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悪役令嬢は婚約者に全てを丸投げする  作者: 上杉凛(地中海のマグロ)
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悪役令嬢は伝言する

申し訳ありません!完成系ではない書き途中のものを先程間違って投稿してしまいました!間違っていたものをお読みになってしまわれた方、本当にごめんなさい。こっちが正しいものです!

「まあまだ可能性の話だ。どういう形になるのかが分からない以上、今のところは対策のたてようがない。だが、わかっている部分への対策は一応立てようがあるから八方塞がりというわけじゃないのが救いだな」

 

「わかっている部分?あ、もしかして主人公補正のことですか?」

 

「ああ。あとは俺たちに用意されている環境の話だな。ゲームの人格になるように誘導されているんだろう。現にこの半年の間に、気が付いたら宮廷での俺の評判が更に落ちていた。ついでに言うなら俺は評判が落ちるようなことは一切していない。全て事実無根の噂だ。普通はこんな根も葉もない噂はすぐに消えていくんだが、今回は……。

まあ十中八九第2皇妃が画策したんだろうが、後ろ盾も満足でない第2皇妃に本来ならここまでの力は無いはずなんだ。それが第2皇妃に都合よく、俺に都合悪く物事が回っている。何かがおかしい」

 

あ!そうそう!それ!!私は少しだらけていた姿勢を正してアルベルトに向き直った。私のその雰囲気を見てとって、アルベルトがどうした?と首を傾げる。

 

 

「その話についてですが、私も父から聞きまして……、父も訝しんでおりました」

 

「公爵が?」

 

 

うん。そう。出発前にお父様に呼ばれたんだった。アルベルトにも伝えておきなさいって。ヒロインの衝撃に頭から吹っ飛んでいたが、今のアルベルトの言葉で思い出した。

 

 

うん。本題に入る前にまず、お父様はもちろん、娘の将来の伴侶であるアルベルトの味方であることを言っておく。私の、そしてアルベルトのバックについているのはお父様なのだ。なんて頼もしい!

 

ところで、そんなに頼もしいお父様なら第2皇妃陣営くらい軽くあしらえると思うでしょ?まあ実際そうなんだけれども、そうではない。そこがお父様が眉をひそめた点である。

 

少し本筋から逸れるけど、宮中での力関係というか勢力図というか、そういうのをここで今、軽くざっと説明したいと思う。

 

 

よし。

 

簡単にいうと、この国は皇帝を頂点としてそのすぐ下に四大公爵家というのがあり、それぞれとても大きな力を持っている。そしてその下に侯爵以下の貴族たちがいるんだけれども、まあ、四大公爵家というのがある、というより、あった、って言った方がいいかな。

 

4つの公爵家のうち1つの家はお取り潰しになったのだ。

 

時は大戦時にまで遡る。いかに共通の外敵がいようとも内部争いは起こるもので、当時、小競り合いをしていた貴族の間に公爵家という強い力を持った家が割り込み、帝国内部を散々引っ掻き回し、大混乱に陥れたのだ。

 

詳細はここでは省くが、まあなんやかやで、外敵を抱える国難の時に国を掻き乱した廉で、その公爵家は皇帝とほかの公爵家に咎められ、お取り潰しになったとか。

 

公爵なんて大きな家がお取り潰しになるなんて今じゃ考えられないけど、まあ当時は戦争真っ只中。帝国が内部から混乱している間に敵からの攻撃が激しくなり、結果としてかなりの危機に陥ったそうで、だからというかなんというか、そういうことになったらしい。

 

まあなにはともあれ、それからは公爵家がそういったことに関わるのはタブー視されている。別に関わったからと言って、じゃあお取り潰しになるのかと言われればそうではないけど、確実に眉をひそめられる。多少ならまあ問題は無いが、大っぴらには介入できないのだ。

 

もちろん、被害をこうむった時は反撃することは許されるけどもね。うがぁ!説明が難しいっ!!

 

うーむ。わかりやすくいうと、前世の日本の自衛隊みたいな?まあちょっと違うけど。自衛権は認めるけど、自分から攻撃してはいけませんよー、みたいな。

 

要するに、

 

公爵とかそういう大きなとこはどっしり上で構えてなさい。俗世の権力争いに関わっちゃダメよ!そんなはしたないことは許されないわ!

