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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
37/55

36それでも俺は・・・③

「はあ・・・、はあ・・・、はあ・・・」

駄目だ。ほんの少し走っただけなのに息切れしてしまう。


・・・・普段から、もう少し運動するんだったな。


こんな時に運動不足を痛感するとは。

今度から、休日くらいは散歩でもしよう。


「ふう・・・・」


ゆっくりと息を吐き出すと、清涼な冷たい外気が肺の中にゆるゆると入ってくる。

喉がひりつく。肺がひりつく。

そしてそれ以上に、頭がひりつく。


・・・俺はどうすればいい・・・??

どうしてそんなことを考えているのだろうか?なぜ俺は、そんなことを考えているのか?

今まで誰とも接点を持たず、傷つくのを恐れ、傷つけるのを恐れ、たった一人、孤独に生きてきたのに。


・・・いや、だからこそか??だからこそ、どうすればいいのか分からないのか??

それが間違いだったとは思わない。

それが、過ちだったとは思いたくはない。

だってそうだろう??そうしたら俺のこの十八年間は、全くの無駄だったってことじゃないか!?

そんなことは誰にも言わせない。

そんな否定は、誰にもさせてやらない。


・・・・じゃあ、俺はどうするんだ??

そもそも、よく考えろ。

どうして俺は、彼女の力になれると、そう考えているんだ??

だって、よく考えろ。

警察ですら容疑者の特定ができていないと言うのに、俺なんかが、できると自惚れるつもりなのか?


・・・・いや・・・・。目をそらすのはもうやめた方がいい・・・。

気付かないふりをしていた。

自信がなかったから、目をそらし続けてきた。

だって、自分に関係がないから。

だって、それを詳らかにするのにどうすればいいのか分からなかったから。

だって、警察に協力したところで何も利益が無いから。

だって、殺された石川に、恩や、情がある訳ではないから。

そして、何より、容疑者を特定したところで、事件のトリックが分からなければ、解決はしないから。


いろんな理由を付けて逃げてきた。

その事実から目を背け続けてきた。


でも、俺には分かることがある。

いや、常に第三者、常に赤の他人、どこに居ても集団に属することなく、常に蚊帳の外に居続けてきた俺だからこそ、見えてくるものがある。

偏見も、思い込みも、全てを置いて見てみる。そしたら、人間関係なんて、実は思っている以上に簡単なんだ。

茜には分からないだろう。

先生には分からないだろう。

警察には、決して分からないだろう。

だって、彼ら彼女らは、見てきていないから。

何処かも分からない真っ暗な部屋の中に突然放り込まれて、そこで、床に落とした一本のマチ針を拾えと、そう言われているようなものだ。

だが、そこが、もし、教室の中だ、と教えられたら?

自宅のリビングだと、そう説明を受けていたら?

そしたら、誰が、落とした可能性があるのか?その誰かの行動、移動経路、全てを考察すれば、意外と簡単に見つかる物なんだ。そういうものだろう??


・・・・でも、俺がそれをする理由は??メリットは??デメリットは??


理由・・・、理由か・・・・。


それはもしかしたら、あの姉妹は望んでいないことかもしれない。

例え、どれだけあの二人は、自分たちの過去を白日のもとに晒されようと、犯罪者ではなく、哀れな被害者だ。

だったら、あの二人は何とも思わないかもしれないではないか?

所詮、犬飼とかいう刑事に誘導されて、同情心を利用されただけなのだ。

あの刑事にとって、俺よりもあの二人の方が大切だから。

そのために利用できるものは何でも利用しようと言うんだ。


・・・・そんなことは分かっている。じゃあ、いいように利用されてやるのか??

メリットは何だ?

よく考えても分からない。よく考えれば考えるほどメリットはないような気がしてきた。

では、逆にデメリットは??

こちらは簡単だ。

校内に波乱を起こせば、間違いなく翌日からの俺の居場所は無くなる。

今はまだ、何とか持ちこたえている均衡が、ぶち壊しになって、俺はついに居場所を無くし、小学校、中学校の時のように陰湿ないじめにあうかもしれない・・・・。


・・・怖いか?と聞かれれば、はっきりと答えられる。

怖いね。ああ、怖いさ。

逃げ場もない。助けてくれる人もいない。頼れる人もいない。

そんな場所で、いじめられ続ける人間の気持ちが分かるか??

分かる、分かるわよ、と答える馬鹿な大人たちがいるが、はっきりと言ってやる。


いいや、それは絶対に、経験した人間しか理解できないだろう。


だからこそ、怖くないなんて、口が裂けても言えるはずがない。

寄ってたかって一人の弱者を虐め、そして、皆が、少しずつ、少しずつ悪意を共有するからこそ、それは途方もない大きな悪意となって襲い掛かってくる。

しかし、それを為す者達は、一人、一人の悪意は小さく、少ない物だから、それが集まればどれだけの力なのか理解できずに、そしていつの間にか麻痺する。


皆がやっていることだから・・・・。

私もやらなければ、今度は私の番かもしれない・・・。

なあに、大したことは無い。だって、少し、ほんの少し、『分からせてやる』だけだから・・・。


・・・・だったら、最後まで何もせずに傍観者に徹するか・・・・。

そうするしかない。それしかないんだ。

理解しろ。大人になれ。

大丈夫。あの二人は強いから。

だから、例え、どんな報道があの二人を襲おうとも、乗り越えて見せるだろうさ。

例え、どんな評価を世間から下されようとも、あの二人なら、きっと大丈夫・・・・。



・・・

・・・・

・・・・・

・・・・・・

・・・・・・・馬鹿か!!

そんなふうに、投げ捨て、諦めることが大人になるって言うことなら、俺は子供のままでもいい!!

 本当にそう思っているのなら、お前の目は目暗なんじゃないか!?

いや、そもそも、俺がこれからすることが、余計なお世話だったとしても!!!有難迷惑だったとしても!!

いや、どうせ今までぼっちを、孤独を貫き続けてきた自分自身、人の気持ちなんて吐くほど分からねえさ!!!

でも!!だからこそ!!!あの二人を、また孤独にするのは違うんじゃないか!!??



なんで被害者が俯かなきゃならないんだよ!!??

なんで迫害を受けた者が世間様から隠れるようにこそこそと生きなきゃならねえんだよ!!??

いつから日本は、世界は、そんなつまらない世の中になってしまったんだ!!??



だったら、俺だけは、あの二人の味方であり続けてやるさ!!!

どれだけ世界があの二人に牙を剥こうが!!

俺一人の力が何になるかも知らねえ!!ちっぽけな、ちっぽけなこの力が、何の役に立つかも分からねえ!!

それでも、俺だけは、立ち向かってやるよ!!あの二人がそうであるように!!


・・・・まあ、あと数か月もすれば卒業だ。こいつらとも、そして、この街ともお別れだ。

今まで十年近い歳月、散々虐めから逃げずに立ち回ってきたんだ。

いまさら、それが、数か月、たったの数か月続こうが、屁でもねえだろう!?


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