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孤独な迷探偵  作者: 高橋はるか
第一章 座禅しながら人は死ねるのか??
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9そしてぼっちはもう一人の自分に出会う②

「何じゃこれえええええええ!!!!!????」


思わず悲鳴を上げてしまったが、許してほしい。なぜかって??

ここは本当に事務所なのか?と疑うほど、いや、何ならここって誰でもいい、誰かいるのか?と疑うほどにゴミが散らかって、足の踏み場もないのだ。

視線すらも確保できない。

それくらいうずたかく積まれたごみ、ごみ、ごみ・・・・・。

天井にまで届かんばかりのごみに占拠された部屋の中で、がさがさ、がさがさと何かの気配がする。


「ゴキブリ!!??」

「おーい!!!茜えええ!!!!いるのかあああ!!??いないのかあああ!!??」

「先生!!先生!?あんまり騒いだら音に集まってきますよ!!??」

「うっさいゴキブリくらいで!!ただの虫だろ!?そんなのに男ががたがた喚くんじゃない!!」


随分と男前なことで・・・・。でもね・・・先生、忘れてると思いますけど、ここ、山奥じゃないんですよ?

コンクリートジャングルなんですよ!!??


「無理ですよーーーー!!だって俺・・・・ゴキブリどころかダンゴムシでも嫌なんだからあああああ!!!」

「微妙に気持ちの悪い虫の名前を出すな・・・・・。ええい!!ダンゴムシくらい!!」

「無理ですよおおおおおお!!!だって昔、小学校のころ同級生が俺の机の中いっぱいにダンゴムシとか百足とか蟻とか良く分からない虫まで・・・・・。ぎゃあああああ!!!!思い出したくもない!!!!!!」


子供は無邪気だ。そしてその無邪気さは時に驚くほど残酷になる。悪気がない分、凶悪。いや、悪気ならあったんだろう。でなければ、あれほどの量の虫を集められるわけがない!!


「随分と気の毒な・・・・。君の小学校には蟲毒の使い手でもいたのか・・・??だがいい機会だ!!これだけのごみ屋敷そうそうお目にかかれないぞ!!この機会に虫嫌いを克服するんだ!!」

「いやああああああああ!!!!!!止めてええええええ!!!!!!」


その時だった。


「うるさい」


ぽつり、と聞こえてきた声に、思わず固まってしまう。

中から聞こえてきた気がしたが・・・・。そんなはず無いよね??

こんなごみの山の中に人は住むことができるはずないから。


「いったいどうしたの・・・・?」


しかし、もう一度。今度ははっきりと聞こえてきた!!それも少女の声だ。

中に人がいるのか?だったら要救助者だ!!このごみ山から助け出さなければ!!

でも・・・・。意気込んだはいいけどどうやって・・・・??

今にも崩れそうなごみ山は、僅かに触れただけでぐらぐら、ぐらぐらと、不安定に揺れ、下手をすればこちらが遭難しかねない。

どうすれば・・・・!?

しかし、そんな葛藤をよそに、佐倉先生はというと、先ほどから「おーい!!茜出て来い!!!おーい!!」と呼びかけ続けている。

うるさいな・・・・、もう少し静かにしてくれないと・・・・。

「うるさい・・・・」

しまった!?思わず心の声が口をついて出てしまったか!?一瞬ドキッとしたが、そうではないようだ。

ほっとするのもつかの間、ずるり、とごみの隙間から何かが這いずってきたではないか!?


「きゃあああああああ!!!!!!????」

「いや、きゃああって!!!女子か!?」


隣に立っていた佐倉先生にそんなことを言われてしまったが、それどころではない!!というか佐倉先生には見えていないのだろうか!?

ぼさぼさで、伸び放題のごわごわした長髪。

糊でも塗っているのか?と疑うほどにべたべたとして、艶が無い。

そして、粗末なぼろきれのような半袖シャツを身に纏い、ずるずると這いずる手足は、血色が悪く、がりがりで、幽鬼のようではないか!?


「先生!!!先生ええええええ!!!!!!????なんか幽霊みたいなのが!!!怨念をいっぱいに溜めた少女の地縛霊みたいな幽霊がああああああ!!!!!」

ずるり、とごみ山をかき分け這い出して来たその少女は、窮屈そうに身をかがめながらゆっくりと立ち上がり、一言、

「失礼な」

「しゃべったああああああああ!!!!!?????」

「そりゃしゃべるだろ!!!!私の妹だぞ!?」


へ・・・・?今なんて・・・・?

恐怖で混乱した頭でいくら考えても、良く分からない。

今佐倉先生はなんて言ったか??

「へ・・・・・??いもう・・・・・と??」

芋、鵜と?

食べ合わせ悪そうだな・・・・。

そうじゃなく!!

「妹おおおおおおおおおおお!!!!!!!???????」

「・・・・お姉ちゃん、この煩いの・・・なに?」

随分と失礼なことを言われている気がするが、それどころではない。

まじまじと見返してみれば、確かに、無表情なその顔付きは、よくよく見れば似ていないこともない??かな???

いや、似ているか??

良く分からん!!

