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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
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54どうして人は、人を殺すのか?どうして人は、己を殺すのか??

「無茶するから」


俺の目を隠すな!!目を!!怖いから!!

「あれは仕方なかったって、何回も言ってるけどさ・・・・。まあ、結果良ければ全てよし!!・・・・・じゃ駄目??・・・でした??」

「だめ。約束。二度とあんな無茶しないって」

えぇ・・・??駄目なの??俺のことだから、俺の自由なんじゃないの??

それでも、なんでか、反抗する気が一切怒らないのも不思議だ・・・。


「ああ、約束する・・・・」

まあ、正直に言えば、俺だって、もう御免だよ。スタントマンじゃないんだから、建物の三階から飛び降りるなんてさあ・・・・・。もうあれっきりにしたいよね。

「ひゅー、ひゅー、熱いねお二人さん!!!」

・・・・先生は、始終何をしたいんですか??

「お姉ちゃんは黙ってて」

「・・・・・はい」


「深冬」

「なん・・・・だよ??」

「一つだけ教えて?」

「なに・・・を??」

余りにも真剣な茜の表情に。声音に。冗談を言うことも躊躇われて。目を離すこともできず、ただ、ただ、見つめ返す。


「どうして死のうと思ったの??」

「っ!?・・・・それは・・・・・。死のうと思ったわけじゃなくて助けようと・・・」

何で知ってるんだろうね??

そう思うよりも前に、自分の答えが、決して彼女の望んでいるものではないことを知る。

「違う。今回のことじゃなくて。中学校の時のこと」

やっぱりね・・・・。

でも、なんで知ってる??

ちらり、と犬飼さんに視線を送れば、ぶんぶんと首を横に振って、俺は知らないぞ!?と・・・・。まあ、あの表情を見れば、恐らく本当に知らなかったんだろう。

と、言うことは??

「・・・・ごめん。私が話したんだ」

「・・・・やっぱり先生でしたか・・・・」

心理カウンセラーなんて言うんだから、そりゃ知っててもおかしくはない。

どうせ、生徒の情報なんて事細かに書かれた内申書が教育者の立場であれば比較的簡単に閲覧できるはず。

いいことを書かれているはずは無いだろうけど、中学校の時に俺が起こしたあの『自殺未遂』事件以来、要注意生徒の一人になっていることは確かだ。


「答えは??」


その瞳に射すくめられ。その言葉に、声に、どうしてか、韜晦も、偽りも話す気にはなれない。

だが・・・・、俺の答えは・・・・、


「なんでだろうね??」


分からない、だ。そしてこれは本心だ。

何でだろうね??人間って、辛かった記憶とか、哀しかった記憶とか、そういう物を全部、全部忘却することで、何とか生きているんだろうね。

だから、あの時、確かに辛かった。死ぬほどつらかった、ってことは覚えているんだけど、じゃあどうして?って聞かれれば、なかなか答えが見つからないものなんだね。

だから、ごめん。

その質問には答えられない。いや、答える言葉を持たない、が正しいか??



「じゃあ、どうして生きようと思ったの??」



なる程、と思った。

確かにそうだわ。

どうして俺は生きようと思ったんだろうか?

毎日虐められてた。

誰も助けてくれる人もいなくて。

家に帰っても、死んだように会話が無い。

口を開けば落ちこぼれ、屑、のろま。

家にも、勿論学校にも、俺の居場所なんかまったく存在しなくて。

苦しくて、苦しくて、苦しくて・・・・・。


それで、ああ、死のうって・・・・。

そう思ったんだけど、じゃあなんで生きよう、と思ったのかな??

どうせ知ってるんだろうから、改めて言う必要もないんだろうけど、死のうとした俺を、それでも生きていた俺を、見舞うどころか、見捨てた親父。

言葉もかけず、ただ、ただ、靴裏で踏みつぶした羽虫でも見つめるように軽蔑しきった瞳で見つめる妹。

そして、極めつけは・・・・。

あんたのせいで・・・・。

あんたが、こんなだから・・・・。

もう疲れたから・・・・。


・・・・だから、そんなに死にたいのなら、私が殺してあげる・・・・。


って、そのまま首を絞めて俺を殺そうとした母親。

どうしてこんな状況で俺は生きていこうとしたのかな??

