『彼女』が死ぬ、その前に
最近被害が相次いでいるという、無断転載についてのエッセイを読んで、勝手にビビッて、被害に遭う前に無断転載対策をしてみることにしました。
本作品「『彼女』が死んだ、その後で」におきましては、部分的に本文と後書きを入れ替えると言う無断転載対策を実施しております。
ややこしいことをしてすみませんが、自分の作品が無断転載される想像をすると、イラッときたので、自主的に対策をとってみました。
読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。
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対策については、MITT様のエッセイを勝手に参考にさせていただきました。
シャルロッティが初めて『彼女』を見たのは、王城の庭だった。
――酷い形相で、自分の婚約者に近づくなと、同じ年頃の少女を牽制していた。
一緒にいた女官達は、『彼女』の有様に呆れていた様だったが、シャルロッティは、なりふり構わず婚約者の愛を求める『彼女』に感心してしまった。
その時のシャルロッティは、愛情というものに、『彼女』が求める程の価値を見出していなかったからだ。
――羨ましい、と。
小さな泡の様に、ぽこりと浮かんだ気持ちは、すぐに投げ捨てた。
王家の鬼子と呼ばれるように、年齢に不釣合いな聡明さを有していたシャルロッティは、自分が愛されることなど、諦めていたのだ。
……思い返せば、大公家の養女になる前あたりが、シャルロッティが最もひねくれていた時期だった。
――至尊の座の簒奪を恐れ、次々と我が子を飲み込んでいった父神の魔手を逃れた末の子は、末子でありながら長子となり、最高神にまで至ることとなった。
その最高神を守護神とするこの国では、主神の贔屓なのか、末の子に優れた能力が宿りやすい。
だが、シャルロッティの場合、過ぎた聡明さは呪いでもあった。
……結局のところ、異質は弾かれるのだから。
幼いながらも、稚さが欠落していたシャルロッティは、周囲の人間にとっては、得体の知れない魔物の様なものであった。
そう見られる原因の一端は、シャルロッティが、実母を追い落としたこともあるだろう。
けれどシャルロッティは、実の母親だろうと、赤子であった己の前で不貞を働く女が王妃を名乗ることなど、断じて許容できなかったのである。
他人が愛せない存在であると、己を認識しているシャルロッティは、だからこそ、与えられない愛を信じる『彼女』が興味深かった。
その努力が報われないだろうと確信しながら、それでも、『彼女』に訪れる結果が気になって仕方がない。
それと同時に、愛されながらも、『彼女』に愛情を示さない婚約者にほんの少しだけ苛立ちもした。
その感情の原因が嫉妬だと自覚があったから、シャルロッティは最後の最後まで、傍観者を貫いたのであった。




