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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第2章 召喚術師と黒魔術師
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初日の宿屋

「疲れた……」

「はァ……」

「うん……」


宿屋に戻ってきた俺ら3人はぐったりとしていた。

この宿屋は地下に飲み屋が併設されており、そこで初日の情報共有をすることになっていた。


「じゃ今日の情報交換をしよう……。まず俺から……って言っても、正直有益な情報は何も得られなかった。50人くらいに聞き込みしてみたんだけど……エル、ごめん」


そう言って落ち込むサム。

50人……!?

俺はというもの、あの美少女……じゃなかった。

美少年とぶつかった以外、人と話していない。


こんな時は、ムードメーカーのラルフが励ましてくれるはず。

と、ラルフの方に視線を向けると、その期待は裏切られた。

ラルフもまた顔を伏せてため息をついている。


「いや、そのよォ……。オレは相手にされなくてよ、あんまり聞き込みできなかった。力になれずにすまねェな」


俺はともかく、誰にでも気さくに豪快に話ができるラルフが、その調子とは珍しい。

やはり何かが、あったのだろうか?


「オメェはどうだったんだ?」

「いや……それが……」


そうラルフに聞かれると、俺は今日起こった出来事を掻い摘んで話そうとした。

しかし俺自身頭が混乱していたためか、全て事細かに話すことになった。


「つまり、美少女に突然ぶつかって、意気投合してペット探しを手伝ったと。そしたらそのペットは巨大な竜で、美少女は美少年で、竜に乗って飛び去って行った、と……そういうこと?」

「いや、意気投合はしてないけど……」

「無茶苦茶な話だなァ」


サムもラルフも珍妙なものを見る目つきで俺の話を聞いていた。

というか、まず何も聞き込みしてないしな、ごめん。


「まぁ、でも街の事はかなり分かったよ」


そうフォローをしたものの、サムとラルフはあまり納得していない様子の顔だった。


「でも魔女に関する情報は誰もなしか……」


サムのその一言に、俺ら全員は同時にため息をついた。

全員がほとんど収穫なしと言ってよい状況である。

街に来たばかりであり、全員が疲れ切っていたため、酒もそこそこに初日は切り上げることになった。



宿屋の個室に戻ってきた。

しばらくはここが俺の住む所になるんだな。

宿は安いものの、十分な大きさのベッドと、簡易的な机と椅子があり、生活には十分であった。

俺は早々にシャワーを浴びると、ベッドに倒れこんだ。


久しぶりのベッドは快適である。

何せ何日も狭苦しいテントの中で寝ていたからな。

俺はともかく、サムやラルフはもっと窮屈な思いをしていただろう。

―――やはり一人は最高だ。


時間はまだ21時で寝るには少し早いな。


改めて俺は今日の出来事を振り返っていた。

常識的に考えて、あの少年……ユウリか―――可愛すぎ、だったな。

あの潤んだ瞳と可愛い仕草と……。

そして俺に絶対的な信頼を向けた、あのはにかんだ笑顔。

―――ちょっと破天荒な性格ではあったが。


ずっと少女だと思っていて、まさか男だとは全く微塵も思わなかった。

今まであんなに可愛い男の子を見たことがなかったから、考えたこともなかった。

―――俺はサムのようなイケメンや、ラルフのような屈強な男が好きなはず。


まさか、そんな―――。

信じられない思いではあるが、俺は頭の中で妄想を繰り広げてみた。

あの可愛い子が、でも実は俺と同じモノがついていて、それで―――



時計を見ると、10分ほどが経過していた。

妄想の中身は、俺の胸の内に留めておこう。


正直、―――全然行けたわ。


悲しいかな。

最近の俺の適応能力はどうも、都合が良すぎるくらい高い気がする。

しかし、悪いことではない。そうだ。


「まぁでももう会うこともないかもしれないな」


しかし明日からどうやって過ごそう。

そんなことを考え始めたところで、強烈な眠気が襲ってきた。

俺は久しぶりのベッドの感触に心の底から安堵していたからかもしれない。


眠りと覚醒の行き来を繰り広げる中で、突然、


(おにぃ!)


と、あの時のユウリの声が脳内に響いた。

そして、ふっ、と街を歩いていた時のユウリの手の感触を思い出した。

―――?


「なんで今……って……あ」


そこで俺は大事なことに気が付いた。

俺とユウリ、ずっと手を繋いでいなかったか。


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