表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
53/55

52お見舞い①

「・・・・・全く、随分と無茶するんだから・・・」

一体何が起こっているのか・・・??

分かるか??いや、分からない。

これは、俺の人生一の難問だ。・・・・あの事件よりも??

そりゃそうだろ!!


だって・・・・。


「・・・・いや、なんでお前がここにいるんだよ??」

「なによ!?居ちゃ悪いわけ!!???せっかく心配してお見舞いに来たって言うのに!!なんであんたはそう冷たいのよ!?」

「分かったから落ち着けって・・・・分かった、分かったから・・・・」

ここ、病院だぞ??それも、個室じゃないんだからな??

「もう・・・!!全く!!・・・・でも、今の病院って、お見舞い品の持ち込み駄目なのね・・・・。はあ・・・・それが分かってたら、果物なんて買って来なかったのに・・・」

あれ、随分と豪勢だったけど、もしかして自分のお金で買ったの??

その言葉は胸の中にそっと仕舞い込む。

何故かって??なんでだろうな??聞いたら益々ドツボに嵌まる気がしたから、かな??

「・・・・で??柏木、なんでお前は、ここに来たわけ??」

「へえ・・・??なんでってそりゃお見舞いに・・・」

ぽかんとした顔で、俺の病室の机に頬杖をつく彼女だったが・・・・。

「はあ!?お見舞い!!??何それ!!??冗談でしょ!!??お前が!??俺のお見舞いぃ!?うっそだあ!!!絶対、俺の寝首を掻きに来たんだろ!?俺が動けないのをいいことに復讐に来たんだろ!?」

絶対そうだ!!!

こいつに恨まれることはあっても、こんな風に優しくされるいわれはない!!!絶対に!!

「はあ!?何それ!?私はただ、あんたが約束を守って、ちゃんと私の無実を証明してくれたから・・・!!!」

「それだって、陥れたようなもんだろ??冷静に考えろ??お前、騙されやすすぎだぞ!?」

「・・・・あんたねえ・・・・。その自覚があるなら、せめてもうちょっと優しくしてくれてもいいんじゃない??」

ひぇっ!?怖いんで、果物ナイフを握らないでください!?

というか看護師さーーん!!!なんで果物は没収したのに、ナイフは没収しないんですか!!??

殺される!!殺されちゃいますよー!!!



「・・・・まあ、でも、ほんとに助かったわ。ありがとね」



そんなふうに感謝されるいわれなんて俺にはない。

だって、俺がしたことなんて、褒められるような物じゃないから。

全てを傷つけて、見えないもの、隠れていた物を掘り起こして、自分さえ良ければ、って突き進んだだけ。

その結果が、あれなら、悪く無いって、自分で自分を慰めているだけの卑怯者。

「・・・・そんな感謝されることなんて・・・・」

それでも、彼女は、首を横に振ってくれる。

「ううん。だって、実を言うと、女の子の中には、私が石川に売春しているって知ってる子が何人もいたんだ・・・・。ずっと、ひやひやしててさ・・・・。一応皆言わずにいてくれたけど、どこからか漏れやしないだろうか?今日にも警察に捕まるんじゃないだろうか?って・・・・・。でも!!あんたが、ああやって助けてくれたから!!!最初は望んで体を差し出したわけじゃないのにね・・・・。女って損な生き物だ・・・・」

こいつはこいつで、怯えていたわけだ。

でも、それは、自分の身から出た錆だろ?

今までの俺なら、そう切り捨てていたんだろうけど、なんでだろうね??今日この時は、冷たく斬り捨てることなんてできなかった。


「・・・・俺の恩人がさ」

「なによ急に?」

「いいから黙って聞けって」

「調子狂うわね」

あの時も、俺、こんな風に病院のベットで横になってたっけな・・・・。

「俺の恩人が残してくれた言葉があるんだよ・・・・」

あの時、あの人は何を話してくれたんだっけ??よく覚えていないんだけど、強烈に覚えている言葉が、たった二つだけあった。


『人間って、不思議な生き物でな・・・・・。他人を、そして自分を傷つけずにはいられねえんだよな・・・・・。だからな、坊主。死にたくなったら笑え。思いっきり笑い飛ばしてやれ・・・・・。そんで生きたくなったらな・・・・・・』


「思いっきり泣け」

「・・・・・何よそれ・・・??」

「さあね??俺もずっと考えてるんだけどさ・・・・・。逆じゃないのかなって・・・・。でも、不思議となあ・・・・・」

俺が窓の外を見ているのは、ほんの小さな情けだ。

別に、慰めるつもりは無いし、慰める言葉も持たない。

実際、つい最近まで、人とかかわる一切を放棄して生きてきたんだ。家族すらも拒絶して・・・・。

だからさ・・・・・。

女の子が泣いてるときに、どうすればいいのか?なんて知らないよね??


「・・・・うぅっ・・・!!・・・・・っひっく・・・・!!!・・・・うぅ・・・・!!!」

別に、俺のベットシーツが涙で汚れるくらいなら、勘弁してやるか。

こいつもこいつで、随分と気を張り詰めてたみたいだしな・・・・。



「そういえばさ・・・・」


まだ、目は赤かったけど、さっき泣いたことは全くなかったことにするみたいだ。まあ、俺もその方がいいんだけどな・・・・。

 「なんだよ??」

「委員長、じゃない、成瀬流美ちゃん??彼女、どこかの誰かさんが下敷きになって守ってあげたおかげで、大事には至らなかったんだって」

「へえー・・・・」

「あの時意識が無かったのは、ショックで気絶したんだろうってさ。精密検査を受けて、何ともなかったみたいだからもう学校にも復帰してきてるけど・・・・」

・・・・そこで切るなよ!?気になるだろ!?

