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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
21/55

20ほんとに天才なの??

・・・・・なんか・・・・。思っていたのと違う・・・・。

「どうした?入り口なんかで固まって??想像してたもんと違って驚いたか??」

「ええ・・・・まあ・・・・」

よく見てる。


それにしても、人が死んだ現場だと聞いていた。もっと陰惨な雰囲気が漂う、暗い場所で、日の光の差さない室内は、凍えるほどに冷たいのかと、そう思っていた。

なのに・・・・。

日が差し込む室内は、汗ばむほど温かい。

よく考えれば、朝晩は冷え込む時期だとは言っても、日が高いうちはまだまだ温かい秋の終わりだ・・・。

・・・って言うか、最近の日本っておかしくない?暑すぎる気がするんだけど・・・・。


そんなことは置いておいて・・・・。特に、通気の悪い、閉め切られたプレハブ小屋ともなれば、これくらいは当然なんだろうけど。


それでも、凍えるほど寒いとイメージしたのは、あれだ。なんかの超常的な・・・・。ほら、霊の怨念とか!!そう言うので、吐く息も白くなるほどなのかと・・・・。

・・・・まあ、霊感は皆無なんですけどね・・・・・。


それにしても人が死んだと言うのに綺麗だ・・・。

室内は、質素なもので、布団が何枚か入り口を入ってすぐの建物右奥に積み上げられているだけで、それ以外に物という物がない。

入ってすぐに正面と左側に窓が二つあるが、申し訳程度の大きさなうえに、鉄格子まではめ込まれていて、なんだか、息苦しい・・・。

ただし、これぞ現場!!とでも言うのだろうか?被害者が倒れていたと思しき部屋の中央に人型でテープが貼られている。

入り口を入ってすぐの目の前にもテープの跡があるのはどうしてだ・・・・??


ふむふむ・・・・。これによると、被害者は、入り口から入って左側の窓に頭を向けて寝ていた?倒れていたのか・・・・??

・・・北枕じゃん。不吉な・・・・。だから死んだのか?


だって、ねえ?この室内、確かに滅茶苦茶簡素過ぎて、本当に何もないんだもん・・・。本当に首に縄が巻かれていたの・・・??本当に密室だったの・・・・??

にわかには信じられない・・・・・。

だって、それじゃあどうやって死んだって言うんだ??

小説や物語でもあるまいし・・・・。


「ここに倒れてた?」

茜が、じっくりと室内を見渡して、一言。

「ああ。その通りだ」

「両手両足は?もがいた形跡とか、争った形跡とか」

「何もねえ。実にきれいなものだったよ。まあ、鑑識の結果次第だけど、もし、睡眠薬を飲まされていたとするなら、意識不明で暴れることももがくこともできずに、一瞬で死んだんだろうけどな・・・・。苦しまなかった、それだけが救いだわ・・・」


救い?なんだそれ?人の生き死にに、救いも何もないだろ?

あるのはただ、結果と原因だけ・・・・。

それとも、警察のような仕事をしていて、数え切れないほどの死に際を見れば、そこに意味や、価値を見出そうとしてしまうのかもしれないのか・・・・??

・・・・まあ、俺には分からないし、分かりたくもない・・・・。


「窓は開いていた?」

「ああ。だが見ての通り」

犬飼さんが窓際に近づき、内側から固定された鉄格子に触れる。

ぐっと思い切り力を入れて引っ張って見せてが、びくともしない。

そのまま、何度か、体重をかけ、引いて、押す動作をするが、それでも全く動かない。

まあ、随分と厳重に出入りが制限されていること・・・・・。刑務所も顔負けだな。

全く!!誰のせいだよ!!

・・・・・・・って!!俺らじゃん!!??俺らみたいな悪ガキのせいじゃん!!??


