第1話 落し物
この世には普通“な”人間と普通“じゃない”人間が存在する。
普通“な”人間とは、周りからある一つの分野において普通と評価され、その結果から他のことも普通と偏見で決められてしまった人間のことである。
そして、普通“じゃない”人間とは、ほぼ全ての分野において秀でており、周りから天才、神童と高い評価を受けた人間のことである。
だが、この二つのどちらにも当てはまらない人間が存在する。それは
普通“すぎる”人間
である。
そして、その評価を受けてしまった人間とは一体誰なのか?
それは......。
「あーあ、なんで僕はこんなに普通すぎるんだろう」
誰もいない教室で一人佇む少年佐藤実であった......。
僕は昔から普通すぎると周りから評価され、期待されることもなければ、失望されることもなかった。
僕自身この普通すぎる体質を治そうと頑張っていたが、身長体重は平均ぴったりの数値であり、誕生日は日本で一番多い日付なのである。
「仕方ない、ここで嘆いていたって何か変わるわけでもないし今日は帰るか」
カバンに教科書や筆箱などを詰め込み教室を出て昇降口へ向かった。
そこで、上履きから靴へ履き替え校門へ向かおうとした時校門に停められている車に向かって走っている女生徒が何かをポケットから落としてしまった。
僕はその落し物を拾い声をかけようとしたが、女生徒はすでに車に乗り込んでおり、その車も出発してしまった。
落し物は綺麗に折りたたまれたハンカチだった。そのハンカチには、名前が刺繍されていてそこには神楽坂真琴とあった。
「っておいおいまじかよ。神楽坂ってあの神楽坂なのか?」
そう、そのハンカチとは、星影高校三大美少女の一人神楽坂真琴の物であった。
❇︎❇︎❇︎
「はぁ、憂鬱だ。あの時は仕方なくハンカチを持って帰ったけど、返す時なんて言おう。今まで話したことがなかったからな」
ハンカチを拾った次の日の朝僕はそのハンカチを見つめながらそう呟いた。
ハンカチを返すくらいどうってことないじゃないか。とか思ってる君!違うんだ、そうじゃないんだ。
返す相手がただの女生徒だったらまだ問題はないんだけど、相手は全校生徒が憧れているあの神楽坂真琴さんなんだよ⁉︎
話しかけようとしても周りの人が我先にと押しかけてくるのでまず近ずけやしない。
しかも、僕は、女生徒のハンカチを自分の家に持ち帰ったのだ。あらぬ疑いをかけられてしまう可能性だってある。
「本当にどうしよう。あ〜あ僕がもっと高スペックならこんなことで悩まなくて住むんだけどなぁ。」
嘆きながら机の端にある時計を見ると8時を回っていた。
「って遅刻しそうじゃん!早く行かないと!」
カバンに必要なものを入れハンカチをポケットに突っ込み家を出た。
「はぁ、本当にどうしよう。」
「何朝からため息ついてんのよ。幸せが逃げてっちゃうわよ」
僕がため息をつくと女生徒がそれを指摘してきた。顔を上げるとそこには......
「おはよ、実」
僕の幼馴染の星宮羽夏がいた。彼女も星影高校三大美少女の一人である。
「今僕にとってとても大きな問題を抱えているんだ。ため息をつきたくもなるよ」
「なにそれ?実は常に問題を抱えてるじゃない。普通すぎるって言う問題をね」
羽夏は笑いながら僕の一番気にしていることを言ってきた。酷い奴め!
あ、ちなみに名前呼びなのは自主的じゃないよ?羽夏に脅さ「実?」お願いされて名前呼びをしているんだ。ハハハ......
「人が気にしていることを笑いながら言うなよ傷つくだろ」
「ごめんね〜。ってあ!もうホームルーム始まっちゃう!じゃあまたね!」
「あ、ああ」
羽夏は急いで自分の席に戻っていった。
そうしてホームルームが始まり、時は流れ昼休みになった。
ハンカチを返すと言っても話しかけなきゃ始まらないしな。よし!行ってみるか。
「あ、あの。神楽坂さ......」
「神楽坂さん!一緒にお昼ご飯食べてもいいですか?」
「ええ、良いですよ。食べましょう?」
「わ、私も食べて良いですか!?」
「ええ、良いですよ。」
じゃあ私も私もと神楽坂さんと一緒にお昼ご飯を食べたいが故に人だかりができ僕は話すタイミングを失ってしまった。
「やっぱりこうなったか。仕方ない放課後にしよう」
そうして、時は流れ放課後......。
「か、神楽坂さ......」
話しかけようとしたが、神楽坂さんはもうすでに居なかった。
こうなってしまったらもう何もできないので今日は諦め帰ることにした。
本日は以上です。
Twitterの方で現状報告や投稿日のお知らせなどをしているので。フォローよろしくお願いします!
アカウント名は@izumiyashoukiです。
それでは皆様またお会いしましょう。
デワデワ〜