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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
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44すべてを巻き込んで、事態は動き出す

「はあ・・・・。先輩、暇です」

もう何度目になるか分からないため息を、隣に立つ、後輩カメラマンが吐き出すが、それは、俺だってそうだよ。

「仕方ないだろ。俺たちの仕事はこれなんだから」

別に、自分の職務に誇りを持っているわけじゃあない。ただ、カメラが好きで、何かを撮影しながら、それを仕事にできたらいいなあ、と思って、テレビ局に入社したけれども、内実は、労務省も真っ青の超ブラック企業だ。

人手不足、事件が起これば、問答無用で出動、荷重勤務に次ぐ荷重勤務。事件が終息するまで、実際に使われもしないのに、永遠に撮影してなければいけない・・・・。

数え上げればきりがない。

初めのうちは、自分が撮影した番組なんかを見ていたけれども、度重なる重労働に耐えかねて、今となっては、この重いカメラを担ぐのすら嫌で嫌でしょうがない。

「でもですよ!!でも、毎日、毎日、良く飽きもしないで、こんな地元の進学校の正門前で張り込んでますよねえ・・・・」

「それを視聴者が望んでいるってことだろ・・・」

「しっかし・・・・。学校ってのは本当に面倒な所ですねえ・・・・。許可が無ければ中に入ることすらできないんですから・・・」

「国有地なんだから当然だろ?」

もっともらしいことは言っているが、俺も、うんざりしてきているのは事実なんだ。でも、それを言葉にしたら、本当に投げ出してしまいそうになるから、必死に自分に言い聞かせていると言うのにこいつと来たら・・・。

「はーあ・・・・。せめて中に入って、一体どんな現場だったのか?それくらいは見せてくれたっていいでしょうに・・・・」

「そんなの見てどうするんだ??」

「ええーー!!??先輩も聞いてますよね??今回の事件・・・・。密室殺人なんじゃないか??って随分噂になってますよ!?そんなの滅多にお目にかかれる物じゃないんですから!!一生に一回くらいは見てみたいじゃないですか!?」

まあ、言わんとしていることは勿論分かるし、正直に言えば、俺も同じ気持ちだが・・・。

「まあ、許可は下りないだろうな」

「ですよねえ・・・・」

上が散々交渉しているそうだが、警察は情報の開示を一切してくれないそうだ。普通ではありえないこと。だからこそ、皆こぞって噂しているのだ。


・・・難事件なのではないか・・・??と。


そして、どこからか、誰かが、密室殺人らしいぞ?と噂を聞いて来たそうだが、どうやらその通りらしい。

そして、不可解なことに、学校側も、教育委員会も、今回の被害者に関しての情報を開示することに異様に消極的なのだ。


何かこの事件には裏がある・・・・。


そう思うのだが、そこが見えてこない。

まあ、学校の敷地内で、教師が不審死を遂げた。これだけで、十分センセーショナルな見出しにはなるから、世間の注目度は高いんだが・・・。


「あーあ・・・・。せめて女子高生とか、カメラ映えする女の子を映したかったんですけど・・・・。あの初日の三人衆騒動以降、インタビューに答えてくれる学生がほとんどいないんですよねえ・・・・」

「三人衆って」

まあ、三人組だったから、三人衆か・・・・。

初日にインタビューしてたら、大名行列よろしく、軒並み生徒たちを連行していった、あの暴君三人衆。

江戸時代の封建社会かと思ったぞ・・・。

集まってる俺たちみたいな人間の中には、徳川三将軍とか、御三家とか呼んでる奴らもいるくらいだ。


「ほーんと、いつまでこんな報道を続けるんでしょうかねえ・・・??」

「終息するまで、だろうな。もしくは犯人逮捕、めでたく事件解決するまで、か?」

「それっていつですか??」

「さあな」

俺が分かる訳ないだろうに・・・・。「ですよねえ・・・」って、諦めたようにもう一度ため息を吐く後輩も、それを理解しているけど、聞かずにはいられなかったのだろうな。


「ねえ、先輩」

「なんだ??」

「自分、さっきから気になってたんですけど・・・・」


奇遇だな。俺も実は、ずっと気になってたことがあるんだ。十分前くらいからか??でも、敢えて気にしないことにしていたんだが・・・。


「あの、校内から、うちらのことちらちら見てる男子学生って、もしかして、テレビに映りたいんじゃないですか・・・??」

「そんなわけ無いだろうが。雰囲気を見れば、大体わかるだろ??思い切り猫背で、おどおどしてて、俯き加減。およそ、目立ったことは嫌いそうな、しかも、陰湿な雰囲気だ。あんなのカメラに映したところで、視聴者受けするわけないし、そもそも、顔出し無しだとしても、どうせ虐められっ子だ。何の情報も持ってないに決まっているだろ!!」

「ですよねえ・・・」

そう。先ほどから後輩の言うように、じいっ、とこっちを見てくる男子学生がいるんだが、何をしているのだろうか??早く帰らないのだろうか??

「あれ??でも、うちのディレクターが近づいていきましたけど・・・??」

「ほんとだな・・・・」

物好きや奴だ・・・・。

何をしているのだろうか??

あんな子供捕まえたところで、時間の無駄だと思うんだけど・・・??





「はーあ・・・。今日も特に進展は無し、ですか・・・・」

相棒の誠はそう言うが、俺にとっては、昨日面白い事実が判明したからそれで十分だと思うが、こいつにとってはそれでは不十分らしい。

「まあ、そう言うなや。こう見えても、被害者の石川が、女子生徒を金で買う屑野郎だって知れてよかったじゃあねえか」

「犬飼さん・・・・。やはり、今回の事件は、女子高生がらみなんですかねえ??」

言外に、なんで怪しい容疑者を連行しなかったんだ?と言われている様で、少し癪だったが、約束しちまった以上はしょうがねえ。

「おい、誠、そこにある胡椒取ってくれや。このチャーハン、少し味気なさすぎるわ」

昼を食べ損ねてしまったから、少し早めの夕食を摂っているんだが、毎日毎日、こんなのばかりだと、流石に体を壊すわな。

「はい、どうぞ。そもそも、なんで、その協力者?ですか??そいつと容疑者が話していた時に私も同席させてくれなかったんですか??もし同席していたら、最重要人物として、しょっ引いてこれたのに・・・」

「そうは言うがなあ・・・・」

何だろうな??俺もあの坊主に説得されたからか??なんだか、あの柏木とかいう女子生徒が犯人じゃない気がしてきたんだよな・・・・。

まあ、もし誠を同席させてたら大変面倒なことになっていただろうな。

何せ、こいつは、法科大学院を主席卒業した、いわばエリートなのだから。

何で警察なんかになったのか分からねえが、頭がよく切れる、だけじゃあなく、本当に口が回る。

もし同席していたら、柏木と言う生徒は、重要参考人として連行できていたろうが、真相は闇の中、だったかもしれない・・・・。

あいつも随分なお人好しだったから、そうじゃないかもしれないがね・・・。


そんなふうに物思いにふけっていた時のことだ。


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