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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
19/55

18沈黙の捜査車両

気まずい・・・・・。なんでこんなことに・・・・??

「煙草、吸っても気にしねえか?」

「あ・・・・、うぇ・・・・、あの・・・・はぃ・・・」

「がはは!!!なんだそりゃ!?気にしねえのか、気にするのかどっちだよ!!」


本当は煙草の煙は苦手だ。だってなんか喉が痛くなるんだもん・・・・。

でもこの車は、この刑事さんの物だし・・・・。断り辛いし・・・・・。


「あ・・・・、大丈夫・・・・です・・・・」

「そっか。もし嫌ならすぐに嫌って言えよ?」

そう言うと、窓を少し開け、おもむろに懐から取り出した煙草に火を点ける。

「ふううーーー」

煙草の煙をうまそうに噴き出す彼は、どこからどう見ても、渋い大人の男だ。でも・・・・。


うん。やっぱり煙、喉に染みるなあ・・・・。

この感覚、絶対体に良くないんだろうな・・・・。俺の寿命、今日だけで三日は縮んだな・・・・。


「んで?杉谷深冬くん?だっけか??」

げっ!?こいつ俺の名前覚えていやがる!?あの二人が、特に茜が俺の名前を連呼するから・・・・!!

警察と教師に、名前を憶えられていいことなんて一つもねえのに・・・・。


「ええ・・・・。まあ・・・・」

「あの二人のこと、詳しいのか?」


え・・・??俺、何を聞かれてんの??


「えっと・・・・・」


詳しくは・・・ないよな・・・・?

先生の方は、年齢が・・・・不詳!!それに・・・。あとは・・・あとは・・・・。胸の大きさくらいか?知ってるのは。

茜は・・・・??十八歳、って言うことくらいで・・・・。あれ?そう言えば、天才だ、天才だって、二人が誉めそやしていたのに、大学すら通ってない・・・・。飛び級か??茜もそうだな・・・・。胸の大きさくらいか?うん。それ、詳しいのかな?

いやいや!!詳しいだろ!!非常にパーソナルな部分だ。

でも、恐らくだけど、まかり間違っても、そう言うことを聞きたいんじゃないんだろうな・・・・。


「そんなには・・・・知らないです・・・・・。昨日、初めてあそこに連れて行かれましたから・・・・・」

「なにいいいい!!??」

「うひゃあ!?ごめんなさい!?ごめんなさい!?」

「いや・・・・。別に怒ってないから・・・・。そんなふうに過剰に反応されるとやり辛えなあ・・・・」


だったら、最初からそう言えよ。

突然こっち振り返るし、大声出すし、怖いんだよ・・・・。

胸の話してたら、もしかして銃殺されてたかもな・・・・。


「じゃあ、嬢ちゃんたちに会ったのはつい最近なのか?」

いや、だからさっきそう言ったじゃん。改めて確認することなのか?

「へえ・・・・まあ・・・・」

何か下っ端構成員みたいな口調になっちまったぜ・・・・。

「なんだその話し方。下っ端か」


取りあえず早く学校に着いてくれえええ!!!

こんな気まずいんだったら、俺だけ電車で行きますって言えばよかったな・・・・。


「時に杉谷くんよ。あの二人についてもっと詳しく知りたいと思うか?」


もっと知りたいか?だって??

確かに、ほんの少し気になることはある。

昨日からあの二人と話している中で、違和感を覚える時が、僅かにでも存在するのは確か・・・。そして、そのことを知りたい、という好奇心は、当然俺も人間なので持ち合わせている。

でも・・・・。


「いえ・・・・特には・・・・」

「へえ?随分と冷たいんだな?あれだけの美人姉妹だ。男なら誰もが憧れるんじゃないのか?」

「そうかもしれないですね・・・・」

「じゃあ・・・・?」

「でもどうせ俺なんて、良いように扱き使われただけで、暇そうで、嫌だ、って断りそうになかったから、声かけられただけですよ・・・・。だったら、今回、用が済んだらそれで終わりです。これ以上あの二人にかかわることもなければ、積極的にかかわろうとも思いません・・・・・。どうせ俺とは住む世界が違うんですから・・・・」


「・・・・・お前、随分卑屈なんだな?友達いないだろ?」

「ほっとけ!!」


なんてこと言うんだ、こいつは!!今のが俺じゃなかったら、扉を開けて走行中の車内から飛び降りるところだったぞ!!

そしたら今日の夕刊の見出しは、『真昼の逃走劇!?警察車両から、高校生飛び降りる!?』か?・・・・うん。それ、俺の方が悪者だね?

・・・ふん!!俺に感謝するんだな!!


「うーん・・・・こんな話しておいて、何だけど、あの二人はそんな子じゃねえよ。あの二人をもっと信じな。・・・・まあ、お前がそんなんだから、あの二人も信用してるんだろうけどな・・・・」

何だよ最後の気になる一言!?

ああ!!嫌だ!!嫌だ!!どうしてこう、大人ってのは、勿体ぶった話し方しかできんのかね!!??

できんのかね!!??


「ん?なんだ??聞きたくなったか!!??聞きたくなっちゃった!!??」

うっざ・・・・。

「いえ・・・・べつ・・・・」

「教えなーーーーい!!!!」

益々むかつくやつだなおい!!??

「って言うか、おっさんは、あの二人のことよく知ってるんですか・・・?」

「おっさんじゃねえ!!犬飼さんだ!!」

「犬飼さんは・・・・・」

言い直してやったぞ?これでどうだ??

「なんかむかつく顔してんな・・・・。まあ、いい。あの二人のことか??」


って!!どさくさに紛れてもう一本煙草に火を点けるなよ!!!

もう一本吸い終わったのかよ!?肺活量とんでもねえ化け物並みなんじゃねえのか!?


「よーく知ってるよ。二人とも。よーく・・・・」

「そうですか・・・・」


今度は俺もそれ以上聞かなかったし、犬飼さんもそれ以上は茶化さなかった。

どうしてかって?そんなの簡単だ。

その横顔が、煙越しでよく見えなかったけれども、それでも、後悔と、哀しみと、憐れみと、そして怒りが、混ざり合ったような複雑な表情をしていたから・・・・。


それに、考えてみればその事実が、何よりも彼女たちの人生を物語っている。

だってそうだろ?普通に生きてて二十代になって間もない女性二人が、一体何の縁があって警察官と顔なじみになるって言うんだ?

例え、探偵だったとしても、それでも、あの二人に降りかかったであろう何かは、彼にこれだけの表情をさせてしまうものだったんだろう・・・・。




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