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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
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1事件は突然に②


誰か人が倒れている。

 

その一報を受けてやってきた巡査は、真っ先に現場を見て首を傾げた。

 

「こいつは・・・・どうなってやがるんだ??」

 

第一発見者は、この高校に勤める用務員の中年男性で、朝方、いつもの通り、出勤してきたときに、新校舎の着工現場にある管理人室の扉が、内側から閉められていることに違和感を覚え、窓から中を覗き見たそうだ。

 

そして、中に人が仰向けに倒れているのを発見した。

 

外から、いくら声をかけても反応がない。最初は寝ているのかと思ったそうだが、ピクリとも動かず、その上、首元に麻縄が掛けられているのを見て、慌てて警察に連絡をした、と言うが・・・。

 その判断に間違いはない。間違いはないのだが・・・・。

 

「どうしたもんかなあ・・・??」

 

今年で五十を迎え、もう、定年が見えてきた。叩き上げの官僚なんかとは違って、万年地元の派出所の巡査どまり。俺ごときでは、精々が万引きや痴漢、ひったくりや窃盗の逮捕が関の山で、殺人なんて経験がない。

 

ましてやこんな・・・・・・。

 

もう一度、入り口に手をかけるが、がちっ、と何かに阻まれるように扉のノブが動くことは無く、中から固く閉め切られており、外から開けることはできない。

 一応、第一発見者の用務員を呼んで、聞いてみたが、思っていた通り・・・。

 「鍵ですか?鍵は・・・・。確かこっちに・・・・。あれ??無いなあ・・・・??いやいや!!用務員室に確かに一本あったはずなんですよ??おかしいなあ??どこに行ったんだろうなあ・・・・??」

 「一本しか鍵はないのですか?」

 「いえいえ!!建設会社の方がもう一本お持ちでしたけれども、我々でも一本予備として保管していたので、持っているのですよ!!」

 「それならその建設会社の方に連絡をして、とにかくすぐにでも鍵を開けてもらわんことには話にならないでしょう?お願いできますか?」

 「ええ・・・・。それはいいのですが・・・・。今は何せ朝方の日が昇り始めて間もない時間です。いくら秋口で日の出が遅いとはいっても、それでも七時にもなっていないのですよ?今から連絡してもつながるかどうか・・・・」

 じゃあ、こんな朝方に呼び出された俺はどうなんだと怒鳴りたくはなるが、仕方ない。これが仕事だから。

何やらぶつぶつと文句じみたことを言っているので、とにかく急ぐように、もし先方がごねるようであれば、すぐに俺と変わるようにと言い聞かせる。

 

「しかしどうしたもんかなあ・・・・??」

 

ぐるり、と周りを回ってみたが、簡素なプレハブ小屋は、それほど大きくはない明り取りの窓が二つと、そして、今しがた何とか開けようと試みていた入り口の扉が一つしかない。

 では、明り取りの窓から入ることはできないのか?そう最初思わないでもなかったのだが、それでも現場を一目見て、諦めた。

 何せ、明り取りの窓には、どうしてか頑丈な鉄格子が嵌められていて、押せども引けどもびくともしないからだ。

 「そして、中に横たわる男性の首元には縄が巻かれ、ピクリとも動かない、と」

 俺の勘が、大して普段は働きもしねえ俺の勘が、何故だか今回ばかりは、良くないと俺に伝えてくるんだ。

 こいつはまずい。絶対に俺の手には余るぞ、と。

 「取りあえず、現場の保全と、救急車の手配と、そして、本部への応援要請か・・・」

 何とも情けない話ではあるが、なんだか今回ばかりは、本当に嫌な予感がするんだ。

 嫌な、嫌な予感が・・・・。

 

 「ああ。本部ですか?今こちらH市U高校で男性が倒れており、怪我の有無、意識、等確認できないような状況です。現場は、新校舎建設予定地に立てられたプレハブ小屋。入り口の扉には恐らく中から鍵がかけられており、外から中への侵入を試みましたができないような状況。至急現場への応援願います」

 肩にかけた無線で、すぐに本部へ問い合わせれば、答えが返ってくる。

 「・・・・分かりました。すぐに現場に応援の者を向かわせます」

 それで無線は切れてしまったが、これで、俺の肩の荷も下りたという物だ。

 「さて。本部の切れ者が到着するのが速いか・・・・。はたまた、鍵が到着するのが速いか・・・・。できれば、本部の人間であってほしいなあ・・・」

 


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