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悪役令嬢は婚約者に全てを丸投げする  作者: 上杉凛(地中海のマグロ)
19/71

悪役令嬢はブーメランをくらう

「ごきげんよう、アルベルト様!お久しぶりですわね!」


「ええ。またお会いできて私も嬉しいです。元気にしていましたか?」



猫かぶり殿下の完璧な所作に、私の後ろでマナー教師がうっとりしたのが感じられた。なんてこった!あの鬼のように厳しいマナー教師を感心させるなんて!さすがは皇太子殿下といったところだろうか。是非とも私に秘訣を伝授して頂きたい。

そしてその大量に被った猫を数匹分けてくれ。

私には完璧な笑顔をうかべたアルベルトの背中に猫が何匹もごろにゃんしている幻が見えた。

ほらおいで猫ちゃん。ぜひ私の所へ転職……え?嫌?アルベルトがいい?かっこいいから?えーー顔!!マジか。そういう基準だったのか。たしかによく見たら全員雌…いや、1匹だけ雄だな。君はどう、転職。え?ここは俺のハーレム?あっそ。生意気な。


どうやらアルベルトの猫は面食いのようだ。そして私の猫は仕事をしない。ほら、見てみなさい。私の座る時の所作にマナー教師の目がギランと光ったではないか。猫め、働け。





「さて、到着したばかりで、さぞお疲れのことでしょう。これから滞在していただく予定の部屋にご案内致します」


応接室でしばらく雑談をしたあと、アルベルトがそう言って立ち上がり、私たちを促す。私はアルベルトの腕に手をかけた。お!どうやらサラやマナー教師は別の人に案内されるらしい。

やった!やったぞ!ついにマナー教師から解放された!


そう喜んでにまにまと顔が崩れた私に、セリーナ様。と声が飛ぶ。おっと。気を抜くのが早すぎた……。私は慌ててにこやかな仮面を被った。最後まで私に睨みをきかせながらマナー教師が退室する。ふぅ。仕事に熱心すぎる。前に聞いたところでは、どうやら私のあまりのダメダメ加減に彼女の教師魂が燃えたらしいけれど。いや、ありがたいけどさあ。怖いものは怖い。



そのまま私はアルベルトにこれからお世話になる部屋に案内された。そこは城の1画、皇太子に与えられた居住区で簡素な内装で整えられた感じが実にアルベルトらしい。豪華絢爛な他の客室などより私はこちらの方が落ち着くからありがたい。案内された部屋も程よい広さと落ち着いた内装で私はすぐに気に入った。いい部屋ね、というと、そうだろう、と返される。しばらくして私の荷物が運び込まれ、荷解きをするためにサラが数人のメイドを連れてやってきた。



「じゃあ、落ち着いたら呼んでくれ。それと、夕食の時間が来たら迎えに行く」


運び込まれた荷物の山を見てアルベルトがそう言うと、サラがそれに反応した。


「あら、お嬢様。ここは私がやっておきますから、お嬢様は行って構わないですよ。殿下と積もる話もおありでしょうし」


「いえ、それだとあなたが大変じゃない。いいのよ、私の荷物だし、手伝うわ」



私は微笑んでサラの提案を拒否した。ダメ。それはダメ。今の私にとってその気遣いは有難くない。でも他のメイドもいるし…と言いかけた彼女を遮ってにこやかに説得する。自分のことを全て任せっきりにするのは良くないわ!

グサッ!そのセリフを吐いた瞬間、何かが飛んできて私の心に突き刺さった。ぐはぁっ、なんだこれは!……はい。そうですね、ごめんなさい。破滅フラグ問題をアルベルトに全て任せっきりにした私に盛大なブーメランが突き刺さった。


だがここで遠慮してはいけない。知らない、そんなこと私は知らなーい。私はポイッとブーメランを引っこ抜いて捨てながら説得を続ける。アルベルトの前だからか、サラは粘らずに案外すぐに引き下がった。ふぅ、よかったぁ。ふふっ、じゃあありがとうアルベルト。また夕食のときに会いましょう!!


アルベルトが出ていくと、満面の笑みで説得されたサラが訝しげな目を私に向ける。



「お嬢様?あの、むしろお嬢様が手伝うと散らかるので大人しくして頂きたいんですが」


ぐっ。言い返せない。オブラートに包むことを知らないらしいサラの言葉に私はダメージを受けた。いや、その通りですけど!でもいくら私だってやれば……できない。うん。認めよう。まあでも、手伝いたい気持ちはあるけれど、今回は本当に手伝おうと思って説得をした訳では無いのだ。


「ええ、わかっているわ。悪いけど荷解きは任せたわよ、サラ。その間に私は宿題やるわね!今から夕食までになんとか完成させないと!」


「……宿題?」


更に怪訝そうな顔をするサラをスルーして私はバタバタと荷物の中からノートとペンを探しだして机に向かった。やばい。最後のまとめが終わってない。死ぬ。

あと、ついでだからアルベルトに聞いておきたいことのまとめも作っておこう。私はすぐに忘れるからきちんと書いておかないと!

私は血眼になってノートにペンを走らせた。そうとも。私は夏休みの宿題は最後にやるタイプですとも。お察しの通りです。


そんな私に呆れ顔をしながらも何も言わず、サラが他のメイドと共に荷解きを始めた。ごめん、ありがとう。後で手伝うから!私はアルベルトの宿題との最後の決闘を始めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] セリーナの前世は小学生男子だった説が自分の中で確信の域に到達しつつあります…w きっと放課後は近所のガキ共やクラスの男子を引き連れて駄菓子屋に突撃してたに違いない。
[一言] 私は夏休みの宿題は最後にやるタイプです> この一言でセリーナをムッチャ応援したくなりました 次の更新も期待してます
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