「その上、この鉄格子には、外して付け直した痕跡はねえ。だからもし、これが殺人だったとしても、犯人は、この鉄格子を外して、ここから出入りしたってことは絶対にねえ」

「入り口の扉は?」

「資料にも書いてあったと思うが、普段は鍵が、用務室で管理されていて、教員なら簡単に持ち出しできたそうだが、生徒が持ち出すことは難しかったろうな・・・。まあ、忍び込んで、持ち出すことは出来たろうが・・・・。それでも当日は、被害者と一緒にこの小屋の中だ・・・・。ここに被害者を連れ込むことは出来たろうが・・・・。一体どうやって外に出るんだか・・・・」

「ピッキングとかは・・・・どうですか・・・??」


別に探偵の真似事とかそう言うんじゃないけど、思いついたんで口に出してみた。

だが、それも警察の方では一度検討されていたようで、犬飼さんは首を横に振る。


「それも俺たちは考えたんだが・・・・。ピッキングすりゃ、僅かにでも鍵穴に傷が残るんだそうだ・・・・。よほどの腕前をしていても、穴の中にはほんのわずかに傷ができる・・・・。それも無かったそうだ・・・・。まあ、本当のところは鑑識の結果次第だが、俺にはどうもそんな簡単なことのように思えねえんだわ・・・・」

「・・・・そうですか・・・」

「もう一本の鍵は、建設会社の方で保管されていてな・・・・。むしろこっちの方が厳重だったみたいで、侵入して持ち出すことなんてできないそうだわ」


本当に・・・、なんて厳重な!!・・・・全く誰のせいだ・・・・。

・・・・・・・・って!!俺たちのせいじゃん!!??どこかの誰かが、ここに忍び込んで教師に隠れて大人数で酒盛りとか、いろいろやっていたそうだ。

・・・・・勿論俺じゃないよ?俺、友達いないし。

いやー。こういう時に友達がいないっていいね!!

強がりなんかじゃあない!!馬鹿言っちゃいけねえよ!!だってそのおかげで、疑われることだけはないんだから!!

・・・・・まあ、どこかの誰かの罪をなすりつけられたことは数え切れないほどあるんだけどな・・・・。

やめよう・・・・。虚しくなるだけだ・・・・。


「ここに落ちてたのが、睡眠薬入りのお酒?」


茜はいつの間にか入口の近くにしゃがみ込み、そこから部屋の中を見渡していた。

その足元には、テープの跡が・・・・。なんだろうって思っていたやつだ。

「その通りだ。なんでそんなとこに転がっていたのかは知らんが、もしかしたら、被害者が、無意識で転がしたのか・・・・。それか、入り口の近くで眠くなって、その時落としてしまい、本人は倒れるように部屋の中央へ、なのか・・・・」

「ふーん・・・・・」


ここで、俺流に一つ、事件を纏めてみよう。

部屋の中央で、絞殺された、もしくは首吊りした男の死体が一つ。


しかし、この事件を最も厄介にしている要素が三つ。


一つ、現場は完全な密室だった、ということ。

入り口には内側から鍵。窓には、鉄格子。

鍵も、鉄格子も無理やり開けられた形跡は無し。

そして、被害者が鍵を持っていて、予備も、盗まれていない。

これによって殺人の可能性が薄くなる・・・・。


二つ、中には自殺をすることができるような場所がない。

事実、部屋の中には、首吊りができる縄を掛ける場所がない。

梁?柱?そんなものは一切存在しない。天井に突起すらないんだ。

ましてや被害者は、首に罠を巻かれた状態で、仰向けに倒れていた。

これによって、自殺の可能性も無くなる・・・・。


じゃあどうやって死んだの?というところに、三つ目。


三つ、睡眠薬入りのお酒を飲んだと思われる。

では、この睡眠薬入りのお酒を誰が?何の目的で?いつ飲ませたのか?

もしくは、どうやって?被害者に飲ませることができたのか?


ここに、姿かたち、そして、意思さえ分からない第三者の介在がある。


だとすれば・・・・・。


「他殺だね」

「嬢ちゃん・・・!?なにか分かったのか・・・・!?」

「茜・・・・!?もしかして・・・!?もう事件の真相が・・・・!?」

え・・・・!?マジで・・・・!?そんな簡単に分かっちゃうものなの??天才か・・・??天才なのか・・・・!?


「いや、全く」


分からんのかい!!!??