それよりも・・・・小さい。

俺の胸くらいの背丈しかないのではなかろうか?がりがりの体型から、正直に言うと、小学生、いや、言い過ぎた。中学生、良くても高校生くらいにしか見えない。


「この煩いのは私の学校の生徒で、ここを片付ける手伝いで来てもらったんだ」

「ふーん・・・・」

「え??これ片付けるの!?聞いてないんですけど!!って言うかこれ片付けられるの!?なんでこんなになっちゃったの!?」

「ええい!!少年!!質問が多いぞ!!」

「少年。質問多いぞ」


佐倉先生はいいとして、なんで会って間もない女の子にそんなこと言われなければならないのだろうか?

それも、驚くほどの無表情だからなおのこと怖いのに。


「というか・・・ええっと・・・・お、お嬢ちゃん??」


お嬢ちゃんって!!お嬢ちゃんって!?どこの紳士だよ!?と思わなくもなかったが、それ以外になんと呼べばいいのだ!!

お姉ちゃんじゃあ絶対おかしいし!!妹くんっていうのもなんか変だ!!少年、に対抗して少女、と呼べたらよかったのだが、それもなんか違う気がする。


「茜。佐倉茜」

「え?」

「名前で呼べってさ」


それはレベルが高すぎますぜ先生!!なんてったって俺は、妹のことすらここ数年名前呼びしたことが無いんだ。というかむしろ、女の子の名前を呼ぼうとすれば、どもって変な感じになる程だ。

そんな俺に初対面でいきなり名前呼びしろと!?それは、丸々一ページの英文を訳すよりも難しい。


「茜、彼は杉谷 深冬くんだ。茜の一学年下か?」

「え・・・・・!?ご冗談を!!」

「深冬・・・。深冬。覚えた。綺麗な名前」

綺麗なのは名前だけです。というか女みたいで嫌いな名前だ。

いやいや!!そんなことより!!

「え・・・・!?あ、あー・・・・ぁかねさん・・・・は十八歳なんですか・・・??」

「ぷふっ!!ぁかねさんって!!どんだけ女の子の名前呼ぶの苦手にしてんのよ・・・・!!」

何が面白かったのか、噴き出すのをこらえる佐倉先生は置いておいて・・・・。

・・・って言うか揶揄うの止めてくれますう??自分でも何言ってんだ?って恥ずかしい気持ち一杯で耳まで真っ赤になってるんで。

「あかねさんは十八なのだ」

「ぷふっ!!ははははは!!!!茜も揶揄うの・・・良くない!!!面白すぎる・・・!!!駄目だ!!笑えるう・・・!!!!」

げらげらと腹を抱えて笑い出した佐倉先生を一睨みし、

「・・・・帰っていいですか・・・・??」

「もちろんだめ」

なんであんたが答えるんだよ!!

「って言うか俺より年上!?ぜんっぜん見えません・・・・!!」

「よく若いって言われる」

「若いっていうより幼いのほうが・・・・・」

正しいんじゃないか?そう言おうとしたら、被せるように、

「大いに傷ついた。手伝うことを求める」

うん。あまりにも無表情すぎて、全然冗談なのか、それとも本気なのか分からないです・・・。

「えっと・・・・。このごみ山を・・・・片づける・・・・?」

「大丈夫」

何が?何が大丈夫なんだろうか?不安しかないんですけど・・・・??

「一か月前はお姉ちゃんと私の二人で十二時間かかった。今日は三人いるから八時間で終わる」

今はだいたい十八時だからあ・・・・・。ざっと計算してえ・・・・。

うん!!食事もとらず休憩も取らず頑張れば深夜二時には終わりますね!!それは安心だ!!!

「ってなるかあああああ!!!!」

「どうしたの?」

「今からやっても深夜の二時までかかるんですよ!?それも食事も休憩も取らずに!!ですよ!?って言うか・・・・、一か月でこのありさまになるって・・・・!!どうやったらそんなことできるんですか!!???」

「大丈夫」

「何が!!??」

「こう見えてお姉ちゃんも私も片づけ下手」

「その情報むしろ全然嬉しくねえええええええ!!!」

ってことは何か!?頼りになるのは己自身ってか!?だから呼んだの!?ねえ絶対そうでしょ!?

「まさか本当に二時までやるつもりは無いさ」

ははは!!と笑う佐倉先生がこの時ばかりは神々しく見える。

「せんせい・・・・・!!!」

女神・・・・。救世主・・・・。メシア・・・・・!!

なんだかんだ言って生徒思いのいい先生だ!!


「なに今日中に終わらなければ明日も手伝ってもらうからな」


前言撤回・・・・。

「あんた冷血漢かよおおおおおお!!!!???鬼!!悪魔!!!人でなし!!!」

「なんなら明日はここに朝六時集合だ!!」

それ学校の始業より二時間近く早いんですけど!?野球部の朝練かよ!!

野球部の一年生がグラウンド整備している時間じゃないですか!?

「だからこそ。今日できるところまで終わらせるんだろう?」

にっこりと微笑む彼女は、本当にこの世の物とは思えないほどおぞましかったとか。




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