表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
40/55

39助けて!!襲われる!?

これは賭けだ。

一種の賭け。

あの時の二人の態度。

石川の彼女に対する態度。そして、逆に彼女の石川に対する態度。

何より、一歩、体育教官室を後にした瞬間の彼女のあの豹変ぶり。

そして、校内の噂。

一番決定的なのは、どうして殺された石川が、あの夜、あの場所にいたか?という事実。


全てを加味して、たどり着いた俺なりの結論。

それが真実なのか、どうか。

それは俺自身にもわからない。

確証がない。

だからこそ、これは賭けなんだ。

そして俺は、その賭けに・・・・。


ぴたり、と柏木の足が止まった。


くるり、と振り返った彼女は、おもむろに口を開く。

「はあ・・・・。誰から聞いたの・・・・??」


やっぱりそうだったか!!

俺は賭けに勝ったんだ!!

飛び上がりそうになるのを一瞬堪え、

「さあな??」

と意味深に切り返すと、ことさらに不快そうな顔をした彼女が、つかつかと歩み寄ってきた。


「誰に聞いたかって聞いてんのよ!!!」

胸倉でも掴み上げそうな勢いで、啖呵を切ってくる彼女に、

「誰にも?」

「じゃあ、どこかで見たの!!??」

「いいや??」

「じゃあなんで知ってんのかって聞いてんのよおおおお!!!!!」


ここが校内ということも忘れて、金切り声で叫ぶ彼女は、正直に言って怖かった。

普段は、クラスの中でも整った顔立ちをしている方だと、思っていたが、憤怒の形相を浮かべ、詰ってくる姿はそれなりに迫力がある。


・・・嘘です。見栄を張りました。かなり迫力があります・・・。


「はあ・・・・もういいわ・・・・」

それでも俺が何も言わないとみると、地面に落ちた五万円をせっせと拾い上げる。


「普段は、もっとお金をもらうことにしているんだけど・・・・。口止め料と、この五万で勘弁してあげるわ・・・」

そうして、突然しゃがみ込んで、何をするのかと思ったら、俺の制服のズボンのベルトに手をかけるではないか!?

何だこいつ!?

何で突然、脱がせようとしてくるんだ!?


「お・・・!?おい!?何してんだよ!?」

「はあ??何って、脱がなきゃすることもできないじゃない!!流石に五万でさせてあげるわけにはいかないから、口でしてあげるわよ。ほら!暴れると面倒なんだから・・・!!こっちもさっさと終わらせて遊びに行きたいのよ!!」

「え・・・??いや・・・・あの・・・!!」

「って言うかなんで暴れるわけ!?やりたいからさせてくれ、って言ってきたのは、あんたの方でしょ!?」

そう言えばそうだった!?

今の今まですっかり忘れていました・・・・。

どうやって、自白させるか、に神経を使いすぎて、まさかの建前を忘れるなんて・・・!!


「た・・・、助けて!!!」

「はあ!?あんた助けてって!!自分が何言っているのか分かっているの!?あんたがやりたいって言うから・・・!!」


このままでは、おパンツまで脱がされてしまう!?

どうしてこんなにこの子って力強いの!?

駄目!?止めて!!ああ!!俺の大事なものが!!!このままだと!!!


「そこまでだ」

がらり、と入り口の戸が開き、姿を見せたのは、

「犬飼さーん!!助けてください!!」

「はあ!?刑事さん!!こいつ、私をお金で買おうとしたんです!!私を脅して、私の体を買おうなんて卑劣な・・・・!!!・・・・犬飼さん・・・??あんたもしかして・・・??」