思わず三人並んで転んでしまった。・・・・だったら思わせぶりな言動はしないでほしいんですけど・・・・。


「でも他殺なのは間違いない。自殺したにしては不審な点が多すぎる」

「そりゃそうなんだろうが・・・・・」


微妙な表情を浮かべる犬飼さんに、佐倉先生が、とりなすように、

「まあまあ。現場のことは、茜に任せれば、どんな些細なことからもきっと必ず真相を掴みますよ!!それよりも私たちは、犯人の特定をしましょうよ!!もし他殺だと茜が言うなら、十中八九間違いないでしょう?犯人に目星は!?」


よくこれだけ信じられるものだ、と思わなくもない。

いかに自分の妹だからと言って、いや、身内だからこそ、絶対の信頼ではなく、より厳しい目が必要になるのではないだろうか?

・・・・普段から厳しい目を向けられている俺は言うことが違うぜ・・・・。

信頼?そんなもの、とうの昔に、どぶに捨てて流してやったぜ!!


「まあ・・・・。それもそうだが・・・・・」


ちらり、と犬飼さんが俺に視線を向けてくる。

ははあ・・・。その視線の意味くらい俺だって理解できるぞ。

おい、部外者。空気読んで退散しろよ!!おらあ!!って意味だろ??はいはい・・・・。言われなくても分かってますって・・・。

むしろ、その手の視線に敏感な俺だ。分からないとでも??


「じゃあ・・・・俺はこれで・・・・」


そのまま背を向けて、この場から退散しようとしたが・・・・。

がし、っと、その背中を誰かに掴まれてしまった。


「・・・・え・・・?」


振り向くとそこには・・・・誰もいない・・・!?だと!?

・・・・・なんてことはなく。

茜だ。茜が、いつものように無表情のまま、制服の裾を引っ張っている。


「えっと・・・・??」

「深冬も。深冬がいないとダメ」

「お嬢ちゃんどうした?」

いや・・・・。俺だって正直場違いだって知ってますし、何ならもう帰りたいんです・・・・。だからその、早く消えろって言う冷たい目、止めてもらえませんかね・・・??

「・・・・・」

その上、沈黙だ。全く表情を変えることなく、いや・・・・。なぜだ?俺には、俺の目には、僅かに、ほんのわずかにだが、だめ?って小首をかしげているように見えるんだが・・・・。

「茜?深冬が必要なのか?」

「うん」

「今回の事件に彼が、どうしても必要なのか?」

「うん」

いやいやいや!!要らないでしょ!?え・・・・??俺いるの・・・・??

先生も何か言ってあげて!!

「という訳で犬飼さん!!!彼も、私たちの一員だ!!彼が一緒じゃなきゃ茜は捜査に協力はしないって!!!」

そんなこと言ってた!?・・・・うん・・・・。言って・・・・無い・・・よな??

「うん」

言ったし!!??え??そんなこと言っちゃっていいの!!??

「はあ・・・・・。ほんっとにお前らと来たら・・・・・」

ほら!!ほらほらほら!!!怒っちゃったじゃないのさ!!??もう!!警察を怒らせるなんてこの後どうなるか・・・!!??

「しょうがねえか・・・・・」

諦めないで!!??ねえ!!怒ったんじゃなかったの!!??なんで諦めちゃうの!!??

え??いいの??むしろそれでいいの!!??

「制服の上くらいは脱いでくれねえか?それでうろつかれたら、明後日から学校に来たときに、噂で犯人にされちまうぞ?そうなりたくなきゃ、ここで上着だけでも俺に預けろ」

「・・・・・はい・・・」

するすると上着を脱いだ俺も俺なのか・・・・??

流されるままに、ついてきた事件現場で、同じく流されるままに捜査に協力することになってしまった・・・・。

ただの、高校生で、しかも、友達ゼロ人、クラスの中でも空気と呼び声高く、その上、部活動も一切していない。およそ人とかかわることをしないこの俺が・・・・。

あと、彼女いない歴イコール年齢のこの俺が・・・・・。

なんでこんなことに・・・・??


「取りあえず、付いてきてくれ」

そう言うと、犬飼さんは、再びすたすたと先頭に立って歩き始めてしまった。

その足取りに迷いはなく、それでも、どこに連れて行かれるか知らないこっちとしては、不安だ・・・・。

また迷子にならないだろうか・・・・??って。



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