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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
27/55

26大体の情報が出そろった。さあ解いてみろ!!②

「あーあ!!しっかし、本当に・・・・。一体どうやって死んだのやら・・・。自殺も他殺もできない密室内で、どうやって人が死ぬってんだよ!!」


急に投げやりに資料を茜に放り投げた犬飼さんは、頭を抱えながら情けない声で、弱音を吐く。


「それを考えている」

「そりゃそうなんだろうけど・・・・」

「でも・・・・。なんですかね・・・??もし、他殺だとしたら、よほど頭のいい人が、入念に計画して殺害していますよね・・・??勿論、密室って言うのも意味わかりませんけれど、入り口に落ちていた睡眠薬って言うのも・・・・・。もしかして、被害者はどこか別の場所で殺されて、あそこに連れてこられた、とか・・・??」


別に探偵ごっこをする気はない。

それでも、ここまで巻き込まれてしまえば、気になるのは確かだ。

だから、思わず口を出してしまったが、少しばかり後悔する。出過ぎたことだったか・・・??


「無理だと思う・・・・。あれだけ完璧な密室じゃ難しい・・・・」

「だが、確かに坊主の言うことも一理あるかもしれないな・・・・。被害者が鍵を持っていたから、完全にその可能性を捨てていたが、もし、鍵を鉄格子の隙間から入れることができたら・・・・??」

「被害者のポケットの中に?それは無理」

「そうか?ワイヤーか何かで、上手いこと滑り込ませることはできないか??」

「うーん・・・・確かに犬飼さんの言う通り、それが一番可能性ありそうじゃないか?できるかできないか、で言ったらできなそうだけど・・・・」

あれ?なんだろうか・・・・??

俺の話から、議論が始まったぞ。

「でも無理だと思う」

「どうしてだ??」

「だってここに・・・。この資料を見ると、被害者は発見当初、ポケットの中に財布と、携帯と、家の鍵と車の鍵、そして小屋の鍵を入れていて、両方のポケットともに滑り込ませる隙間は無かったはず。その上、写真で見れば鍵の上に財布と携帯が覆いかぶさるような状態だからどう頑張っても、鍵を下に滑り込ませるのは不可能」

「そうかあ・・・・。俺は良い手だと思ったんだけどな・・・・。残念だったな坊主」


あからさまに落胆した犬飼さんだったが、俺の方は、少し不思議な気分だ。


「あ・・・・いや・・・・」


いや、決して嫌な気分ではない。むしろ、気恥ずかしい、そんな気持ち。

初めてじゃないだろうか?

自分の言葉がきちんと受け止められて、なおかつ議論の対象になることなど。


「じゃあさ!!どこか壁の一部を壊して、新しく作り直すとか!!そういう方法はどうだろうか!?」

自分が言うのもなんだけど、本当に自分が言うのもなんだけど・・・・無理じゃない??

「お姉ちゃん。それは絶対に無理」

「えー!?なんで!!??いい案だと思ったのに・・・・」

頬を膨らませ、不満をあらわにする先生に、茜だけでなく犬飼さんも呆れ顔だ。

「そもそも、プレハブ小屋っつっても、金属でできてんだ。壊すのにも専用の工具とかがいるだろうし、直すのだって溶接しなきゃならねえ・・・。溶接の痕だってありはしない。どう考えても不可能だよ」

「人が一人通れればいいんだよ!!??それくらいの穴だったら・・・・」

それでもなお、諦め悪く言い募る先生だったが、

「絶対に無理」

ぴしゃりと茜に否定され、項垂れてしまう。

見ていて気の毒だとは思うけど、弁解のしようがない・・・・。


「もしくは、睡眠薬で眠った被害者を、窓の下まで縄を引っかけて引っ張ってきて無理やり首でも締めるか?」

それって・・・・どうだろうか??できる・・・か??いや・・・・??

「・・・できない」

しばし考え込んだ素振りの茜は、しかし、わずかな間をおいてすぐにそう結論付けた。

「だがよ・・・・」

「いいやできないね!!絶対できない!!ああ・・・!!できないね!!」

先ほどの仕返しとばかりに否定し始めた先生を、

「ちょっと黙ってて」

一喝したのは茜だ。


しょんぼりした先生・・・・。こんなポンコツだったか??学校では、皆が憧れる、ハイスペック女性なはずなのに・・・・。


「できない。被害者に起き上がるだけの力がない。もし、そのまま引きずっても途中で首から縄が抜けるだけ」

「運よく起き上がれたら??」

「それは絶対に無理」

「うーむ・・・・・。じゃあ、最初から、窓の下に寄り掛かるように座っていたとしたら?」

「その体勢で眠っていたら?という仮定?」

「ああ。それならできるんじゃないか??ちょっと下に縄を垂らせばすぐに首に引っかかる!!そしてそのまま上方向に向かって吊り上げるように締め上げれば、首が閉まるんじゃないか!!??そうだ!!!その方法なら!!??」


段々と話しているうちに自信が付いてきたのだろう。

興奮したようにまくしたてる犬飼さんの勢いに押され、なんだか俺も、それならこの事件も説明できるような気がしてきた。

「それならどうだ!!??なあ!!??それなら・・・・!!すべての条件を満たすんじゃないか!!??」


「いや・・・できない」


まるで、燃え上がった炎に水をぶっかけるように。

雰囲気とか、その人の心情とか、一切を無視して、なお、茜は否定する。

まあ、今に始まったことではないだろうけどね。


「なんで!!??それなら・・・・!!?」

「それでも、策条痕の痕を見ると、やっぱり首を吊った痕にしか見えない。これは余計な力を加えたんではなく、被害者の自重で付いた痕」

「そんなの分かんねえだろうが!?」

「いや、検証するまでもない。絶対にそう。それに・・・・」

「それに・・・??」

「どうやって被害者を小屋の真ん中まで戻したの?」

「どうやってって、そりゃなあ??」

急にこっちを見ないでほしい!!

「うえ・・・!?あの・・・引きずる・・・・とか・・・??」

「床に引きずった跡がある?いや、無い。この身長の成人男性だったらまず間違いなく、床にも擦れた跡がつくだろうし、背中にも傷がつくはず」

「反語で否定された!?漢文の高等テクニック・・・」

「漢文とか・・・懐かしいなあ・・・・」

先生の学生時代って・・・・。って言うか現実逃避しないで!!この二人を止めて!!このままじゃ、白熱しすぎて・・・・!!

「・・・・はあ・・・・。いい手だと思ったんだけどな・・・。まあ、嬢ちゃんがそう言うなら無理か・・・・」

「意外と簡単に引き下がった!?」

「それはそう」

「そしてなぜそこで茜が胸を張る・・・・??」

それでいいのか刑事さん?と思わなくもないが、当の本人である犬飼さんは、まるで降参とでも言うように両手を挙げて、

「まあ、嬢ちゃんには、今まで散々協力してもらったからな・・・。間違っていた例がねえ・・・」

遠い目をする。

色々あったんだろうな・・・・。

その苦労を思うと・・・、涙が・・・・。別に出てこないけどね?


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