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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
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53お見舞い②

《話は三日前にさかのぼる》

「良かったな坊主。ただ、骨にひびが入ってただけでよ」

「・・・・・良くないですよ。めっちゃ痛みますから・・・・」

「まあ、まあ。とりあえず、検査入院ってことで、二週間?くらい入院するみたいだからさ。ちょっとゆっくりしてろよ」

「・・・・・まあ、受験生ですしね・・・・勉強しなきゃいけなんですけど・・・・」

「あ、そうか、お前受験生だったのか?そうか、そうか・・・・。うっかり忘れちまってたぜ!!すまん、すまん。じゃあ、とりあえず疲れてるだろうから、手短に」

「事情聴取ですか・・・・??」

何それ?超怖いんだけど??

「なんで身構えてんだよ??ただ、俺たちも知らないこと、何が起こっていたのか分からない所が、ほんのちょっとあるから、きちんとお前の口からそれを聞こうってだけで・・・・」

「はあ・・・・・」

そんな時だ。


ばああああああああああああん!!!!


と勢いよく、病室の扉が開け放たれ、一人の女性が入って来たのは。


「深冬!!??あんた一体学校で何してるのよ!!???もうこれっきりにしてって!!!中学校の時、何度も、何度もお願いしたじゃない!!???それなのに!!!それなのになんでまた校舎から飛び降りたのよ!!!???私たちが!!!私が一体どんな気持ちで・・・・!!!!」

髪を振り乱し、半狂乱の様子で入室してきた彼女を見た瞬間、体がどうしようもなく震えてしまった。

吐き気がこみあげて来て、めまいが、耳鳴りが止まらない。


「・・・・・お母さん、とりあえず落ち着いて!!!落ち着いてください!!!」

必死で宥める犬飼さん。

「深冬?深冬!?大丈夫!?」

茜と先生の言葉も、遠く、遠く霞んで聞こえてくる。



・・・・思い出したくもない記憶の断片。

・・・・土砂降りの雨の音に掻き消され。

・・・・ぽつり、ぽつりとしか聞き取れなかった彼女の言葉。

・・・・やつれ、青ざめ、目の下に消えない隈を作り。

・・・・かすれた声で、ただ、一言。

『・・・・・そんなに死にたいなら、私が今殺してあげようか・・・・・??』

・・・もう、疲れた。

・・・もう、疲れた。

・・・もう疲れた・・・・・。

・・・・何度も、何度も、吐き出される言葉が、当時、俺の心に真っ黒な影を落として。

・・・・こんなになっても、まるで彼女を、そして俺を置き去りにするように、一切病室には現れなかった彼女の夫と、その娘。

・・・・あの時、死にたくて、死にたくて、校舎の屋上から飛び降りれば死ねるんじゃないかって考えてた浅はかな俺を。

・・・・最も原始的で、最も簡単な方法でその願いを叶えようとした彼女。


・・・・それなのに・・・・。

・・・・それなのに、まるで生を求めるように、我知らずその腕が、必死にナースコールを探っていた。

・・・・呼び出された看護師が駆けつけてきたとき、俺は死の淵を彷徨っていた。

・・・・あの時、彼女はどうするつもりだったんだろう??

・・・・あの時、彼女は俺を殺して一体どうするつもりだったんだろう??

・・・・俺は、あの時、死んでいればよかったのかな??

・・・・あの日以降だ。

・・・・一家が、家族が、まるで赤の他人のようにばらばらになってしまったのは・・・。

・・・・家で顔を合わせることに抵抗は無くなっても、こうして、病院に彼女と一緒に来ることができなくなったのも・・・・。


・・・・そして、事件を担当した刑事さんに会って、あの言葉を貰ったのも。





《時は戻って》

「お前、家族と仲悪いんか??」

「・・・・犬飼さん。そう言うことは、そうやってストレートに聞く事じゃないと思うんですよ俺」

誰もが聞きづらいであろうことを、よくもまあ・・・・。

その図太さには関心するけどもね・・・・。

「だってよお!!お前の親父さんとかはどうしたんだよ??なあ??この三日間の間、一度でもいいから顔を出したのか??」

心配してくれているんだろうけど、余計なお世話だ。

「犬飼刑事。話が進まないので、さっさとお願いします」

「誠・・・・。お前・・・・・。まあ、いいや!!すまん、話が脱線した!!」

で、と一つ前置きすると、

「あの後、罪を認めた、というか、嬢ちゃんがにらんだ通り、鉄格子に付着していたDNAと、磯村のDNAが一致した」

・・・・いや、平気で言ってるけど、磯村って誰??

