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20××年、世界一の合計特殊出生率を誇る国・ニジェールのその年の平均出生率が、例年より大幅に下回ったことがニュースで話題になった。減少についての具体的数値は未公開だったが、そのニュースを皮切りに世界で人口調査が行われ、世界の全143ヶ国で人口の減少が判明した。それについて各国の首脳は何度となく問題解決策を考案したものの、そのどれもは失敗に終わる。
現状が打破出来なければ三十年後、人口のおよそ8割が70歳以上高齢者という統計を叩き出したのち、事態は平行線のまま、日本に限らずアフリカやアジアなど少子高齢化は世界問題としてグローバルイシューに盛り込まれた。
そんな矢先、IQ130以上の成績優良者のみを集積したアメリカの大学・人間科学研究グループ「team ASTRO」がハーフの子供の出生率は純血種の三倍にもなることを発表。
結果に懸念の声を漏らす国が出る中、日本では蔓延した少子化問題を抑制するため、同国に限らず異国民と交配し「混血種」を増やすことで少子化を減少する取り組みが行われ、当時予期していた三十年後にはその数はおよそ国内の2/3を占めるようになった。
でも、藁にもすがる思いで飛びついた日本は他国の懸念を大いに慮ることになる。のちに、研究所が混血種は子の出生率を高めると同時に、血が独立し意識を持って宿主を乗っ取る危険性があることを発表したからだ。
「ハブ化」と名付けられた現象は瞬く間に人びとを混乱に陥れ、今日もまた、平和が過ぎたこの国の傍らでは誰かの助けを呼ぶ声が聞こえている。
ここまで説明しておけばきっと話にはついてこられると思う。
あとは貴方が信じた正義に従って欲しい。
か弱き庶民を救った、あの夜の騎士に敬意を込めて。
「花芽イリアの手記」