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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
39/55

38仕方ない。だって童貞だもの

結局話しかけられませんでした・・・・。



俺の馬鹿!!馬鹿、馬鹿、馬鹿!!!

たった一人の小娘にすら話しかけられもしないとは!!!いよいよ、自分に憑りついたトイレの悪霊がいい仕事してやがりますね・・・・。

うん!!きっとそうだ!!トイレの花男君のせいに違いない!!なんもかんも花男君が悪いんだ!!

あれ??花子さんって、女子トイレに出てくるから花子さん、なんだよね??

だから、男子トイレにいるのは、花男君、で間違いないんだよね??

まあ、良く分からないからどうでもいいんだが・・・・。

しかし、そんな冗談よりも、今は、こっちの方が、重要だ。それにしても、一人になりませんねえ・・・。


なんてことを言っていたら、もう夕方になってしまいました・・・・。


・・・くそっ!!ギャンブルになってしまうが、しょうがない!!

こんなこともあろうかと、準備していた策がもう一つ。

だが、確実性が無いから、できれば使いたくなかった手だ。あと、失敗した時の痛手が大きいから、使いたくなかったんだ・・・・。

まあ、痛手は最小限で抑える努力をしたつもりなんだけど・・・・。




ちらり、と視線を送れば、そこには教室に掛けられた壁時計が、ちょうど十六時を指す手前だった。


・・・・そろそろ頃合いか・・・・。


放課後になっても、未だに席に座り、まるで今からが本番だとでも言うように途端に元気いっぱい友達と話し始める彼ら、彼女らは、一体何の目的で学校に来ているのだろうか??


そんな彼ら、彼女らの横を通り抜け、人気の少ない廊下を歩く。

目的地はすぐそこ。

がらり、と開け放ったその教室には、誰もいない。

なぜ、この空き教室だけ人がいないのか?

恐らく、様々な理由があるのだろうけれど、三年の教室の近くだから、とか、普段は、解放されていないから、とか、いろいろな理由があると思う。


まあ、この教室が空くのは、ある決まった時間だけだからなんだけどね。

何故ってそりゃ、ここがカウンセリング室だからですよ。

実をいうと、ここは、佐倉先生に本来与えられた部屋なんだけど、保健の先生が産休を取った代わりに、カウンセリングを専門にした保健医として雇われた人なのですよ、あの人は!!

だから、普段は保健室にいることが多いのだが、稀に、心理カウンセリングを予約すると、ここが開くんだ。


そして、十七時からカウンセリングの予約をしたのは、誰あろう、俺だ。

その名簿を見た瞬間、佐倉先生は一体どんな表情をしたのだろうか??


なぜ先生が今いないかというと、犬飼さんに頼んで、取調室にとどめてもらっているからだ。


だから、ここに誰もいない空き教室ができるわけなんだけど・・・・。


本当に来るかな??


自信が無くなって来たぞ??


もし来なかったらと考えるとぞっとするが、なるべく考えない様にしよう・・・・。

大丈夫・・・。彼女は絶対に来るはず・・・・。

大丈夫・・・・。大丈夫・・・・・。


ゆっくりと深呼吸をしながら気持ちを落ち着けていると、入り口の扉が、がらり、と開き、そこから顔をのぞかせたのは・・・・。


「あんた・・・・誰だっけ??って言うか、なんでこんな場所に、わざわざ宛名無しの手紙を下駄箱に入れる、なんて古風な真似してまで呼びつけたわけ??」

ひらり、と彼女が放ってよこしたのは、俺が書いた手紙。

不機嫌そうに、髪をかき上げながら、そう問いかけてくる彼女は、同じクラスだと言うのに、どうやら俺の顔を覚えていないようだ。


・・・・今更傷つくほど、やわな精神なんかしてねえよ・・・。


どうせ、彼ら、彼女らにとって、俺なんて空気みたいなもんだ。

いや、空気以下かもしれない。

こちとら同級生に名前を憶えられていないことなんて、今まで何度も経験があるんだよ!!

「それも、こんな怪しい文面で呼び出すなんて・・・・。『あなたの秘密を知ったうえで、お願いがあります。放課後、十六時にカウンセリング室でお待ちしております。』って気持ち悪いんだけど!?」

くしゃり、と俺が渾身の思いを込めて書きつけた文を踏む彼女は、腕を組み、こちらを睨みつけてくる。


「何の用があるのよ!?ほら!!約束通り一人で来てあげたんだからさっさと要件を言いなさいよ!!!」


怖い・・・。ただ、ただ、怖い。

これを言えばどうなるのか??

もし見込みが外れていれば??

もし、相手が乗って来なければ??

俺が今からすることは、立派な犯罪行為そのもの。

もし、彼女が、俺の言葉を一言一句違えず録音でもしていたら??どうなるのだろうか??


それでも、言うしかない!!

これを言わなければ、全てが始まらないんだ!!!



俺は、ゆっくりと服のポケットから財布を抜き出し、自分の部屋からかき集めてきたありったけの札を彼女に向かって投げる。



「ここに五万円ある。柏木、お前がいつもやっているように、お前を買うから、やらせてくれよ??」



言った・・・・。言ってしまった・・・・。

もう後戻りはできない。

あとはもう突っ走るだけ。



「はあ??気持ち悪!!あんた自分が何言っているか分かってんの!?」

一瞬の間をおいて、嫌悪感も露わに叫ぶ彼女は、どっちなんだ?


どっちだ!?どっちなんだ!?

本心か!?それともやましい思いを隠すための怒りなのか!?どっちだ!?


「あんた・・・!!そう言えば思い出したわ!!同じクラスの、いつも一人ぼっちで、根暗で、気持ち悪い、男子でしょ!?」


いくらでも罵倒すればいいさ!!


「本当に童貞ね!!気持ち悪い!!お金を払えば女の子が言いなりになるとでも思っているの!?私はそんなに安い女じゃないのよ!!最低!!」


いくらでも罵倒して見せろよ!!

何を言われたって俺は、絶対に怯まないし、絶対に引かない!!


「だいたい・・・・柏木とか・・・名前呼ぶなよ!!気色悪い!!寒気がしたわ!!って言うかほんとキモイ!!ほんとに気持ち悪いからもう二度と近づかないで!!」


言うだけ言って、くるりと踵を返した彼女をそのまま行かせるわけにはいかない!!


このままでは、俺の明日からの学校生活が、破滅してしまう・・・。

それ以上に、何も真実は詳らかにできていないんだ!!


「柏木、今お前、自分はそんなに安い女じゃないってそう言ったよな??じゃあ、お前、石川に買われてた時はいくら貰ってたんだよ??」


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