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悪役令嬢は婚約者に全てを丸投げする  作者: 上杉凛(地中海のマグロ)
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悪役令嬢は暴走する


私、セリーナ・フォークナイト公爵令嬢の一日をざっと説明すると、朝から午後までお勉強やお稽古があり、午後3時から夕食までは自由時間。6時に夕食を食べたら2時間お稽古があって、8時から就寝時間まで自由時間。といったかんじだ。


午後の自由時間は今まで、水ソファーで庭を散歩しながら読書と洒落込んでいたのだが、この間の事件で見事に高熱を出した私には水ソファー禁止令がお父様から発布されてしまった。まあでも、普段忙しい両親が一日中そばで自ら看病してくれたのはとても嬉しかったから、それはそれで良かったのかも。

ともかく、水ソファーは封印されてしまったため、最近では大人しく自分の足で歩いて庭師と交流を深めている。


そして私は、毎日夜8時から寝るまでの自由時間の間に血眼になって皇太子殿下からの宿題をこなしていた。うぎゃあああ!!もーー!訳わかんない!前世に悪役令嬢ものがどれだけあったと思って……っ!!小説であった細かな問題点を思い出し、紙に書きなぐる。知らんっ、もう英語とか知らんっ。

この前の手紙に、英語の文字を送れと書いてあったので、私はアルファベットの大文字と小文字を書いた表を作って送った。読み方も教えた。ふんっ、せいぜいアルファベットの歌でも歌ってるがいいさ。アルベルトがアルファベットの歌を歌っているところを想像するとやけに笑いが込み上げてくる。是非とも次会った時にお教えしたい。







そんなこんなで冬がすぎて春が来た。私が前世を思い出してから約1年がたったのだ。HAPPYBIRTHDAY前世の私!1歳でちゅね〜!元気でちゅかぁ?おめでとぉ〜!

ガツンッ!今世の私が前世の私に殴られた。すみませんでした。調子に乗りました。

そんなある意味バースデーガールな私の元へ、一通の手紙が届けられた。



「お嬢様!アルベルト殿下からのお誘いですよっ!!」


「お誘い?なんの?」



両親あてに届けられた手紙を両手でぶん回しながらサラが走ってきた。とても興奮している。あーら、はしたなくってよ!おーっほほほ。


手紙の内容は、簡潔にまとめていうと、来月から2ヶ月ほど皇城に遊びに来ないか、というもの。交流を深めたいとかなんとかご立派な理由が書いてあったが、手紙の最後に書かれていた文字を見て私は全てを悟った。Albelt。どうやら彼はアルファベットをマスターしたようだ……。だがアルベルトよ、綴りが間違っているぞ、正しくはAlbertだ。教師セリーナは学生アルベルトに、心の中でそう指摘した。

まあいいだろう。そろそろ例の話も進めなければならないし、私も久しぶりにアルベルトに会い……たくねぇえええっ!!無理!どうやって顔を合わせろと!?

ドレスのボタンぶっ飛び事件のあと、初めて顔を合わせることとなるわけだ。私の心がスライムのようにプルプル震えている。


無理ぃいいいっ!と絶叫しながら走り出し、文字通り暴走した私は、サラの指揮のもと見事な連携を発揮した使用人たちにあっという間に捕獲された。いやだ!離せぇっ!「セリーナ様〜、ほうら、クッキーですよ〜」じゃないっ!私を餌で釣るな!バカにしてるだろ!「って食べるんじゃないですかぁ」だと?当たり前だろ、クッキーだぞ?


ボリボリとクッキーを齧りながら大人しくなった私は速やかに部屋へと運ばれて、家族と使用人たちから三日三晩に渡る熱い説得を受けた。


わかったよ!行けばいいんでしょ行けばっ!!あーーー、もう恥ずかしい、ほんと無理ぃ!!


宥めすかしてようやく私から了承の意引きずり出した家族たちの行動は非常に迅速だった。私の気が変わらないうちに、と、その場でアルベルトに了承の返事を書かされて、その日のうちに手紙を送られた。


そして私の皇城に滞在するための準備が使用人の総力を挙げて行われ、いつの間にか外堀が完全に埋められていた。埋立地となっていた。なんなら堀がこんもり山になるレベルで埋め立てられた。とてもじゃないが、やっぱヤダ、なんて言い出せる雰囲気ではない。

くっ……!私は完敗を認めた。


そしてあの日、暴走したことによって私のマナー教育が厳しさを増した。マナーの教師の顔が般若のようになっている。彼女の装備が指し棒から長い定規に変わったのを見て、私の肝っ玉はぴゃっと縮こまり震えだした。もちろん叩かれたりはしないんだけど、迫力が恐ろしい…、恐ろしすぎる……っ!!



そんなこんなで、がたがた怯えながらなんとか日々のマナー講習を乗り切っていた私は、魔法の授業中、あることを思いついて一日休みをもらい、知り合いの元を訪れることにした。


そのためにはあるものが必要となる。私は必殺、愛娘の好き好き攻撃を全力で行使し、お父様をたぶらかしてそれを買ってもらった。うっふふふふ。ん?なんだか視線を感じるぞ?


私の必殺攻撃からハッと我に返ったお父様が少し悲しげな目で戦利品を確かめる私の姿を見ている。え……、いや、そんな目で見ないでよ。お父様のこと、ほんとに好きだよ?いや真面目に大好き……って、え?それもそうだけどそうじゃない?なによ。



「僕には娘の趣味がよく分からない……」



「安心してください。趣味ではありません」



私が大量に買わせたものを見て意気消沈するお父様の肩を、慰めるようにとんとん叩いた。ありがとう、父よ。





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