上着
主人公けっこう心が擦れちゃってるので注意。す二人共目が死んでます。この先書いてく上でドロドロしてるので注意。
今回は直接の性描写はありませぬが、関係を持ったという描写があるので注意。
寂しい。寂しい、寂しい嫌だ寂しい寂しい寂しい怖い寂しい寂しい寂しいつらい寂しい寂しい寂しい。
だれか、心を埋めてくれ。
捨て子である俺は途中まで孤児院で育てられた、しかし孤児院のオーナーは孤児である俺達を性欲の裂け目にするような奴だった。それでもあいつに抱かれるたびに俺は愛されていると感じた。だから抱かれるのは痛いしつらかったけれど、あいつは確かに俺を抱いているときは俺にだけに意識を向けていていたのだ。
捨て子である俺は愛など感じたことなどなかったし自分だけに意識を向けてもらったことなどなかったから、少しでもあいつが俺に好意を持ってくれていたのが嬉しくてしょうがなかったのだ。
実際あの行為に愛などなかった。
ただあいつは性欲の裂け目が欲しかっただけだ。
でも小さかった俺にはそんなことわからなかった。
あいつは俺を抱くたびに可愛い愛してるとまで言ってきた。そのたびに俺はどうしようもなく幸福感に満たされた。
だがそんな日常も俺が世界の常識を認識し始めた頃に変わったのさ。あいつが孤児院に火をつけたのだ。俺達にあんな行いをしていたのがバレそうになって証拠隠滅したのだろう。
その火の中から生き残ったのは俺とあと一人いたと思うが忘れた。
なんせその時は自分のことで精一杯だったからだ。
そのあと俺は行き場所をなくし裏の世界で体を売り。臓器売買ではないほうのだが。まぁ体を売り金を持ってる奴の元を転々としていたのだ。
そんな暮らしを送っていた俺にも転機が訪れたのだ。
クソみたいなデブ男に金も払われずに殴られ路上に捨てられ倒れていた時の事だった。一人の男が声をかけてきたのだ。
俺のあの人への第一印象は黒くてでかい。それだった。いや下ネタとかではなくだな。とにかく黒ずくめにでかい。と、いっても縦にでかいのだ。スレンダー、とでも言うのだろうか。顔は俺の好みではないが悪くはないのだろう。目はとても死んでいた。とても冷たい目をしていた。だがどこか何か思わせるようなそんな目だ。
あの人言ったのだ。
「お前は誰だ」
そういったのだ。
初対面のガキに急に「お前は誰だ」だなんて普通聞くかよ。それも死んだような目。下半身裸。おまけに全身あざだらけだ。そんな気味の悪い子供に突然そんなことを言い放ったあの時のあの人の頭の中を疑うよ。
そしたらあの人なんて言ったと思う?
「喧嘩でもしたのか?」
アホかよ。なんで喧嘩して下半身丸出しなんだよ。アホか。
「どうしたなんで何も言えない」
こんな状態でなんか言えるかってんだ。と、意味を込めた目であの人を見上げるとあの人は、
「お前もしかして言葉がわからないのか?」
わからないのではない。喋れないのだ。喋れない、というのは、声の出し方がわからない。というのと、そんな体力ないという意味で喋れないのだ。そんな俺をあの人あの人は突然着ていた上着で俺をくるみ抱き上げた。本当突然にだ。あの時のあの人の暖かさを俺はいまだに忘れない。
あの人に抱き上げられた俺はなんかよくわからない緊張感と安心感という矛盾の中で意識を落としたのだ。