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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
47/55

46全校集会は何がために??

過去、これほどまでに学校に行きたくないと思ったときがあっただろうか??


・・・まあ、しょっちゅうあったんだけどね・・・。


でも、のど元過ぎれば熱さ忘れる、じゃないけれども、人って不思議な生き物で、過ぎ去った過去は、どれだけその時に、嫌だな、と思っていたとしても、案外思い返してみれば小さなことだったように思うんだ。

そうやって、嫌な記憶っていうのを、どんどん、どんどんと忘却の彼方に放りやって、ようやく、未来へと進んで行くんだと思う。

だから、いつの日か、もっと大人になった時に、随分とあの時、無茶したな・・・、って笑える時が来るんだろうか??

来るんだろうな。

そう思わなければやっていられない!!

何故なら、もう、犯人以上に、警察が、いや、俺自身が崖っぷちに立たされているのだから。

しかも、あれだけきっちりと、校門前に集まっている報道陣のインタビューには、一切答えるな、と言うお達しが下っているにもかかわらず、だ。

それがまだ、学校側にとって、有利になる内容ならいざ知らず、あれだけのことを言ったんだから、どうなるか、想像は付く。

そして、そんな想像なんて、簡単に飛び越えて、最悪の方向に向かって行くだろうことも、想像できるから哀しい・・・・。


「はあーあ・・・・。憂鬱だなあ・・・・」

できるだけの準備はした。あとは、為るようにしかならない。

何度もそう思って、自分を納得させているんだけど、やっぱり無理だな・・・・。

校門前に来ると、どうしても足がすくんでしまう。

今日は、敢えて、報道陣がいない、早めの時間帯を狙ってきたから、学生の数も疎らだけど、それでも、やっぱり嫌なものは嫌だ。


「ふうー・・・・。まあ、しょうがねえか・・・・。よし!!」


できる事なら今すぐここから逃げ出したい。どこに?という当てはないけれども、本当に、どこか、誰も俺のことを知らない世界に消えてしまいたい。

だから、ようやく踏み出した一歩すら、やはり、震えるのはご愛敬だろう


そして一歩さえ踏み出してしまえば、もう一歩、二歩と進めるんだ。

さあ!!行くぞ!!

意を決して、踏み出そうとした俺に、


「見つけた!!てめえ昨日連絡無視しやがったな!!??」

ぐい、と肩を掴まれ、無慈悲にも出鼻をくじかれてしまった。


「げっ!?」

この声の主は・・・・。そして、この怒りは・・・・。


犬飼さんだ。事の発端である刑事さんが、険しい顔で立っているが、なんでそんなに怒ってんの??

腹の具合でも悪いのかな??

それとも、腰でも痛いの??もしくは五十肩とか??

そんな現実逃避をしてみたが、やはり、彼が言いたいことは一つのようで。


「なんでお前、あんなこと言ったんだ??」

怒りを抑えたその語り口に、思わず、びびって腰が引けそうになるが、それでも、しらを切ることにしてみた。


「え・・・??何がですか??」

「何がですか?じゃねえんだよてめえ!!!??お前自分がしたことの意味、分かってんのか!??ああ!!??」

怖ーい・・・・。やっぱりこの人、前職はやくざか何かでしょ??もしくは、実家が、暴力団とか。

え?違うの??刑事さん??嘘だああ。絶対構成員でしょうよ。


「だって、ああしなきゃ先に進まないんだから、しょうがないだろ??」

「てめえふざけてんのか!?自分がやったことの責任取れんのか??ああ!!??」


責任ってなんだ??首でも括れと??もしくは、もう一度、公共の電波を使って、謝罪しろと??そんなの視聴者が望んでないから、放送されるわけないじゃん。


「取れねえだろうが!?責任なんてよ!!周りの大人に甘えてるだけの糞餓鬼が!!!調子に乗ってんじゃねえぞ!?おお!?」

ここまで言われると、流石の温厚な僕もカチンと来ますよ??

「さっきから聞いてれば、好き放題言いますけど、じゃあ、逆に言いますね?だったら、真犯人、捕まえてみろよ!!??できねえから、俺に頭下げてきたんだろ!?そっちこそ、立場ってものを理解してるのかよ!?甘えてんのはそっちだろうが!!??」


出るに任せて啖呵を切ってしまいましたが・・・・。正直、怖ーいですよ??

今、僕、滅茶苦茶足震えてますし、何なら、呂律も回ってなかったと思うんですけど、大丈夫ですかね??


しかし、すぐに拳が飛んでくるんじゃないか!?と身構えてみたが、予想に反して、


「・・・・お前に任すんじゃなかったよ・・・」


随分とトーンダウンした弱気発言が飛び出ましたけど、それは、正直俺も同じ意見だ。だけど、諦めるのは、まだ早いんじゃないのか??だって、俺がまだ諦めてないんだぜ??

「そうか。一つ反省点が見つかって良かったな」

「茶化すな。正直なところ、どうなんだ??」


正直に言えば、負け戦だ。

でも、それを言っても、こいつは、逆に落ち込むか、もしくは激昂するだけだろ??なら別に、嘘も方便じゃないけど、本当のことを話す必要は無いんじゃないか??

「なんとか、勝てるように努力をしているところです」

「勝てる可能性があるのか?この賭けに?」

賭けって言っている時点で、もう、運に身を委ねているじゃねえかよ!?

