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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第3章 闘技場とハーレム
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ラルフとデート

「なぁ、ラルフ今日デートしないか?」

「デ……!?」


俺がそう言うと、ラルフは突然慌ててドタドタと後ずさる。


「い、いや……デ、デデデートだとォ!? オメェ、そういうのは」

「冗談だよ」


すぐさまそう切り返すと、ラルフはそっぽを向いて左頬を掻き始める。

そして「驚かせるんじゃねェ……」と小さな声で呟きながら、窓の外をじっと見つめていた。



明日はなんと『準決勝』である。

準決勝と決勝は魔術闘技祭の目玉として2日間にわたり行われる。

その前日には出場者と観客の意識をリセットさせるためにも、例年休息日が設けられているらしい。


そして今日が、その魔術闘技祭期間中の唯一の休息日であった。


そこで俺は最近触れ合う機会の少なかったラルフと、その貴重な1日を過ごすことにした。


「良い天気だなァ」

「……そうだな」


今日は快晴で、日の光がなんとも温かい。

辺りを見回すと、道端にはオレンジ色の小さな花々が咲き誇っている。

少しだけ甘くてふわふわとした香りが漂っているような気がした。

その香りを感じてなのか、横にはご機嫌な様子のラルフが、鼻をヒクヒクさせながら歩いていた。


「……実は、オメェと行きたい所があるんだけどよォ」

「本当か? もちろんいいよ。楽しみだな」


ラルフがどこに連れてってくれるのかワクワクしながら、俺は久しぶりのこの安息の日を早速満喫していた。


そうしてラルフと他愛ない話を続けながら、街の中心近くに来た。


行き交う人々が増えるにつれ、徐々に辺りがざわめくことには気づいていた。

横を見るとラルフも察しているのか、なんだか落ち着きがないようであった。


(あれが、噂のエルネスト様……!)

(私もあの矢で心を奪われてみたいわ!)

(自我を失うほど心酔するなんてあんのかよ)

(それほど不思議な魅力があんだろ……俺もさ、実は気になる)


意識を集中させると、周りからはこういった内容の声が聞こえてきた。

魔術闘技祭を勝ち抜いていくにつれ、初出場の俺が話題に上ることは致し方無いとは思う。

ただあの魔女の魔力で放つ矢に、なぜか虜になってしまうということが、この街の男女問わず関心を高めているようであった。

現に俺に負けた敗者たちは今もなお、日々うわごとのように俺の名を呟いているらしい。


―――少しだけぞっとする。


「……オメェはすげェな」


ラルフが呟く。

流石にラルフの耳にも先程の声は届いていたらしい。


本当の所は俺の単純な戦闘力ではなく、魔女の魔力で関心を集めているんだけどな。

もちろんそんな事はラルフの知る由ではない。


横を歩くラルフの表情を覗き込むと、少しだけ不満の色が浮かんているような気がした。


「俺が人気者で、何か不満なのか?」


そう尋ねると、ラルフは意味が分からないといった不思議そうな顔をした。


「オレが不満そうに見えたかァ?」

「あぁ、なんだか少し、な」


ラルフは急にじっと考える素振りを始める。


「いや……不満……? オメェが人気者で不満……。そういうわけでは、別にねェ、と思うんだがなァ……」


しばらくそうして考える仕草を続けていたが、自身の考えに自信がなくなってきたのか、ラルフはさっぱりと諦めたようだった。


「ところで前から聞こうと思ってたんだがよォ。この街に来る前に、ギルバートのヤローと会ったことあるのか?」

「いや、ないけど」

「……だよなァ。いやいや、オレの勘違いだ」


俺はギルバートの姿を思い浮かべる。

ギルバートほどのイケメンに、もしも以前会ったことがあるとするなら、絶対に忘れるはずがない。


質問の意図を問いただそうと「どうしてだ?」と尋ねるも、ラルフからの応答はない。



「……?」



横のラルフを見つめると、ラルフはある一点を見つめたまま、歩き続けている。

どうやら先ほどの俺の声は耳に届いていないようだった。

ラルフが見つめる先には一軒の建物があり、その建物はもう直ぐ目の前、という所まで来ていた。


「ラルフ?」


その建物は古民家を改装したような、おしゃれながらも落ち着きのある店であった。

お店の扉の横には置き型の看板が設置されており、黒板に様々な色合いで描かれたドーナツの絵があった。


「へぇ……素敵な店だな」


そう呟くと、既に無言のまま扉の前で立ち止まっていたラルフがハッとした表情を向けた。


「あ、あァ。今日はオメェは疲れてンだろうからなァ。ゆっくりできる所がいいかと思ってよォ……」

「……ラルフ、ドーナツ好きそうだったもんな」


するとラルフは突然口をパクパクと震わせ、信じられないといった表情で目を見開いて俺を見つめていた。


「いや、な、なんでオメェが!? ……って別に好きじゃねェ! オレはオメェが甘いもん好きかと思って」


急に饒舌になったラルフがなんだか面白くて、俺は腹を抱えてその場で笑った。



お腹が痛い。

呼吸がうまくできない。



ひとしきり笑って、少し落ち着いた頃、ゆっくりと顔を上げた。

するとやはり気に食わなかったのか、ラルフは不満そうにジロリとこちらを睨んでいる。


「……いや、さ。昔、村の警備隊の仕事中、差し入れにドーナツ貰ったことがあっただろ。ラルフの目が輝いてたからさ。好きなんだろうなーと思って」

「……そんなとこ、見てたンかよ、オメェは」


ラルフは大きくため息をついたが、それから目線を上げていつもの癖で左頬を掻き始めた。

きっと図星なのだろう。


ラルフは「……早く入ンぞ」と、俺を促して店の扉を開けた。


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