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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第1章 魔女の呪いと変わる世界
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村の酒場

翌日。

サムとラルフとは村の酒場で俺の退院祝いと、これからの計画についてを相談することになっていた。


「エルの退院を祝して! 乾杯! ガッハッハ!」


ラルフの合図で俺ら3人は酒を飲み始めた。

ここは大衆的な村の酒場で、休日の夜だったこともあり、酒場は賑わっている。

テーブルは四角く、ラルフの隣に俺、俺の向かい側にサム、という形で座っている。


「……エル、退院おめでとう」

「ありがとう、いつも見舞いきてくれてありがとうな」


サムとは相変わらず少し気まずい空気が流れている。

そんなしょぼくれたサムが少し可愛いのだが、流石に今は申し訳ない気持ちだ。

俺のために悩ませてごめんな。


「なんだなんだ? 湿っぽいな、今日は祝いだぞ! オレの奢りだ、テメェら飲めよ」


そう言って、気安くラルフは俺の肩に腕をガッと回して、ご機嫌な様子だ。

そのままもう片方の手でグイっとグラスの酒をすべて飲み切った。


「プハァッ、うめぇ」

「ラルフ、いい飲みっぷりだよな。……お前のそういう所好きなんだよな」


俺はラルフに回された腕の中で、ラルフを見上げるような形でそう言った。

特に意識せずに本音を言ったつもりだった。

一人で居ることが好きで、他人と混ざろうとしない俺は、正直他人によく思われていないことが多かったように思う。

そんな中でもラルフは、そんな小せぇこと気にすんな、と言わんばかりに皆と変わらず豪快に接してくれていた。


「……そうかよ。変な奴だな」


ラルフはぶっきらぼうにそう言うと、少し赤くなった顔で俺に回した腕を離して、そっぽを向いてしまった。

―――入院生活の間の効果で少しは意識していたらいいな。

と思ってしまう俺なのであった。


今まであまりこうして誰かと飲んだりすることのなかった俺は、純粋に今という時間を楽しんでいた。


「なんだか、珍しいな。久しぶりにエルの楽しそうな顔見たよ、良かった」

「そうかな、そうかもしれないな。」


そのまま3人でしばらく和やかに飲みつづけていた。

サムは俺に対して謝罪の言葉を言うこともなくなり、ぎこちない空気も次第に払拭されていった。


途中からサムはあちこちで飲んでいる村人に捕まり、その対応に追われているようだった。

今のサムは村人の中の英雄なのだ。


魔女と対決したあの日、倒れる俺とラルフ、そして行方不明だった村人の救援を呼んだのは、唯一動けるサムだった。

魔女を倒すことはできなかったものの、魔女は森から消え、行方不明者は村に帰還し、実質的に事件は解決した。

もともと容姿とその性格からサムは村人たちの人気者ではあったため、その活躍から評判が鰻上りとなった。

サムはそれを嫌がって俺のことを話したがっていたが、そうすると俺の呪いの話をしなければならないため、結果的にこのようになった。


ラルフは終始ご機嫌で酒を飲み続けたため、今はテーブルに突っ伏してすっかり寝こけてしまった。

寝ているラルフを見ながら1人で酒を飲むのも悪くはないのだが。


「……なぁサム! 俺寝てるラルフを送ってくよ!」


俺はサムの背中にできる限り大声で呼びかけた。

すると、サムは慌てたように後ろを振り向き、すやすやと眠るラルフに目をやる。


「いや、俺もさすがに……」

「おい兄ちゃん! 魔女を討伐した時の話こっちにも聞かせてくれよ!」


しかし別のテーブルの客に声をかけられ、別の方向を向いてしまう。


「ああ……」


優しいサムは村人たちの言葉を無下にできないようで、相変わらず対応に追われていた。

そのため、俺はラルフと2人でその場を帰ることにした。


「しょうがないなぁ……ラルフ、帰るぞ」

「ンン……ア、あぁ……」


半分以上寝ぼけているラルフを起こすと、肩をなんとか担いで、俺は酒場を出ていった。


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