それ、宝くじ買って、ああ、これで一等当たったら、仕事辞めて、家のローン返済して・・・・、って、現実逃避している中年男と変わんねえぞ??


「勝てるように努力している!!」


何度も言わせんな?

負け戦、なんだよ。あんまり追及されるとぼろが出ちまうだろうが。

「とにかく、もうここまで来たらじたばたするのももう意味ないんだろうから・・・・。お前が何をするのか?どこまで、行くのか?見ていることにするよ」

「それは結構。重畳、重畳」

偉そうになってしまったか??まあ、最初から、諦めろよ、って思うんだけど、こいつらにとっては死活問題。そうもいかないんだろうな。


「もういい。行け。ただし・・・・。俺に後悔させないでくれよ??」

何様だよ、お前?警察がそんなに偉いのか??


「あのさあ?先に言っておくけど・・・・。もし、俺が失敗したら、確かにあんたらの立場も危ういんだろうけどさ?俺のことを考えたことってあるの??」


無いんだろうな?

だから、逆に、俺にそう問いを投げかけられて、言葉に詰まってしまうんだ。

だから、何も考えずに、そんな馬鹿なことが言えるんだ。

だから、無責任に、頼むって、あの姉妹のために、尽力してくれって、そう頭を下げられるんだ。


だってそうだろ??お前らも社会的立場が危うくなるかもしれないけど、俺だって、学校内での立場ってものが無くなるんだぜ??

教師からの精神的、肉体的体罰、同級生からの陰湿ないじめ、嫌がらせ。

頼る当てもなく、孤立した孤独な人間。どれだけ強かろうが、世界が敵だ。どこまで行っても味方なんて存在しない。

そんな経験があるか??無いだろうな。普通の人間には。

ただし、経験したことがある俺だからこそ、はっきりと言えるんだ。


そんな状況に直面した時、どうしようもなく、人は崩れてしまう。


もし、脆く、儚く、崩れ去った時に、俺が、自ら命を絶とうとしたら・・・・??


お前は、罪の意識に押し潰されずに済むのか??


敢えて、それを口に出すことはしない。

まあ、騒動が起こるまで、ゆっくりと、考えてくれ。俺の言葉の意味を。

たっぷりと時間はあるから。始業の一時間前に来てしまったから、まだまだ、十分に時間はあるから・・・・。




教室の中に入れば、やはり、ほとんど人はいない。数人の生徒がいるだけだが、なんでこんなに早く来ているの??

学校が始まるのって、あと一時間先だよ??

机にノートを広げて盛んに何か勉強しているみたいだけど、学校でやるよりも家でやった方がはかどらない??

もしくは、図書室とか。

まあ、人それぞれだから、そんなことに文句を言うのはおかしいんだろうけど、一人だけ。

言わせてほしいんだ。

受験生だから、学校に朝早く来て、勉強するのは分かる。そのやり方に賛同はしないけど、心情は理解できる。


ただ・・・・。


ただ!!一人だけ、本を読んでいる女子生徒がいるんだけど、それこそ家でよくない!?

こんな朝早く学校に来てまで、何を読む必要があるの!?

絶対集中できないから!!

逆に集中しすぎて、時間を忘れて没頭してしまい、遅刻しない様に、とかか??良く分からん!!

ええっと・・・。確か学級委員長だと思うんだけど・・・・。名前は何だったか・・・??忘れたから別にいいや。


あれ!?でも、あの子が読んでいる本って、俺が図書館で探してた、夏目漱石の『こころ』じゃあありませんか!?

もしかして、あいつが、二週間連続、独占レンタルしやがった奴か!?畜生!!あいつのせいで、俺の課題、ちょっと面倒になったんだぞ!?


・・・・まてよ??と、言うことは、もしかして、彼女も、『こころ』を題材に感想文を書くつもりなのか??

ふーん・・・??なかなか、目の付け所がいいじゃあないかい。俺以外に、そこに気付いた奴がいるとはな。まあ、それなら許してやろう。



ああ・・・・。見ない様に、見ないようにしてきたけど、どうしても気になる張り紙が黒板に貼られているな・・・・。



『全校集会のお知らせ


今回、各局報道へ、嘘の情報を流し、学校関係者を混乱せしめ、かつ、社会的な地位を貶めた生徒が遺憾ながら出てしまった。


今回の事態を重く受け止め、もう一度、生徒一人一人が、不完全な情報に踊らされない様に、そして、ほんの悪戯心で、このような悪質な偽情報を流す者が、もう二度と現れない様に、今一度、全員で一致団結するために、緊急集会を開く。


おって、生徒は、各担任の指示に従い、第一体育館へ、指定の時間に集合することとする。』



まあ、こうなるだろうな、とは思っていたが、逆に上出来だ。最悪でもあるし、裏返せばむしろ最高でもある。

絶対に何もない、と言うことは無い、とは思っていたが、この事態は、想定していた中でも、最も都合がいい事態でもあるかもしれない。


ま、逃げ場のない中で、どれくらい上手く立ち回れるか、が問題になってくるんだけどね?

さてと、俺も気持ちを落ち着けるために、現実逃避の意味で本でも読んで待ってますか。

自分のことは棚に上げて、良く言うよ、とも思ったけれども、こんな気持ちで勉強なんて手に付くわけないじゃん??



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