「ほう?嬢ちゃん、勘は鋭いみたいだな??で?さっきの話だけど、被害者の石川先生と肉体関係にあった、と認めるんだよな??」


「・・・・ははは!!!何よそれ!!??最初から最後まで聞いてたってこと!?警察と通じてたってそう言うことなの??」

察しのいいことで・・・。

だが、残念なことにその通り。

彼女が来たときは、隣の部屋にいてもらった。

そして、彼女がこの室内に入ってから、気配を殺して、扉の外、耳を澄ませて聞いてもらっていたんだ。

まあ、途中どうなることかと冷や冷やしたけれど・・・・。

何とか目論み通りになって良かった、良かった・・・・。


「はあ・・・・。しょうがないわね・・・・。分かったわ。全部話すから、だから、売春のことは、できれば見逃してほしいんだけれども・・・・??」

この後に及んでなお、強かにふるまおうとする彼女を見て、感心すると同時に、一つ、確信したことがある。


「お前自分の立場が分かっているのか??」

犬飼さんは、彼女が容疑者の一人と決めつけている様で、

「お前には、被害者を殺す動機がある。最も怪しい容疑者の一人になったわけだが、そこらへん、理解しているのか??」

「私は殺してなんかいないわよ!!」

「どうだか!!」

「私はやっていない!!!」

「犯人は大抵皆そう言うんだ。とにかく、話を聞くから署までご同行願おうか?」

「離し・・・!!離して!!私は、本当に殺してなんかいないんだから・・・!!」

まるで犯罪者と決めつけ、連行しようとする犬飼さんに、俺は待ったをかけることにした。

このまま行けば、彼女は絶対に口を割らない、とそう確信したから。

「待ってください。彼女は犯人ではありませんよ」


「なに!?」


「あんた・・・??何言ってんの・・・・??」

彼女をここまで追い詰めたのは自分だ。

その自分が、彼女を庇っているのだから、呆然とするのは当然のこと。

だが、俺にとっては、柏木彩菜、という生徒のことなどどうでもいい。

正直に言ってしまえば、用事があるのは真犯人だけ。

そして、それが分からないから、こうやって、炙り出すために、どのような手段でも使うと覚悟しただけ。


だからこそ、彼女自身にも真実を語ってもらわなければ意味がない。


「犬飼さん。俺は協力すると言いました。ですが、これだけは言ったはずです。俺の好きなようにさせてくれ、と。もし、俺の好きなようにさせてくれなければ、俺は協力しません。そして、これが俺の頼みですが、彼女は犯人ではない。だからこそ、彼女の今までの売春行為には目を瞑ってもらいたいんです。そして、本当の事件の真相を、あの夜、彼女と、そして、石川との間で何があったのか?それを明らかにしませんか??」


「お前・・・・」


犬飼さんの中には、少なくない葛藤があるだろう。

目の前にいるのは、最も疑わしい容疑者。彼女自身の身の潔白を主張するのは、彼女自身と、そして、今の今まで協力的だったはずの学生たった二人だけ。

何をもって信じろと言うのだ?

証明しろと言われても、証明はできない。そんな主張を、どうやって信じろと言うのだろうか??

自分で言っておいてなんだが、もし自分自身だったら到底信じなかっただろう。

それなのに・・・・。


「はあ・・・・。分かった。お前の好きにさせることにするよ・・・・。どうせ俺たちには、お前以上の考えは無いんだからな・・・・」

「ありがとうございます」

俺が言うのもなんだけど、犬飼さんって相当なお人好しなんじゃない??


「あんた・・・・、何者なの・・・??」

まるで、見たこともない不思議な生き物でも見るような目で俺を見つめてくるが、俺にとっては、お前らの生態の方が謎すぎるんだが??

だって、よく考えてみろよ?

相手は、自分の所属していた部活動の顧問だぞ?

その上、いくら若作りしているからと言って、四十、五十代だろ??

それも、妻子のいる大人だ。なんで、そんな大人に金を貰ってまで付き合うかね??

って言うか、こちとら、今まで何とか、かんとかもらっていた小遣いをかき集めて五万に到達したって言うのに、お前は、五万ごときじゃ、安いと宣いやがる!!

 

・・・こいつと将来結婚する男が気の毒だな・・・・。


そもそも、俺は、トイレに一人で行くこともできねえ奴は、願い下げだしな。


「はあ?俺は、ただの根暗で、ぼっちで、しかも童貞の男子高校生だ。それ以上でもそれ以下でもねえよ」

「ぷっ!!何それ!?受けるんだけど!?」

はあ??一つも笑えねえよ。

何度も言うけど、お前らの笑いのセンス、ひどすぎるぞ??

「ははは!!!何あんた!?さっき私に言われたこと根に持ってんの!?何それ!?超可愛いんですけど!!」

はあ??一つも可愛くねえだろ。

可愛いってのは、子猫とか、子犬とか、そう言うのを見て思う感情だろ?もしかしてお前、日本人形見ても可愛い、とか言っちゃうんじゃねえのか??

・・・・いや?日本人形は視点を変えれば可愛い、か・・・??

「何が??」

「ぷっ、ははははは!!!その仏頂面とか!!って言うか、あんたよく見たら、意外と顔整ってんのね??今まで、くっらーい雰囲気しか見たときなかったから、ちゃんと見たこと無かったわ。いっつも猫背だし??うつむきがちだし??寝癖まみれだし??何より、声小さすぎて良く聞こえないし!!」

最後のは容姿関係ないじゃねえかよ!?

「ほっとけ!!」

助けてあげたんだよ??僕、あなたのこと助けてあげたんだよ??感謝してよね??

「はははは!!!!!そんな大声も出せるんだね??なんか不思議・・・」

俺は、一対一ならきちんと戦えるんだよ。

残念ながら、集団戦は苦手なんだ・・・・。


「もっと前から、あんたのこときちんと見てればよかったわ」


ちらり、と舌なめずりしながら、覗き込んでくるもんだから、思わずのけぞってしまった。

何か・・・・こいつは・・・・危険だ!!!??

助けといてあれだけど、助けなきゃよかったか!?


「あーあ、青春すんのはそこまでにしてくれや」


ぐい、と俺から引き離すように柏木の肩を掴んで、遠ざけてくれた犬飼さん!!ありがとう!!恩に着るよ!!


「ちぇ・・・!!おいおっさん!!邪魔すんなよせっかくいい所だったのに!!」

「おっさんって・・・・。まあ、お前らからしたら俺はおっさんかもしれねえけどな・・・」

地味にショック受けてるみたいだけど、おっさんなんだから仕方なくない??


それよりも、いい所ってなんだよ!?いい所って!?

そんな物騒な響き、生きてて今まで聞いたことねえぞ??

何だ!?いい所って!?


「ほら、早く話せ。お前と石川教諭の間に何があったのか・・・・。そして、それが事件と何か関わりがあるのか?全部きちんと話せば、今日、ここで聞いたことは忘れてやるからよ」

犬飼さんに促され、柏木は、一瞬、視線を彷徨わせる。


「なにから話せばいいのか・・・・。事の始まりは、ちょうど一年前の夏の話なんだよ・・・」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