閑話 某副団長としんまいきしの雑談
……おい、坊主、大丈夫か?
ああ、悪かった、悪かった、大丈夫じゃないよな、うん。
まあ、飴ちゃんやるから、これでも食っとけ。
疲れている時は、甘い物が良いって、団長も言ってたしな。
(泣きながら飴を口にする少年を見ながら)
それにしても、坊主は根性あるな。
新入りは、大体半分もいかずに脱落するんだぞ。
末姫様のところより、騎士だん――、いや、冗談だ。
そんな青い顔しなさんなって。
……オヒメサマ怖いって、ああ……。
――末姫様だからな~。
(少年、さらに泣く)
いや、筋肉欲しいって、末姫様の耳に入るようなところで、言ったお前が悪いぞ、坊主……。
末姫様も、団長と同じで、勘が良いのに変なところで抜けてるから、多分、お前さんの言葉を真に受けたんだろうよ。
末姫様の兄貴が、団長だったのが、坊主の運のつきだ。
身内に鍛練大好き人間がいたら、筋肉欲しがっている奴を押し付けるだろ。
おう……。
――とっくの前に、運が尽きてるって……、苦労したんだな、お前……。
(ひどく優しい、憐みの眼差し)
なんつーか、頑張れ。
はは、頑張れ以外に、何を言えってんだ坊主。
ん、女装は嫌だ?
(少年を眺め回して)
ああ、だから筋肉が欲しいか。
それ、末姫様に直接言った方が良いぞ。
きっと、遠回しに言っても、伝わらないね、絶対。
(遠い目をして)
なんたって、――団長の、妹だからな。
……。
そ、そんなに落ち込むことなのか……?
いや、したことないけどよ、女装なんて。
俺がやったら、気持ち悪いだけだろうが。
言えたら世話ないって、末姫様に弱みでも握られてるのか、坊主?
あ~、泣くな泣くな。
あの人達、理不尽なところはあっても、面倒見は良いから。
(両手を振りながら)
え、あっちで走ってる文官組は、別口なんだよ。
あいつらは、腐りかけの糧食仕入れたり、軍の備品を横流ししたりして、俺らで根性叩き直してる最中だ。
何でって、うちの団長の発案が、王太子殿下のツボにハマったらしいぞ。
うん、まあ、いいんじゃないか?
妙な事を考える体力も無くなるしな。
(肩をすくめて)
怪我なんてさせるかよ。
こちとら、身体を使うのが専門だから、どの位しごけばヤバいかぐらいは見分けがつくんだ。
生かさず殺さず程度で済ませてやってるよ。
(とてもいい笑顔)
はっはっは、怖いってなんだよ。
あいつらのお陰で、軍部総出で腐りかけの糧食を消費する羽目になったんだ。
あの程度で済ませるなんて、優しいだろ?
え、文官は騎士と違う?
あのなあ、文官だって、何だかんだで体力勝負だぞ。
王太子殿下のとこの奴らって、暗器使えるらしいし。
それに、団長の親友だって、外交官だけど、うちの行軍演習についてきたしな。
――いや、あの人は例外か。
そこそこ本気の団長と打ち合いが続くの、騎士団でも少数派だわ。
あ、そう言えば、その親友様が、でかい鳥に攫われて行方不明中らしいけど、団長、心配してねぇんだよな。
や、本当に親友だって。
在学中は、一緒に減量した仲だったそうだ。
なんか、自分で鍛えたから、死んでる気がしないってよ。
――ああ、いいんだって、団長だし。




