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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
24/55

23明治の文豪は時代を超えて愛される

授業はいつも通りで、普段と一切変わらない。

人が一人死んだんだ。薄情と言えば薄情なのかもしれないが、それでも学校側にも都合があって、教師にも授業の進行という都合があるのだろう。

体育の授業自体も無くなる訳ではなく、他の先生が、交代で体育教師の代行をすることとなって一応の終息を見せたわけだが、それでも生徒の方はそうもいかない。

いや、もしかしたら教師の方もそうはいかなかったのかもしれない。

俺たちには見せまい、見せまいと努力していただけで、どこか浮足立ったような雰囲気の中、それでも授業はいつもと変わらず進んでいく。



「さて・・・・」

図書館にやってきました。

何故図書館かと言うと・・・・。

まず、第一に人がいない!!

なんでみんな図書館を敬遠するんだろうな・・・・??確かに埃臭いしかび臭いし・・・・。本の背表紙とか取れかかっている奴もあって、中には、これなんであるの?って思うくらい分厚い良く分からない年表みたいなのとかもあるんだけど・・・・。

それでも勉強するときとか、ほんとに本を読むときとかは、利用したほうがいいと思うぞ?

ここの中は暗黙の了解で静かだし、(暗黙の了解って言うか規則だけどね?)ここに来るくらいだから馬鹿な輩もいない。

そして一人で孤独に座っていてもそれが目立たない。というかむしろここではそれがマイナーなのだ!!

どこに行っても独りぼっちの人間はマイノリティー。息苦しくて、肩身狭くて、世間様にごめんなさいって頭下げながら歩かねばならないのだが、ここだけは!!この空間だけは!!それが規則なのだ!!


唯一孤独でいられる空間・・・・。


教室も、見習って机ごとに仕切りでも付けたらどうだろうか?

そしたらもっと成績アップにつながると思うぞ?個別指導、個別指導。

んでさらに、教室の壁一面、本だらけにしてしまえばどうだろうか?図書室感がアップして、静かにならないだろうか??


まあ、とにかくだ。なぜ俺がここに来たかというと、朝言われた再提出用の課題を仕上げるために来たのだ。

何故家ではなく図書室かって?そんなの簡単だ。図書室には必ずと言っていいほど、明治の文豪が書いた本が置いてあるからだ!!

漱石然り、芥川然り、志賀直哉然り、太宰も、賢治も、由紀夫も選り取り見取り・・・・。

俺は、どっちかというと推理小説とかファンタジーとか、現代の作品を手に取る機会が多いから家にはないんだけど、ここにはあると言う素敵な場所なのだ!!

そして、どうしてこれを目当てにやって来たかというとだね・・・・。


皆さんもよく覚えておくといい!!


実は・・・・・。


読書感想文なんかを書くのに、彼らの作品は絶品だからだああああああああ!!!!


理由は三つある。

まず一番の理由は、とにかく一作品が短いのだ!!

漱石の「坊ちゃん」も「こころ」も「吾輩は猫である」も・・・・。

芥川の「人間失格」は・・・・少し長いかな・・・??

後は、賢治なんか最高だ!!

「銀河鉄道の夜」、「注文の多い料理店」・・・・。

「走れメロス」なんかもそうだったか??とにかく、彼らの作品の多くは、実は一般図書に直すと、百ページにも満たない作品も数多く存在するのだ!!

そして読みやすい!!

実に軽快、実に単純、そして、物語のテンポもよく、あっという間に終わってしまう。

だから、本を読む、という作業に掛ける時間が少なくて済む。

案外、この、本を読む、という作業が面倒だったりするのだ。特に俺みたいに普段から本を読みなれている奴だったら別に気にならないんだが、普段滅多に本を読まない人間にとっては、意外と本を読む、という作業は難しかったりするのだ。

眠くなったり、疲れたり、飽きたり・・・・・。

そう言うストレスから、解放されるには、彼らみたいに、短い作品を読むのが一番いい!!


・・・・まあ、星新一先生が一番短いんだけど・・・・。あれは読書感想文という物を書くには非常に難しい・・・・。


まあ、そして三つ目が時代背景だ!!