「ふーん・・・・」

でも、敢えて俺は気になっていないふりをする。だってそうだろ??今更俺が、気にしたところで、何様だ?って言う話だよ。

「まあ、元から大人しくて友達も少ない子だったけど・・・・。あの騒動から、独りぼっちになることが多いみたいで・・・・よく図書館にいるみたいだから、気になるんだったら、復学した時に会いに行ってみれば??」

「・・・・・どの面下げていくんだよ・・・・」

「うーん・・・・そうねえ・・・・・。ごめんさない?って言ってみれば??そしたら案外簡単に許してくれるかもよー??」

はあ??この世の全員が全員、お前みたいに脳みそ空っぽだったら全然苦労しねえのにな。

そんなわけねえだろうがよ。全く!!

「・・・・はあ・・・・」

「なによ??信じてないわけ??ふーん・・・・まあ、別にいいけどお??」

なんだその腹立つ顔??

にやにや笑いやがって!!なんだ??言いたいことがあるなら言えよ!!

「うぜえ・・・・」

「あ!?何よその顔!?全然話聞く気ないじゃん!?うわー・・・!!あんたってホント馬鹿なのね!?そんなんだから・・・・!!!」


彼女の言葉は、そこで終わってしまった。

俺としては好都合だけれども、こいつにしてみれば、最悪の展開だろうね。


何せ・・・・。


「おや、おや?これは、これは、子猫ちゃん??一体今日はどうしたのかな??こんな男子高校生の病室に、一人でお見舞いに来て、挙句、カーテンも閉め切るなんて??」

先生・・・・。なんかその台詞、悪役っぽいぞ??

「出た!?佐倉先生!?・・・・っくっそ!!しかもその妹ちゃんまでついてくるとは・・・ここは分が悪いか!?」

何をぶつぶつ言っているんだか・・・・。

「出直すか・・・・!?いや、ここで逃げるなんて・・・・!?」

随分と逡巡しているようだけど、椅子だけは絶対に手放さないのね??

二つしかない椅子の片方を堂々と占有して、一切腰を上げる気はないその精神は、褒められるものだと思うよ??


「すまねえが、お嬢ちゃん。ちょっとの間、席を外してくれねえか??」


しかし、その努力も虚しく、犬飼さんが顔をのぞかせた瞬間、「あ!私、用事を思い出した!!じゃね!!」と捨て台詞を残し、早々に消えていってしまった・・・・。

まだまだ、犬飼さんのことは苦手なようだけど・・・・。

「ふん!!ようやく消えたか!!この邪魔者め!!」

・・・・だから、それ、まるっきり悪役の台詞よ?先生??


「大丈夫か坊主?」

「え?ああ。元気も元気。ぴんぴんしてますよ。・・・・・・左足以外は、ね」

釣られてみんなが視線を向けるその先には、歴戦の戦士よろしく、ギプスと包帯でぐるぐる巻きに固定され、天井から吊られた俺の左足が。

「全く・・・・。俺はいつお前に、建物の三階から飛び降りろって言ったよ・・・・」

「そうしなきゃ犯人が分からなかったから仕方なくですね・・・・」

「分かった、分かった!!もういい、もういい!!!へん!!どうせ俺が悪いんだよ!!全部、全部、俺が、悪うございましたよ!!」

なんだ??なんでこの人こんなに荒れてるんだ??

こそ、っと耳打ちして教えてくれたのは、事件の後、改めて名前を聞いた、犬飼さんといつも一緒にいる若い刑事さん。

名前は・・・・確か・・・・小鳥遊さん??だったっけ??小鳥遊誠さん??

「犬飼刑事、本部長に呼び出されて、こってり絞られましてね。事件解決のばたばたがようやく落ち着いて来たでしょ??」

まあ、あれからもう早三日経つからね。

「マスコミへのアプローチとか、教育委員会への根回しとか、世間への申し開きとか・・・・。もう色々大変で、実は私たちも三日ほど寝てないんですよ」

「それは、それは・・・・」

それ以外になんて声をかければいいの??

「で、ようやく落ち着いたと思ったら本部長に呼び出されて、説教、説教、説教・・・・。説教の嵐でしたよ・・・・」

この人のこの感じだと、逃げたな??

「まあ、私途中から席を外してて、最後までいなかったんですけど」

やっぱり!?

「あとで聞いたら、給料減俸らしいです・・・・。奥さんがそれに怒っちゃったみたいで・・・・辛い立場なんですよ・・・・・。家でも、職場でも・・・・」

「こら!!誠!!無駄話してるんじゃねえ!!!」

虫の居所が悪いようで・・・・・。

・・・って!?奥さんいたのかよ!?けっ!!だったらもう人生勝ち組じゃねえか!!


「今日は、お前に事後報告だな。そのために来たんだが、今日は大丈夫か??」


「ええ。まあ、何とか・・・・。あの時は、お見苦しいところをお見せしました」

「別に、俺が、お前の事情に立ち入るつもりはねえけど・・・・。まあ、流石にあの様子を見て、な・・・・。じゃあ、事情聴取、とは行かねえだろ」


実は、病院に運び込まれて、ただ骨にひびが入っているだけで、二週間ほども安静にしていれば治るって聞いて、念のため検査入院したんだけどさ。

その時、この四人がいたんだけど・・・・。

あの後、来たんだ・・・・・。

顔も見たくない、声も聴きたくない、あの人が・・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