42これは誰かのためじゃない。自分のため②
「え??じゃないわよ!!そもそも、あんたが、こんな風に回りくどい真似しなければ、こんなことにはならなかったじゃない!!!」
「え??じゃねえだろ!!目の前に、容疑者かもしれない、重要参考人がいるのに、無罪放免は流石にできねえだろ!!」
「えええ????駄目だった??」
「駄目!!絶対ダメ!!こんなことになったんだから、あんた責任もって、私が必ず無罪放免になるように努力しなさい!!!」
「はあ??てめえら青臭え餓鬼どもが何言ってやがんだ!?疑わしきは罰する!!そう法律でも決まってんだよ!!」
「え??逆じゃない??」
疑わしきは罰せず、ではなかったか??俺の勘違いか??
「どうしてくれんのよ!?あんたのせいで、私、このままじゃ捕まっちゃうじゃない!!」
「当たり前だろ!!大体なんだ!?嘘つくならもっと信ぴょう性の高い話にしろってんだ!!何が、宛先不明の封筒だよ!!しかも、何かも分からない、飲み物を被害者に飲ませただと!?てめえの身勝手のせいで、人が一人死んでんだぞ!?」
ぎゃあぎゃあ、と喚く二人は、このまま行くと永遠と平行線だ。
仕方ない・・・。まあ、俺のせいなんだけどね??
「犬飼さん!!」
やりたくはなかったが、柏木を背にかばうように、犬飼さんの前に立つ。
改めてみると、おっかない顔してるのな・・・。暴力団構成員って名乗った方がいいんじゃないのか??
「坊主。お前は最後まで邪魔するのか??あの二人のことはどうなるんだ??」
「誰の事??ねえ、あの二人って誰の事??」
それに対する俺の答えは沈黙。
「ほら見ろ?あの二人のことをお前はきっと見捨てねえ。だから、どんな手を使ってでも犯人を暴くって、そう決めたんだろ??なら・・・!!」
「だからこそ、ですよ」
「なに!?」
「彼女は犯人じゃない。犯人は別にいる。俺は、そう考えていますし、何だったら、この後どうするのか?それもしっかりと考えてますよ?」
まあ、やり方の是非は、問わないけどな。
「・・・・本気で言ってんのか??お前は、彼女が犯人じゃないと、本気で言ってんのか??」
「ええ。だから、彼女を署に連行して、徹底的に調べ上げる、なんて時間の無駄です。少しでも時間が惜しいのは、俺も、そして犬飼さんも同じことでしょ??」
じい、っと注がれる刃物のような冷たい目を、ゆっくりと受け止める。
怖いか、怖くないかで言えば、怖くはない。
最も怖いのは、何をしてくるのか分からない、暴力団。ヤンキー、暴走族。そういう、頭のねじが飛んでる人間。
そして、いくらその筋の人に見えようとも、犬飼さんは警官だ。
だったら、暴力も、恐喝も、あり得るはずがない。
・・・・無いよね??
「・・・・はあ・・・。分かった。お前がそこまで言うのなら、お前に任せる」
「ありがとうございます」
「ただし!!一週間だ!!!一週間の間に、真犯人を特定できなければ!!!彼女を連行して、徹底的に調べ上げる」
「ちょ・・・!?」
柏木が俺の後ろから抗議の声を上げようとしたが、うるさいのでそれを遮るように、
「一週間もいりませんよ。あと数日のうちに、必ず真実を白日の下に」
一瞬、ほんの一瞬だけ、犬飼さんの表情が緩んだ気がした・・・。
「そうか。それが間違いでないことを祈っているよ」
にやり、と思わず俺も口の端を歪めてしまう。
やり方は、問わず。
そして、ここに、真実への鍵が手に入った。
あとは、最後まで突っ走るだけ。
「ねえ!!ちょっと!!」
「・・・・うるせえ・・・」
あれ?こいつまだいたの??
「うるせえって!?あんたねえ!!!あんたが巻き込んだんだから最後まで責任取りなさいよね!!??」
「巻き込んだって・・・・。どっちかというと巻き込まれたんだが・・・??」
「うっさい!!一週間後に、私、重要参考人として逮捕されるとか、冗談じゃないわよ!?大丈夫なんでしょうね!?」
「ああ、大丈夫、大丈夫」
「軽い!?」
面倒だな、こいつ・・・。
何でまだいるの??俺は、考えたいことがあって、できれば一人にしてほしいんだけど??
「しょうがないから私も手伝ってあげるわよ」
「いや、いらん」
「しょうがないわね・・・・って!?要らない!?要らないの!?」
少しでも、要ります、ありがとうございます、って言われると思っていたのか??だとしたら、よほど頭が悪いんだろうな・・・。もう受験生だってのに、気の毒に・・・・。
ぎゃあ、ぎゃあ、と喚く彼女を、後ろに引き連れて、俺は、学校を後にした。
家まで送れ、だの、ちょっと寄り道しようだの、いちいちうるさかったんで、商店街の中で巻いたのはご愛敬。
ところで、俺、何か忘れている気がするんだけど、大丈夫だよね??
忘れてしまった、ってことは、大したことじゃないんだよきっと。
そう言って、自分自身を納得させたけど、あれえ??ほんとに何か忘れてるよね??