ははっ!!なんだか笑えるわ!!

どうしてこんな状況でそれでも懲りずに生きようって思ったんだろうね??


「ある人が・・・・。俺の自殺未遂の事件を担当した刑事さんが・・・・。話してくれた言葉があるんだ」


もう一つ。大切に、大切に。胸の中に仕舞い込んでいたもう一つの言葉。



『死ぬために生きるな』



あの後に、あの人はなんて言っていたんだっけか??


『苦しんでも、泣いてもいいから、生きて、生きて、もがき続けろ。たかが三年間でお前の人生全てに絶望なんかするんじゃない。たかが、他人のために、他人の思惑のために、てめえの命を投げ捨てるな!!お前の生き死にを決めるのはお前ただ一人!!お前の人生の舵を切るのもお前ただ一人!!自由に生きて、後悔しながら死ぬんだ』


ぼさぼさの頭を掻きながら。

あの人はそう言ったっけ??


お前の学校の生徒も、教師も全員屑だな?

どんだけ事情聴取しても、出てくるのは自己保身の言い訳ばっかり・・・・。うんざりするわー・・・・。

なんて言いながら、母親が持ってきた果物を、適当に貪りながら、そんなことを言ってたっけ??


「どんな言葉??」

何故か強烈に心に残っている、その言葉を。わずか一フレーズを。茜にあげよう。

そしたら彼女は、何かを理解してくれるだろうか??彼女の行く先を照らす、道標になってくれるのだろうか??

俺がそうであったように・・・・。


「死ぬために生きるな」


「死ぬために生きるな??」

「そう。死ぬために生きるな。あの人は、確かにそう言ったんだ」

「・・・・良く分からない・・・・」

そうか・・・・。良く分からなかったか・・・・。それでもいつか、分かる日が来ればいいな・・・・。


「お前・・・・!?もしかして・・・・!?その言葉って・・・・!?」

いや・・・・。なんで犬飼さんに響いているの!?あんたに響いてほしくて言った言葉じゃないんだけど!?

そして、五十過ぎのおっさんが、なんで響いちゃってるの!?そこは、まだまだ青いな・・・。ふっ・・・・。って笑い飛ばすところじゃないの!?

「お前・・・・、もしかして・・・・、その刑事って・・・!?」

なんだ??知ってる人なのか??

そう言えば名前とか聞き忘れてたから、いい機会だ。あの時のお礼を言えればいいんだけど・・・・。

「知ってるんですか??」

「知ってるも何も・・・・。俺の三年前の相棒だ・・・・」

「ええ!?そんな偶然が・・・・!?・・・・で??その人は今どこに居るんですか??」

良かったー・・・・。

そう言えば、俺もあの時、自分のことで精いっぱいで、良くお礼も言えなかったんだよなー・・・。随分とまめな人で、俺のことが心配だったのか、足繁くお見舞いに来てくれてたんだっけ??

どうしてるのかなー・・・・??

なんて何気なく考えていたのに・・・・。


「死んだよ」

「・・・・え??」

・・・今、なんて・・・・??

「長年俺の相棒だった刑事だ・・・・・。三年前殉職したよ・・・・」

「・・・・そんな・・・・!?・・・っ!?殉職って!?」

誰かに殺されたのか!?


「小鳥遊・・・・」

「え??」

ぽつり、と。今度は、もう一人の小鳥遊刑事が自分の名前を呟いたけど、今更自己紹介でもするつもりなのか??


「小鳥遊・・・・・(おさむ)・・・・・。私の親父です」

「・・・・・は??」

「『アポロンの神託』。奴らの計画した完全犯罪に巻き込まれ、被害者を助けるために燃え盛る館に突入し、殉職した、馬鹿な親父が、折に触れて話していた、好きだった言葉です。僕は最後まで、その意味が分からなかった・・・・。今もまだ、その意味が分からない・・・・」



『死ぬために生きるな。自分の生を舵取りできるのは自分ただ一人。自由に生きて、後悔しながら死ぬんだ』




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