特に明治という時代背景、江戸の幕府体制が崩壊し、維新政府が台頭、鎖国が解かれ、どんどんと欧米列強の思想や物が流れ込んできた時代。

最も日本が激動だった時代だ。

およそ全ての物事が、大きなうねりの中で変化し、人々は必死にその流れの中で泳ぎ回っている、そんな時代。

だからこそ、様々な思想が生まれ、そして、今では驚くほどの法が制定されて行く・・・。

そんな時代だからこそ、少し勉強して、時代背景を踏まえた感想を書けば、そこそこ見栄えのする感想文になる!!

そして、その感想を最も書きやすいのが明治、という激動の時代なのだ!!

勿論第二次世界大戦下の日本も激動だったけど、その時には、国民に余裕なんて無いから、戦争一色。言論も、思想も弾圧され、自由な文化や思想を生み出すことなどできなかったろう・・・・。

そう言う意味では明治史と照らし合わせた明治文学が最も読書感想文を書きやすいのだ!!!


・・・・まあ、ただの私見です。参考にする、しないは皆さんの自由です・・・。


っと、ではでは・・・・。


「こっちに・・・・あれが・・・・。あれ??」


何と言うことでしょう!?


「『こころ』が無い・・・だと・・・・!?」

そん馬鹿な!?あれを借りる奴なんているのか!?図書館で読めばそれで済むのではないだろうか・・・・??

もしくは気になったのなら古本屋で投げ売りされているんじゃないだろうか??

それを買えよ。

・・・・まあ、それは我儘か・・・・。

「ええ・・・・??困ったなあ・・・・」

別に他の作品でもいいんだけどねえ・・・・。ほら?『三四郎』とか『風立ちぬ』とかさ?・・・・でもなあ・・・・。あれちょっと読みづらいんだよなあ・・・・。

ページ数が少ないのを優先的に読んでいたから、もう、ほとんどが、一朝一夕に読めるものではないのは事実なんだけど・・・・・。

まだ、『こころ』の方がよかったな・・・・。

だって、男女間の恋愛の話で、三角関係とか、そんな感じの作品だったはず?

それの方が、江戸から明治という時代の変化を如実に再現している!!って書きやすそうじゃない??

何となく、だけどね?

いやでもそうかあ・・・・。ええ・・・・??誰が借りたんだろ・・・・??


「あの・・・・」

「なんですか??」

図書室の入り口に座ってるおばちゃんに小声で話しかけてみると、存外に愛想がいい。

こういう人たちも佐倉先生と同じで、ほんとの先生ではなく雇ったパートみたいな人なんだろうな・・・・。

「夏目漱石の『こころ』って貸し出されてるんですか・・・・??」

「ちょっと待ってくださいね・・・・」

カタカタと年配なのに器用にパソコンで何かを調べ始めたおばちゃんは、すぐに顔を上げると、

「うーん・・・・、そうねえ・・・・つい一週間ほど前に貸し出されているから、もう戻ってくる頃だと思うんだけど・・・・・。この貸し出し簿に予約してもらえば、取っておくわよ??」

予約制度なんてあるんだ・・・・。

なにそれハイテク。

でも・・・どうしようかな・・・・??うーん・・・・。

「あら?でも、また予約されているわね・・・・。それも同じ子が・・・・」

なにそれ?怖いんだけど??漱石オタクでもいるんだろうか??

「成瀬流美ちゃん・・・・。三年生の子ね・・・・。A組って書いてるから、あなた知っているんじゃない??あなたも三年生でしょ??」


同じクラスの子だった。

成瀬・・・、成瀬・・・・、成瀬・・・・ね。知らんわそんな奴。誰それ??

成瀬流美??

そんな奴いたっけ??


「で?どうするの??」

「いや・・・・それなら仕方ないんで、他の本を探します・・・・」

「そうかい、ごめんね力になれなくて・・・・」

別におばちゃんが申し訳なさそうに謝る話ではない。

その・・・・、なんだ??よく知らん漱石オタクが悪いんだ!!全く!!古本屋で買えよ!!そんなに好きなら!!



「帰るか・・・・」




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