 

というわけだ。

 

 

まあ、自分から攻撃しちゃダメといっても、公爵家が完全に自分から何も出来ないわけじゃないけどね。表立って動くことが出来ないのならば、裏で動けばいいのだ。ふははは!

 

まあたとえ裏でも慎重に動かないといけないけども。裏で動いてるだろ!とか言いがかりをつけられてはいけない。些細なことでも弱みになることはしない方がいい。

 

まあ第2皇妃陣営くらいひそひそ裏で動けばサクッと潰せんだろって思うかもしれないけど、それは実際問題難しい。なんでかって、だって今第2皇妃陣営がペショッてなったら、他の人はみんな、誰を疑うでしょうか?そう、当然お父様を疑うよね。それはマズい。

 

というかそれは最終手段だし、むしろお父様がそうやってしまうと、アルベルトの立場が無くなる。嫁の父に縋って敵を潰してもらったんだな。男のくせに情けない。と、なって、面目を失うわけだ。めんどくせっ!貴族めんどくせっ!

 

 

「アルベルト様に関する事実無根の噂が蔓延し始めたことに父は気づいたそうなのですが、なぜか一向に噂は収まらなかったそうでして……」

 

「そうか。公爵が気が付いたのにか……」

 

 

そう伝えると、アルベルトが難しい顔になる。うん。なんかおかしいよね?私も違和感を感じた。

 

あ、ちなみに、ここで言う「気が付いた」とは、ただの「気が付いた」じゃない。

 

お父様が気が付いたってことは、それを放っておくわけがないよね?まあつまりちょ〜っと手を回して噂とかを抑えようとしたのよ〜、と暗に言っている。

 

まあ手を回すとはいっても、噂程度ならお父様のレベルになると、誰か他の貴族の前で少し大きな声で不満を言うだけでいいんだけどね。そうすればお父様の不興をかうのを恐れて大体くだらない噂なんかは下火になる。通常ならば。

 

いくら自分から攻撃は基本的にはしないとはいえ、公爵家が大きな力を持っているのには変わりない。公爵家争うべからず、な慣習によって普段は牙を隠しているだけであり、そのことはみんな知ってる。だからこそ皆、公爵家に楯突くことはしないし、常にその動向は窺っている。

 

そのため、さっき表で動けないなら裏でこっそり動くとは言ったけども、正直ある程度のことはそんなことしなくても解決したりするのである。

 

つまりだ。今言ったお父様のやり方みたいに、お前分かってるよな?あ?って笑顔で無言の圧力をかけるのが主流ってことだね。ん?あれ?ヤクザ?

 

ゴホン。ちょっと長くなっちゃったけど、話を戻そう。

 

今回の話で言うと、アルベルトに関する事実無根の噂が蔓延し始めた。それに気がついたお父様は、社交界のイベントかなんかに出席した時に、ほかの貴族の前でその事に不快感を示した。

 

通常ならば、不快感を示したお父様に無言の圧力をかけられた噂をしている他の貴族たちは、やば!と思って静かになるはずなのである。

 

それなのに今回はそうならなかった。おかしい。第2皇妃陣営とフォークナイト公爵家だったら誰でも後者のご機嫌を伺うはずなのに。実に不自然だ。

 

つまり、強制力。ゲームのアルベルトに近づくように、この世界のアルベルトの性格をゆがめるための環境が強制的に作られているのではないか、と思うのよね。

 

ちなみにアルベルト母の、つまり第1皇妃の実家は古くから続く由緒正しい侯爵家だが、最近血が絶え気味というか、子供を作らない人が多かった上に女の子ばかり生まれたため人が少なくなり、お家断絶の危機に瀕している。

 

今現在、第1皇妃の実家に残っているのは高齢の当主(アルベルト祖父)とその跡継ぎのまだ幼い第1皇妃の甥しかいない。

 

つまり第1皇妃の実家は名家ではあるがそれだけで特に力はないという状態なのである。

 