「磯村とは、犯人の男子生徒の名前ですよ」

へえ、そんな名前だったんだ・・・・。ごめんね・・・・。俺、全然分かんなかったわ。

「続けるぞ?」

「どうぞ」

「で、磯村なんだが、どう考えても計画的な犯行だったろ??」

「まあ・・・・・」

正直、良く思いついたよなー・・・・とかこの三日間考えてたんだけど、もし茜がいなければ、未だに事件は解決していなかったんじゃないだろうか??

「実は、あの後、家宅捜索と本人の証言からある事実が分かってな・・・・・」

いいから!!

勿体ぶらなくていいから!!早く結論を言えよ!!

「あの犯行を計画した組織?集団??団体??良く分かりませんが、そんな人たちがいるみたいなんですよ」

「あっ!?誠!?てめえ!!!」

「ダークウェブ。ご存知ですか??」

聞いたことは・・・・・。

「あれですよね?普通の検索エンジンからは決して閲覧できない違法なサイト??なんか、俺も別に詳しいわけではないんですけど、そんな話を聞いたことが・・・・」

「そうですか・・・・・」

小鳥遊刑事はじっくりと俺を探るような目で見つめてくるけれど、ほんとに俺は何も知らないよ??

「・・・・・その中で、自分たちが計画した完全犯罪を『売る』、もしくは『計画(コーディネート)』する奴らがいるそうです」


「へえ・・・・・」

なんだか随分と現実離れした話になって来たぞ・・・・??

「奴らは、自分たちのことを『アポロンの神託』と呼んでいるようですが・・・・」

「てめえらのことを神様だと勘違いしている連中ってわけだ」

「アポロンの神託・・・・・。確か、ソクラテスの『無知の知』を有名にした逸話、じゃなかったっけ??」

「・・・・・先生、意外と詳しいんですね・・・・」

もしかして・・・・中二病なのか!?もしかしなくてもそうだろ!?

そうじゃなきゃ、ソクラテスの弟子が、神様に、『ソクラテス以上に賢い者はいますか?』と聞いて、『ソクラテス以上に賢い者はいない』と返ってきた、という逸話、『アポロンの神託』のことを知る訳がないよ!!!そうに違いない!!!

「私、大学時代に心理学を専攻してたから、その中で必修授業に西洋哲学史が含まれてたんだよ・・・・」

うん、うん・・・・。別に恥ずかしがることは無いぞ!!

誰しもが通る道だからなあ・・・・。

「だから、さっきからその、まるで仲間でも見るような優しい目を止めなさい!!」

「そんな!?佐倉先生は仲間だと思ってたのに!?」

「はあ??その仲間って何よ??何の仲間よ??」

くそう・・・・!!!

ここまで来て、まだしらを切るとは・・・・・。


「奴らは全員、活動する上でのあだ名を持っています。今回の犯罪計画を立案したのは、『ニュートン』と呼ばれる者」

ニュートン、ニュートンねえ・・・・。

リンゴが木から落ちるのを見て、万有引力を発見した、あのニュートンのことか??随分とまあ、洒落が効いていることで・・・・・。

だとしたら、ほんと何様なんだか・・・・。


「で?そいつらに関して何かご存じのことはありませんか??ほんの少しだけでもいいんですけど・・・・」

「あの・・・・ほんとに分からない・・・です・・・・」

「そう・・・・ですか・・・・」

途端に肩を落とした小鳥遊刑事だったけど・・・・・。何か不都合でもあるんだろうか??


「まあ、とにかく以上だ。坊主、お前と、嬢ちゃんの活躍が無かったら、今頃、この事件は迷宮入りしていた。胸を張れ!!お前はそれだけのことをしたんだ!!」

「・・・・ありがとうございます」

「っと・・・!!そうだ、嬢ちゃん。こいつに聞きたいことがあるんだよな??」

茜が??一体なんだろうか??

ああ、その茜なんだけどさ?さっきから俺の顔をじろじろ、じろじろ見つめてくるから、ほんとに嫌なんだけど、どうにかしてくんないかな??


「あの・・・・??何か・・・・??俺の顔に付いてます・・・・??」


恐る恐る切り出したら・・・・。

ぺしん!!と額を叩かれたぞ!?

え・・・??何がしたいの??


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