゃあない。

周りを見渡せば生徒なんていないし、杉谷、という苗字も、クラスには俺しかいない。

それでも!!俺のことではない!!断じて!!

どうせ聞き間違えたのだろう。

杉下、とか、杉内、とか、いや、もしかしたら、谷田部って名前と聞き間違えたのか?とにかく!!俺のことじゃない!!絶対!!!断じて!!

一切後ろを振り向くことなく、そのまま歩き出そうとしたら、がっしりと、思いのほか強い力で肩を掴まれ、無理やり振り向かせられる。


「杉谷君!!全く!!無視するなよ!!」


そこに立っていたのは・・・・。


「・・・・佐倉・・・・先生・・・・!?」


紛れもない、校内一の美女、彼女にしたい先生ナンバーワン、お姉さんにしたい先生、というか、お姉さんにしたい存在ナンバーワン、と名高い、心理カウンセラーの先生が立っていた。

(そもそも外部の人間で、厳密には先生、ではないんだけどな・・・・)

そう思わなくもないが、この二年、文化祭で開かれたミスコンテスト先生部門で、二位と三百票以上の大差をつけて圧勝して見せた女性だ。

その美貌に憧れるのは生徒だけではない、と言われ、先生たちの中にも、多くのファンがいると言われている。

つまりだ。

つまり!!俺とは正反対。全くの対極に位置する彼女が、一体俺に何の用だというのだろうか!?

いや!!いやいや!!この期に及んでもまだ言っておこう!!!俺に用があるのではないだろう!!

しかし、先生は振り返った俺の顔をまじまじと見つめてくる。


・・・・やめてほしい・・・。

気恥ずかしい、というのももちろんある。何せこちとら彼女いない歴イコール年齢の、いや、むしろ最後に女の子と話したのはいつになるんだろう?と遡って数えても、記憶にございません、ってくらいの(もちろん母親と妹は除く!!)根っからのお・・・。

ええい!!兎に角根っからの根暗だ!!

そりゃ緊張もしますわよ!!

やばい!!変な汗かいてきた。脇の下から・・・・。臭くないよね??

「随分とやられたようだな?」

苦笑いしながらそんなことを言われたもんだから、あまりに突然のことに、一瞬何を言われたのか分からなくなってしまった。

「・・・・ふえ・・・!?」

「頬の怪我、殴られたんだろう?それ一発じゃなかったんじゃないのか?」

心配そうに見つめてくる佐倉先生・・・・。尊い。なんて普通の男子高校生なら考えるところだが、危ない・・・!!

俺はそれよりも、挙動不審にきょろきょろとあたりを探る。

・・・良かった・・・。運よく周りに生徒の姿はない。もし、こんな場面を見られれば、妬み、嫉みで明日からの平穏な学校生活が詰むところだった・・・。

「大丈夫ですよ・・・・」

そう言って、肩に置かれた手を、何となく振り払うのも駄目な気がして、ゆっくりと距離を離そうとしたが、瞬間、腕を思いきりつかまれそのままどこかに連れて行かれそうになる。

「・・・・うえ!?」

「大丈夫じゃない!!どうせ口の中切ったんだろう?保健室に行くぞ!傷の手当てしてあげるから」

「・・・いや・・・そんなの・・・」

じたばたと暴れてみても、離してはくれない。意外と力が強くて驚いた。

身長は、俺よりも若干低いのだろうが、それでも、女性にしては高い方だろう。

華奢なその体のどこに?と思わなくもないが、それでも、ぐいぐいと引きずられるように保健室へと連行されてしまう。

「いや・・・あの・・・・一人で歩けますって・・・・!!」

まずい!!この状況を見られるわけにはいかない!!

そう思って、手を離そうとするが、やはり離れない。


俺の力が弱いのか・・・・??


ってそんな場合ではなく!!

「ねえ・・・??何あれ・・・??」

「あの人・・・。三年生・・・??」

「見たことない人・・・・だよね??」

ほら見ろ言わんこっちゃない!!あなた目立つんだよ!!

遠巻きに何人かの生徒に見られちまったよ!?生憎と一年生だから、俺の顔なんて知らないだろうけれども・・・・。まあ、同学年でも俺の顔を知っている奴なんて少ないんだけど・・・。

でもお!!


「ふっ!ふっ!ふ!観念しろ!!杉谷君!!私は一度捕まえたら絶対に逃さないんだぜ!!」

かっこよくバチン、とウインクしながらそんなことを言っているけれども、それ完全に悪役のセリフじゃね?

「・・・・助けてえぇぇぇぇぇぇ・・・・!!」




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