 

すごくない?この、狙ったかのようにことごとくアルベルトを孤独に追い込むような環境。強制力の恐ろしさよ。味方が少なすぎる。

 

後ろ盾がない第1皇妃と第2皇妃。どちらも同じ年代の息子がいて、第1皇妃の実家は名はあるが実は無く、第2皇妃の実家は落ち目だがまだその勢力は細々と残っている。

これだけみれば2人はまあほぼ互角だ。

 

しかしアルベルトには私がいて、ハイレインには誰もいない。

 

なので私の、というかお父様の存在が、第1皇妃と第2皇妃、ひいてはアルベルトとハイレイン、この2組の上下関係を明確にすることになるはずなのだ。お父様はアルベルトの後ろ盾ということだね。

 

つまり本来ならば、私と婚約したことによってアルベルトの立場はしっかりと固まり、宮中においてもハイレインより確実に上となるはずなのだが、

ところがどっこい、不思議なことに現在、そうなっていないどころか立場が弱い第2皇妃陣営の工作によってアルベルトの評判が落ち始めている始末。お父様も不思議に思うはずだよ。

 

 

「ふぅん…これは思った以上に……」

 

 

私の話を聞いてアルベルトが呟いた。うーん。強制力の存在を感じるなぁ。

 

私とアルベルトの目が合った。難しい顔をした自分が綺麗な赤の瞳に映っている。きっと私の瞳にも、厳しい表情のアルベルトが映っているはずだ。

 

うーん……。多少強引にでも流れを変えなくちゃならないよねぇ……。どうしたものか。

 

ひゅぅうぅ。

 

そのとき建物の間を風が吹き抜けてガタガタと窓が音を立て、私たちはその音をきっかけにお互いから目をそらして窓の方に顔を向けた。風が強まってきたなぁ。

 

「空模様が荒れてるな」

 

「ええ。雪が降り出す前に皇城に到着してよかったです」

 

「確かにそうだな。運がいい。この天気では馬車もじきに動かせなくなるだろう」

 

 

たしかに。今日の朝、「なんだか天候が悪いですね」という宿の主人の言葉に嫌な予感がしたので慌てて支度をして馬車に飛び乗ったのだが、よかった。ギリギリ滑り込みセーフだ。

 

いつの間にか外の雪が本降りになっていて、徐々に景色が白く染まりつつある。

 

積もった雪が音を吸い込んで、辺りはいつもより静かだ。

 

ひゅぅうぅ。再び風の通る音がした。女の人の悲鳴みたいな音だ。なんとなく心細い気持ちになるからこの音はあまり好きじゃないんだよねぇ……。それにしても今夜は冷えそうだなあ。

 

まあ今はそんなに寒さは感じないんだけどね。なんていったって、先程メイドが魔力を注いでいってくれた火の魔石が大活躍しているのだから。暖か〜い。

 

しばらくじっと薄暗い外の景色に目を向けていたアルベルトが、視線をこちらに戻すと口を開いた。

 

 

「そもそも俺たちはこの不自然な状況とお前の記憶から強制力の存在を推測できてはいるが、それとまともに相対したことは無いからな。どう対抗するべきか……」

 

「やれる事をやるしかないでしょうね…。思いつくことは全て試してみるのはどうでしょうか」

 

「まあそうだな。……とりあえず今の俺たちがやるべきことは、環境に負けない。ゲームの性格に近づかない。強制力に後押しされた第2皇妃の工作を何とかする、といったゲーム開始時点の状況からできるだけ遠ざかる方針で、強制力に対抗していくことだ」

 

「そうですね。私もそれがいいと思います」

 

 

「例えば作り笑いをなるべくしないようにするとかな…」

 

 

「…え、ええ。よろしいのではないでしょうか………」

 

 

なんか切ないんだけど。笑っていいのか微妙な気持ちになるのだが、え、どんな表情をするべき?



少し変更点があります。


以前、セリーナ以外の公爵令嬢がいる、というような描写をしましたが、そこの部分の記述を削除致しました。


同年代にセリーナ以外の公爵令嬢はおりません。


よろしくお願いいたします

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